【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

国家の体面が大好きな政治家が、実際の戦いにおいては全く無能であることも、悲しいくらい明らかになった

2015-02-08 23:43:41 | 転載と私見


櫻井智志

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~「無知のベール」山口二郎氏(法政大学教授)~【東京新聞2月8日朝刊・転載】


 人質事件に対する一連の対応から浮かび上がるものは、安倍政権が国民の生命よりも、この機会に国家としての体面を整えることに意欲を持っているということである。生命軽視は、後藤健二氏の遺族に対して、今もって安倍晋三首相からの弔意の表明がされていないことからも明らかである。

 そして、国家の体面が大好きな政治家が、実際の戦いにおいては全く無能であることも、悲しいくらい明らかになった。首相は、中東歴訪の際に行った反テロ演説について、テロリストの心中を忖度すべきではないとして、正当化した。敵を知り己を知ることは、戦いの基本である。敵を知り、出方を探ることを、敵に同情することとして否定していては、賢い戦いはできない。

 首相は国会審議の中で、日本人の安全を守るために憲法九条の改正が必要だと、自説を繰り返した。これまた、己についての決定的無知から発する主張である。自衛隊は紛争地域に乗り込んで力ずくで日本人を救出することなどできない。

 国際舞台で自己陶酔的な演説をし、自衛隊を正規の軍隊として国際的な共同作戦に従事させる。これらはみな安倍首相の自己満足であり、日本人の安全とは何の関係もない。指導者が無知であることについてわれわれを無知にさせるために、特定秘密保護法がさっそく効果を表しそうである。
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私見
 山本太郎参議院議員がイスラム国非難決議に動ぜず退席した。国会議員達は山本議員を非難した。驚いたことは、まともな日本共産党さえ全員一致で非難決議に合流した。「人質解放」のために一丸となって救出を成就するためには、政府批判を行えば、それを阻害するという配慮からであることを後藤健二さん虐殺という悲劇的な結末を迎えて、その地点から日本共産党は明らかにした。

 しかし、実は人質拉致の時点から虐殺に至るまで、安倍政権は実にしたたかな策略をめぐらした。人質救出などまともには、そうダッカ事件で「人命は地球の重さよりも重い」と発言した福田赳夫当時の総理とは天地ほど異なる首相だったのだ。そうでなければ、虐殺直後から、
①「自衛隊は人質を救出するために海外におもむいて解放する戦闘行為を辞さない」特別法を制定する
②今回のような事態も考慮して来年夏の参院選後に、憲法改定の発議をおこなう
③テロに屈せず国際社会の一員として、有志国連合の一員として、イスラム国に断固と向かい合う
など、続々と場違いな具体的な政策方針が出てくるわけがない。

 安倍政権は、すでに人質拉致のスタートから一貫して、いかに国民的規模で有事体制下での意識のコントロールをおこなってきた。日本共産党や社民党など護憲政党は、完全に読み間違えていた。中東に詳しい専門家の見識をマスコミを通じて知って驚いた。実態がどのようなものかが、全く伝えられていなかったし、イスラム国と最も敵対するヨルダンに対策本部を置いたが、そのこと事態もイスラム国が、日本は有志国連合の一員であり敵であるという認識にむかわせた。人質解放の実績もあり、様々な利点のあるトルコに対策本部を置けば、もっと情報収集にもより有効であったこと。日本は中東地域と歴史的に友好関係にあり、今後も英米の言いなりになるよりは、日本の独自な立場を堅持して、難解な紛争地域の軍事的介入を安易に進めるよりも、完全な医療・教育・建設・環境整備などのいわば人道支援に徹することを、世界にアピールしてなによりも実践することだ。

 しかし、安倍政権はそんなことを皆目実施するつもりはないだろう。そのような一連の日本国民のマインドコントロールを読み込んだ情報操作と、イスラム国とのまともな交渉よりも、日本国民の心理的操縦を積極的に織り込んでいた。その全プロセスで、日本共産党のような国民的抵抗政党でら、「一丸となって・・・」という自戒に無意識のうちに押し込められていたことを、戦前戦時中の歴史的経験をふりかえっても、見通しを誤っていた。その点では、的確な安倍政権批判の見解をツイートで意思表示した若い代議士の直観的理解のほうがそれを批判した指導部よりも、私は的確であり本質を射ていたとみる。その後、日本共産党は国会予算委員会などで厳しく安倍政権の事態への対応を明確にあきらかにするよう本来の共産党らしい的確明瞭な総理への質問と批判、提言をこなした。

 いまや問題は解決したかのような錯覚で、安倍総理は陽気に憲法改定、欧米に追随する従属的な軍事大国路線へと邁進している。国民への締め付けや監視、コントロール、冤罪や弾圧は驚くべきスピードで進行していく。国民の批判があると、一歩後退するが、隙を国民側が見せれば、一気に加速していく。

 再度、冒頭の山口教授の言葉を繰り返してむすびとする。

「そして、国家の体面が大好きな政治家が、実際の戦いにおいては全く無能であることも、悲しいくらい明らかになった」・・・

日本の国民は何故こんなに酷くなったのか。殺害の契機は首相だ。評価するが60,6%。愕然!する。

2015-02-08 16:28:43 | 転載と私見
孫崎享のつぶやき
日本の国民は何故こんなに酷くなったのか。殺害の契機は首相だ。評価するが60,6%。愕然とする!
2015-02-08 07:2713




