2010 関西学院大・全
【問】次の文中の( )に最も適当な語を語群から選び、また下線部に関する問いに答え、最も適当な記号1つをマークしなさい。
古代ギリシアでは、文学や美術といった芸術の分野だけでなく、哲学や自然科学の分野においても、後の西洋近代文明の先駆けとなるような豊かな文化が花開いた。
文学では、数々の詩人や劇作家が才能を競い合い、すぐれた作品を生み出した。初期の詩人としては①ホメロスとヘシオドスが、少し遅れて女性詩人( イ )が登場した。紀元前5世紀のアテネでは演劇が盛んになり、 「三大悲劇詩人」と呼ばれるアイスキュロス、②ソフォクレス、( ロ )が、人間の運命をテーマにした重厚な悲劇を残した。
調和と均整のとれた美を追求した古代ギリシア人は、彫刻と建築にもすぐれた才能を発揮した。アテネのアクロポリスの丘にある③.パルテノン神殿は、古代ギリシアを代表する建築である。
哲学や自然科学の分野では、自然現象を神話的に解釈するのではなく、ひとつの根本原理によって合理的に説明しようとする④.自然哲学が生まれた。その後、ギリシア人の学問的関心は自然現象の説明だけにとどまらず、政治や倫理・道徳の領域にまでひろがった。ソクラテスに始まる真理の探究は、プラトンの( ハ )に結実し、さらに⑤.アリストテレスにおいてこれまでの諸学問の成果が集大成されることになる。
⑥ヘレニズム時代に入ると、ギリシア文明とオリエント文明との融合により、学問や芸術が新たな発展をとげた。ポリス共同体の狭い境界にとらわれない生き方を理想とする考え方も生まれた。こうした旧来のポリスの枠を超えた人間のあり方を探求する人々のなかから、⑦ストア派やエピクロス派といった個人の心の平安を求める哲学が現れた。
- イ. a.アナクレオン b.サッフォー c.プロタゴラス d.ピンダロス. e.プラクシテレス
- ロ. a.トゥキデイデス b.ガレノス c.アリストファネス d.エウリピデス e.ウェルギリウス
- ハ.
- a.経験論 b.合理論 c.唯物論 d.イデア論 e.汎神論
- ① ホメロスとへシオドスに関する記述として、誤りを含むものはどれか。
- a.ホメロスの『イリアス』はトロイア戦争の英雄の活躍をうたった叙事詩である。
- b.
- ヘシオドスの『農耕詩』は農村での労働の教訓をうたった叙事詩である。
- c.
- ヘシオドスの『神統記』はギリシアの神々の系譜をうたった叙事詩である。
- d.
- ホメロスの『オデュッセイア』はオデュッセウスの放浪と冒険をうたった叙事詩である。
- e.
- ホメロスが活躍したのはポリス形成期の頃とされる。
- ②
- ソフォクレスの作品はどれか。
a.『女の平和』 b.『オイディプス』 c.『縛られたプロメテウス』 d.『アエネイス』 e.『メディア』 - ③
- パルテノン神殿に関する記述として、誤りを含むものはどれか。
- a.
- ベルシア戦争で破壊された。
- b.
- 彫刻家のフェイデイアスが再建工事の総監督を務めた。
- c.
- 再建工事を命じたのはペリクレスである。
- d.
- 柱は優美なイオニア式である。
- e.
- 内部にはアテナ女神像が安置されていた。
- ④
- 自然哲学に関する記述として、誤りを含むものはどれか。
- a.
- 前6世紀にミレトスを中心に起こった。
- b.
- ピタゴラスは万物の根源は数であるとした。
- c.
- タレスは万物の根源は水で、あるとした。
- d.
- デモクリトスは原子論をとなえた。
- e.
- ヘラクレイトスは「人聞が万物の尺度」だとした。
- ⑤
- アリストテレスに関する記述として、誤りを含むものはどれか。
- a.
- アカデメイアで学んだ。
- b.
- 哲人政治を理想とする『国家論』を著した。
- c.
- アレクサンドロスの教育を任された。
- d.
- リュケイオンを設立した。
- e.
- イスラームや中世ヨーロッパの哲学や神学に影響を与えた。
- ⑥
- ヘレニズム時代の文化に関する記述として、誤りを含むものはどれか。
- a.
- アリスタルコスは地球の周囲の長さを計測した。
- b.
- 「ラオコーン」に代表されるヘレニズム美術はガンダーラ美術にも影響を与えた。
- c.
- コイネーと呼ばれるギリシア語が共通語となって普及した。
- d.
- アレクサンドリアにムセイオンという研究施設がつくられた。
- e.
