番外編です。
思いつくまま、気の向くまま、これまで書いてきたことと、重複することもありますが、その点はご容赦のほどよろしく。
『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』(NHK番組HPより)
サスペンスとは、suspensus(吊(つ)るすの意)が語源だそうで、ストーリー展開において,観ている者に、不安 や 緊張を抱かせ、ハラハラ・ドキドキが、サスペンスドラマだそうです。
「スパイの妻」は「ラブ・サスペンス」であり、戦争の時代を、舞台として、背景として展開します、ですから、あまり時代背景に拘ってはいないのでした。
ですから、聡子の変化に付いて、その理由が、全くもって、その片鱗さえも、提示も、示唆も、されないで、観客にお任せなのです。
変化の動機よりも、変化することで、予想外のストリー展開になる、そのことに重点が置かれ、登場人物の性格設定とか、時代背景とかには、あまり拘りがないようです。
物語の起点となる、機密文書と文雄を憲兵隊に売り渡した聡子の動機は、いったい、何だったのか? 聡子の性格に、考え方に、行動に、とても、とても、一貫性が無いとか、そう言う疑問に深入りしては駄目なのです。
でも、そのあたりも、緻密に描かれていたら、もっと、もっと、素晴らしい作品になつていたことでしょう。
でも、しかし、この作品は、NHKの二時間ドラマなのです。いくらNHKだからと云って、製作費用と制作時間に、それなりに制約されるのです。
それにしても、気になったのが憲兵隊員です。取り調べの際、周囲にいた憲兵隊員ですが、ひとり、ひとりを見ていると、憲兵には見えないのです。
ホントに!ほんとに!、只のエキストラ丸出しで、芝居をしていませんでした。これも予算と時間の制約から?それとも演出に問題? あっ、それと各自の髪型は短髪にすべきでした。
作品にケチを付けるのはこれでお終い。
ここからは、私の妄想として、勝手にストーリーを広げて、いじくり回して楽しみたいと思います。お聞き下さい。
それで、帰国後に殺された看護婦、草壁弘子を巡るお話です。
731部隊で実験に従事していた軍医の、機密を綴ったノートと記録フィルムが、優作の手に渡った経緯と、軍医と看護婦弘子の関係です。
軍医と草壁弘子は愛人関係にあった事。軍医は内部告発しようとして処刑され、弘子の身にも危険が迫る。優作は、帰国と交換条件で弘子からフィルムを入手。
と、まあ、作品では、このような経緯となっています。
先ずは、軍医と弘子の関係ですが、作品ではとくに、触れていませんが、偶々知り合い、偶々愛人関係になったように、と言うか、馴れ初めには意味は無いとして、とくに描かれていません。
そこで、です。
わたしとしては、弘子は、それなりの目的を持って、軍医に近づいたと想像するのです。
いわゆる、弘子は「ハニートラップ」だったと考えます。
第一次大戦より、生物化学兵器の研究は各国で行っていましたし、実戦でも使用されました。
日本においても行われていた訳です。研究、実験は狭い内地ではなく、満州にその部隊を置くのは、当然の帰結。
米国も、英国も、ソ連も、当然、日本の研究を調べていた筈。ですから、各国のスパイが、満州で日本の生物化学兵器の開発研究を探っていたのです。
それで、草壁弘子ですが、彼女は、米国の末端工作員でした。実験研究従事している軍医に、色仕掛けで近づき、正義感を煽り、機密情報を手に入れていたのです。
軍医は、弘子に、いろいろ吹き込まれ、それが仇となり、予想外の内部告発に至り、弘子の身にも危険が迫ったのです。
そこに現れた、それなりに正義感のある二人、優作と文雄。飛んで火に入る夏の虫でした。
弘子は米国の末端工作員で、正規のスパイの配下で働く、現地採用の非正規スパイで、軍医の予想外の内部告発で、正規スパイは身の安全を考えて、非正規を切り捨て逃亡。
残された弘子は、優作と文雄を丸め込み、満州脱出を謀ったのです。
そもそも、文書もフィルムも、国際社会に持ち出し、国際世論に訴えたところで、そんな理由で、アメリカは参戦しません。優作の考えは甘いのです。
聡子が、いみじくも、
『あなたも文雄さんとおんなじ、すっかり変わってしまった・・・。あなたを変えたのは、あの女です。あの女が、その胸に住みついたのです』
と、優作に向かっての台詞。
女の直感です。同性の聡子は、草壁弘子の男を引き寄せ操る、美しくも、妖しい、男を狂わせる、女だと感じとっていたのです。
妖しい魔力に引き寄せられ、不幸にも、旅館の主人をも狂わせ、殺されてしまった弘子。人を狂わせる魔性の女。
すべての物語は草壁弘子が中心で、手の内で、転がされていたのです。
優作も、草壁弘子からの呪縛から解き放たれることなく、弘子の幻を追いかけ、アメリカに渡りました。
そんな優作を追って聡子も渡米、聡子も弘子の呪縛から逃れられなかった。
この作品は、草壁弘子が主役だったのです。
と、まあ、こんな、妄想を描いて、それなりに、楽しませて頂きました。
ここまでお付き合い頂いた方には、御礼申し上げます。
それでは、また、別な機会にお待ちしております。
では、また。