私は時々、日本国民の判断にがっかりすることがある。前回の衆議院選挙の結果もそうである。しかし、今度の人質事件に対する反応位がっかりしたことはない。
共同通信社が25日に実施した全国緊急電話世論調査によると、「邦人人質事件に対する安倍政権の対応を「評価する」は「ある程度評価する」を含めて60・6%」、総じて評価するが60.6%、一体この国民はどうなったのであろうか。


 ■第一に今回のイスラム国の殺害を起こしたのは間違いなく、安倍首相の発言が契機である。

 安倍首相は「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援をするのは、ISIL(注:イスラム国)がもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」と話した。イスラム国を敵視する発言をした。
 これがイスラム国側を刺激したことは間違いない。
 それはイスラム国側の反応を見てもらえばわかる。 2月1日イスラム国は後藤氏を殺害するビデオを公開した。ここで次の発言をした。

「日本政府は邪悪な有志連合に参加した愚かな同盟国と同じように『イスラム国』の力と権威を理解できなかった。(省略)安倍総理よ。勝てない戦争に参加した向こう見ずな決断によって、このナイフは後藤を殺すだけでない。今後もあなたの国民はどこにいても殺される。日本の悪夢は始まる」

 この時期、シリアに入ったことを咎める自己責任論がある。しかし拘束されたことと殺害されたこととは同じではない。
「あなたの国民はどこにいても殺される。日本の悪夢は始まる」という認識の中で殺害が行われた。



 ■次に今回日本政府は人質返還に対して真剣な交渉はしていない。

過去、人質事件があった時には日本政府は相手が誰であれ、もし金銭の提供ですむならそれを実施する姿勢を取ってきた。

 麻生財務相発言である。「要求のめばテロに屈するのと同じ」=麻生財務相。そして、朝日「予備費から身代金出す可能性に”今テロに屈する予定がないから、手続きまで考えていない”と述べた」。

 そして官房長官の発言である。

 [東京 2日 ロイター] - 菅官房長官は2日午後の会見で、過激派組織「イスラム国」とみられるグループに日本人2人が殺害された事件に関して、政府としては身代金を用意せず、犯人側と交渉するつもりはなかったことを明らかにした。

 第3者を通じ高唱したと言うが、途中で第三者を介することはあろう。しかし、「犯人側と交渉するつもりはなかった」とはどういう事だろう。

 首相の発言により、日本人が殺害された。そして交渉は行わかった。その政府を評価するが60,6%だという。これをどう評価したらよいのか。

 ◎一つは日本人の持つ限界説だ。かつてマッカーサーが日本国民をとらえてこういった。
「軍事占領とはどうしても一方はドレイになり、他方はその主人の役を演ずるものだ」
 そして日本視察をしたマサチューセッツ大学総長はトルーマン大統領に次の報告を行った。

「日本は事実上、軍人をボスとする封建組織の奴隷国であった。一般の人は一方のボスのもとから他方のボスすなわち現在の占領軍の下にK里代わっただけである」

時の支配者をそのまま受け入れる。おかしいことがあってもそのまま受け入れる。

 ◎今一つは、今の安倍政権、それに追随するマスコミの動きも酷かった。
非自治解放までは一致してあたらなければならないという声を出して批判を一切しなかった。その実、日本政府は「犯人側と交渉するつもりはない」という立場であった。
そして殺害されるや、政府擁護の御用コメントで埋め尽くした。

若干声を上げる者は潰した。批判の声を「イスラム国寄り」とリストアップした産経が典型である。




●私はこの国の未来は本当に暗いと思う。自国民の殺害を誘発した首相を是認する国民に明るい未来なんぞあろうはずがない。

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私見
 外交のエキスパートだった人物が、呻くようにぎりぎりのところから発する言葉は、冷静な絶望である。
「この国の未来は本当に暗い」
「自国民の殺害を誘発した首相を是認する国民」
「明るい未来なんぞあろうはずがない」
私は、もう少し楽観的である。「巌頭の感」を残して明治期の旧制一高の藤村操は華厳の滝に飛び込んだ。遺書はそこに残されていた。

悠々たるかな天上
稜々たる哉古今
五尺の小躯を以てこの大をはからんとす
ホレーショの哲学何ぞ及ばず
・・・・・
大なる悲観は大なる楽観に通ずることを

また、中国の魯迅は、残した。

絶望の虚妄なること、
希望の虚妄たることとひとしい

日本は、安倍晋三の手によって、戦前の治安維持法下の社会よりももっと酷い状況に陥った。それは彼によって、言語がすべて実際の内実を伴わないうわべだけの虚飾に陥った。「積極的平和主義」といえば、「強硬な軍国主義」をさす。「人命支援」といえば、軍事的侵略を背後に秘めている。安倍晋三の最大の政治的逸脱は、ふわふわしたか~~るい文化で、自分も「あの素晴らしい愛をもう一度」を臆面もなく日比谷野音ステージにのぼって歌い、「嗤っていいとも」(ふだんは「笑っていいとも」だった)にフジサンケイグループの人脈で出演し、サザンオールスターズのライブに聞きにいって、後からそうとう手厳しい抗議を行った。爆笑問題のコントにさえ鉄拳を食らわす。
こんな総理、見たことないっ!!

まさしくこの国の未来は、どうしようもない事態に陥ってしまった。