- エウクレイデスは『幾何学原本』を著し、平面幾何学を大成した。
- ⑦
- ストア派の哲学者でないのはだれか。
a.ゼノン b.プロティノス c.エピクテトス d.セネカ
e.マルクス=アウレリウス=アントニヌス - 解答
イ | ロ | ハ | ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ |
b | d | d | b | b | d | e | b | a | b |
解 説
イ.a.アナクレオン(Anacreon, 紀元前570年頃生)は、古代ギリシアの抒情詩人である。酒飲みと頌歌で著名。後に9歌唱詩人に加えられる。アテネの僭主ヒッパルコスの庇護の下、軽快な酒と愛の歌を綴った。
▲アナクレオン
d.ピンダロス(Pindaros)
前518年頃~前438年頃。古代ギリシアの詩人。オリンピックの祝勝歌(epinikia)が多い事で知られる。テーベ(テーバイ)の近くの出身。2004年のアテネオリンピックでは表彰メダルの表に彼の祝勝歌が公式に採用され彫りこまれている。
▲ピンダロス
c.プロタゴラス
「人間は万物の尺度である」という言葉で知られ、相対主義を唱えた人物の一人として有名である。人間それぞれが尺度であるから、相反する言論が成り立つのである。
こうした主張からソフィストは詭弁を用いて黒を白と言いくるめる、とみなされるようになった。一方で、ルネサンスが人間を尺度とする復興であったことから、尺度の基準は人間であると主張したギリシア哲学・西洋哲学におけるソフィストの存在を軽視してはならないことが分かる。
晩酌は人 プロソフト。
「万物の尺度は人間」プロタゴラス 相対主義 ソフィスト
e.アテナイのプラクシテレス(Praxiteles)は大ケフィソドトスの子で、紀元前4世紀の最も有名なアッティカの彫刻家。
ロ.
b.ガレノス(129年頃 - 200年頃)は、ローマ帝国時代のギリシアの医学者。臨床医としての経験と多くの解剖によって体系的な医学を確立し、古代における医学の集大成をなした。彼の学説はその後ルネサンスまでの1500年以上にわたり、ヨーロッパの医学およびイスラームの医学において支配的なものとなった。〈ガ〉
d.エウリピデス
前5世紀 三大悲劇詩人が活躍。
愛崇め、双方おいで 絵売り愛で。
アイスキュロス 『アガメムノン』 ソフォクレス 『オイディプス王』 エウリピデス 『メディア』
① 『農耕詩』はローマのウェルギリウスの作品。ヘシオドスは『労働と日々』。
兵士労働 飢え残し。
ヘシオドス 『労働と日々』ウェルギリウス 『農耕詩』
-
農耕詩
のうこうし
Georgica
ローマの詩人ウェルギリウスの教訓叙事詩。前 36~29年にカンパーニャで執筆。4巻から成り,第1巻は作物栽培と気象,第2巻は果樹,特にオリーブとぶどうの栽培,第3巻は家畜の飼育,第4巻は養蜂を扱い,アリスタイオス神話,オルフェウス神話を語るものとして有名。宮廷文学サークルのパトロンであったマエケナスの指示により,国土への愛と農事への尊敬の念を呼びさますために書いたといわれるが,少年期を田舎に過した作者の自然に対する深い愛情,田園生活の賛美,古人の簡素な生活と趣向への復帰を願う気持がこめられている。
② 三大悲劇作家の主要作品は覚えておく必要がある。アイスキュロスは『アガメムノン』・『縛られたプロメテウス〈ロ〉〈ス〉』、ソフォクレスが『オイディプス王』、エウリピデスが『メディア』など。なお、『女の平和』は喜劇でアリストファネスの作品。『アエネイス』はローマの建国物語でウェルギリウスの作品。
- ③ パルテノン神殿はドーリア式の代表的な例。
- ④ ヘラクレイトスは「万物は流転する」と考えた。「人間は万物の尺度」はソフィストの代表的人物プロタゴラスの言葉。
晩酌は人 プロソフト。
「万物の尺度は人間」プロタゴラス 相対主義 ソフィスト
- ⑤ 『国家論』はプラトンの主著。
- ⑥ アリスタルコスは地球の自転説。地球の周囲を計測したのはエラトステネス。
- 近代哲学…イギリスのフランシス=ベーコンは帰納法〈induction〉による経験論を説き、フランスのデカルトは数学的演繹法〈deduction〉による合理論をうちたてた。
- 近代哲学 〈ベーコンとデカルト〉★★★
- 不便(ふべん)危険と デカ援護(えんご)。
- フランシス=ベーコン 帰納法 経験論 デカルト 演繹法 合理論
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前6世紀 イオニアのミレトスを中心に自然哲学が発達。
水は垂れます 数ぴたり、流転ヘラっと 原子でも。
万物の根源は 「水」 タレース 「数」 ピタゴラス 「流転」 ヘラクレイトス 「原子」 デモクリトス
- ⑤
- 『国家論』はプラトンの主著。
- ⑥
- アリスタルコスは地球の自転説。地球の周囲を計測したのはエラトステネス。 自転有りたる 周囲エラ。
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