学問空間

「『増鏡』を読む会」、第9回は2月22日(土)、テーマは「上西門院とその周辺」です。

「カラヤンなにくそと思って…」(by 小澤征爾)

2015-11-16 | 映画・演劇・美術・音楽
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年11月16日(月)12時34分27秒

>筆綾丸さん
それなりに近代史の本を読んでいるはずの自分が何で今まで朝日新聞の「不思議なレイアウト」に気付かなかったのだろうと思って、明治末から昭和前期を対象とする一般的な歴史書をいくつか見てみたら、朝日新聞の切り抜き自体は結構載っているものの、それらの多くは大阪朝日新聞であり、東京朝日新聞の場合は夕刊になっていますね。
執筆者・編集者が植物模様に囲まれた朝日新聞のロゴと一緒に記事を載せたいと思った場合、東朝の朝刊という選択肢は実際上なくて、大朝ないし東朝・夕刊を選ぶこととなり、結果的に読者も東朝・朝刊の第一面はあまり目にしないことになってしまうんですね。

>『小澤征爾さんと、音楽について話をする』36頁~
ご引用の直ぐ後の小澤征爾によるカラヤン評、「協奏曲でこれだけソリストのことを考えないで、シンフォニーとして堂々と演奏できる人って、まずいないですよ」も面白いですね。
帝王カラヤンの面目躍如ですが、『ボクの音楽武者修行』を見ると、カラヤンは小澤征爾に自分のやり方を押し付けた訳ではなく、意外に親切に指導していますね。(p151以下)

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 カラヤンという人は、だいたい魔法使いみたいな指揮で、あっという間に客を引きつける。そんな魔法など他人に理解できるわけがないので、こういう人の弟子になってもあまり益するところがないのではないかと、実はぼくも思っていた。ところが大違いだった。
 レッスンとなると、カラヤンは指揮台の真下の椅子に腰掛けて、ぼくらが指揮しているのを、じろっと睨むようにして見ている。ぼくは睨まれると、カラヤンの音楽そのものを強要されるような気がした。そこで考えた。こんなことをしているとカラヤンの亜流になってしまう。カラヤンなにくそと思って、ぼく流の音楽を作らなければいけないと固く心に誓った。
 しかし一方、カラヤンは教えることに非常に才能があった。睨みはするが、けっして押しつけがましいことは言わず、手の動かし方から始まってスコアの読み方、音楽の作り方という順序で、ぼくらに説得するように教えた。そしてぼくらの指揮ぶりを見た後では具体的な欠点だけを指摘した。また演奏を盛り上がらせるばあいには、演奏家の立場よりむしろ、耳で聞いているお客さんの心理状態になれと言った。方法としては少しずつ理性的に盛り上げて行き、最後の土壇場へ行ったら全精神と肉体をぶつけろ、そうすればお客も、オーケストラの人たちも、自分自身も満足すると言った。またシベリウスやブルックナーのように、今まであまり日本人には縁のない作曲家のものと取り組む時にはその作曲家の伝記を読むのがいい。なお、ひまと金があれば、その人の生まれた国、育った町をぶらつくのがいい。そうして音楽以前のものに直接触れて来いと説いた。
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ま、これもカラヤンが若き小澤征爾の才能を認めたからであって、普通の指揮者見習いだったら別だったかもしれませんが。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

Daech(ダーエシュ) 2015/11/15(日) 18:05:05
小太郎さん
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E7%9B%AE%E6%BC%B1%E7%9F%B3
漱石の連載小説の大半は、「第1面の全面が書籍雑誌の広告という不思議なレイアウト」時代の朝日新聞だったのですね。『虞美人草』の格調高い文体や『こころ』の先生の遺書などと俗悪な広告の対比はなかなかの見物だったでしょうね。『三四郎』の佐々木与次郎だけが広告的です。

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村上「カラヤンとグールドが共演しているべートーヴェンの三番のコンチェルト、今日はこの演奏を聴いていただきたかったんです。正規録音じゃないんだけど、一九五七年にベルリンでやった演奏会ライブです。オーケストラはベルリン・フィル」

   第一楽章、オーケストラの長い重厚な序奏が終わり、グールドのピアノが入ってきて、やがて両者の絡みになる。

村上「ここのところ、オーケストラとピアノが合ってないですよね」
小澤「ずれてますね。あ、ここも入り方が違う」
村上「前もって音合わせみたいなの、しっかりやってないんですかね?」
小澤「いやあ、そりゃやってるでしょう。でもこういうところはね、独奏者が弾いているところは、だいたいにおいてオーケストラの方が合わせてあげないといけないんだけど・・・」『小澤征爾さんと、音楽について話しをする』36頁~
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https://www.youtube.com/watch?v=56jckbE3w4s
誠に便利な時代ですが、この曲をYouTubeで聴くことができますね。
https://www.youtube.com/watch?v=k46fdX_3xDM
他にも色々ありますが、バースタイン指揮でピアノはツィマーマンのものがいいですね。

http://www.rfi.fr/france/2min/20151114-attaques-paris-hollande-ei-etat-islamique-coupable-revendication-acte-guerre
フランスの国営ラジオ放送は Etat islamique と言い、日本のメディアもISとしていますが、オランド大統領の正式な演説では Daech ですね。 
コメント
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本郷和人氏『中世朝廷訴訟の研究』

2015-11-16 | 増鏡
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年11月16日(月)11時34分39秒

>JINさん
>「院政とは何だったか (PHP新書)」
未読ですが、これは岡野友彦氏の2013年の著書なんですね。


恒明親王のような極めてマイナーな存在に着目されたのは何故なのかな、と思いましたが、もう少し広く亀山・後宇多・後醍醐の関係あたりにご関心があるようですね。
本格的に勉強されるのであれば、前提として貴族社会をきちんと理解する必要があるので、本郷和人氏の『中世朝廷訴訟の研究』(東大出版会、1995)をお奨めします。
決して易しい本ではありませんが、朝廷を実際に支えている実務官人の動きを知らないと鎌倉後期の朝廷社会は全く理解できないですね。
この本が難しければ本郷氏の一般向けの著書、例えば『天皇はなぜ生き残ったのか』(新潮新書、2009)などを先に読んだ方がよいと思います。
私の過去の投稿を見たら『天皇はなぜ生き残ったのか』に少し批判的なものもありましたが、今見るとちょっと書き方がまずかったような感じもします。
ま、本郷氏自身が後宇多・後醍醐の感情的対立を前面に出しているので、それに引き摺られた書き方になってしまったのですが。

「後宇多・後醍醐は不仲?」

※JINさんの下記投稿へのレスです。
「後宇多の院政停止」
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