【現代思想とジャーナリスト精神】

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日刊ゲンダイが「安倍首相がなぜこんなに拙速に戦争法案を急ぐのか」明快に解き明かす 櫻井智志

2015-06-17 18:39:51 | 転載
日刊ゲンダイが「安倍首相がなぜこんなに拙速に戦争法案を急ぐのか」明快に解き明かす
櫻井智志

2015/06/17 PM6:40



 6月17日の店頭販売の「日刊ゲンダイ」に注目すべきトップ記事が掲載された。しかし、日刊ゲンダイはwebには公開していない。日を見てwebにのせると思う。以下は紙面の1面2面に及ぶ「日刊ゲンダイ」新聞から手書きで書き写し、掲載する。もとがネット上の記事ではないので、「日刊ゲンダイ」がwebに掲載するまでは、この記事の転載はあまり勧められないと思うが。
 以下に記事をそのまま写し、終わりに私見を述べたい。

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【日刊ゲンダイ】6月17日
(1面)
○米国は何を目論んでいるのか

 国の在り方を根本からひっくりかえす大転換を、なぜ乱暴な議論で急ぐのか。その根本の真相に何があるのか、蛇蝎のごとくオバマ米国に嫌われていた首相が一転、欧米で歓待されていたのはなぜなのか。

 米議会の異様な大歓迎の見返りに何を吹き込まれ、何を約束させられたのか、それが国民に全く見えず白紙委任状のごとき法案が強行採決される恐怖を大マスコミはなぜ、問題にしないのか。


 安保法制への反対が広がる中、安倍内閣の支持率も急落している。日テレの数字は支持率41.1%で2.4ポイントのダウン。3割台はすぐそこで、大台を割れば、一気に政権はガタついてくる。自民党議員も「潮目が変わりつつある」とアタフタしているのだが、こんな状況になってもハッキリしていることがある。安倍内閣は何が何でも、この国会でデタラメ法案を通す気でいることだ。

 「来週末の26日には衆院を通過させようするでしょう。そうすれば、戦後70年談話を出すお盆前に法案成立の道筋が描けるし、万が一、参院でも揉めたら強行採決ではなく、60日ルールを使って、8月中に衆院に戻して3分の2以上の賛成で再可決する選択肢が取れる。そうすれば、9月の総裁選への影響を抑えられるという読みです。いずれにしても、安倍官邸に継続審議の考えはありませんよ」(政治評論家・野上忠興氏)

 強行採決だろうが、禁じ手の60日ルールだろうが、何でもあり、とにかく、この国会で決める。
「それだけは間違いない」というのだが、これは不思議なことだ。国民の大多数も「議論を尽くせ」「説明不足」と言っているし、山崎拓元大臣らのOBたちも歴代内閣が積み上げてきた議論を軽々にひっくり返そうとしていることに怒っている。米議会で約束したとはいえ、安倍が「国民の理解を得るために時間をかける」と宣言すれば、済む話だ。それがなぜ、できないのか。なぜ、議論を避けて、姑息な手法で法案成立を急ぐのか。ここに重大な疑惑が見え隠れする。



○デタラメ安保法案をかくも急ぐ重大疑惑
 自衛隊が担う危険な任務はもうとっくに決められている
(以下2面)
○米国に媚びてスリ寄った安倍首相

 改めて言うまでもないが、一連の法案は米国から「やれ」と言われたものだ。ベースになっているのはジャパンハンドラーの代表格、アーミテージ元国務副長官とジョセフ・ナイ・ハーバード大教授による「第3次アーミテージ・ナイ・リポート」(2012年版)だ。そこには「日本が今後、世界の中で一流国であり続けたいのならば、自衛隊についての時代遅れの抑制すべきだ」と書かれていて、武器輸出の三原則の緩和や集団的自衛権行使の必要性、さらには「ホルムズ海峡への掃海艇派遣」にも言及があった。これを読めば、なぜ、安倍が日本から遠く離れたホルムズ海峡での機雷撤去にこだわり、無理やり「危機」をデッチあげて、自衛隊を出そうとしているかがよくわかる。何のことはない。リポートで書かれたことを実行に移すための法整備なのだが、そのアーミテージは昨年4月、石破幹事長(当時)と会った際、こう言っていた。

 「(集団的自衛権は)急ぐ必要はない。政権の求心力を維持する上でも経済政策を優先するべきだ」
 米国だって、急いで実現を望んでいるわけじゃないのである。

 しかし、安倍はどんどん前のめりになって急いでいく。昨年5月には集団的自衛権行使容認の検討を与党に指示、7月の「解釈改憲」閣議決定へとなだれ込んでいく。揚げ句は今年4月の訪米、新ガイドラインの合意、議会演説での同盟強化宣言と法案成立公約に至るのだ。危険な右傾化路線がオバマ大統領に嫌われていた安倍首相の方が焦って、スリ寄っているように見える。米国はそんな安倍をとことん利用すべく、議会演説にスタンディングオベーションで応えたのだろう。

 米の歓待に舞い上がった安倍にしてみれば、ここで法案が通らなければ、メンツ丸つぶれ。またぞろ、米国に愛想を尽かされてしまう。そうなれば政権の求心力に響く。要するに、保身のために、安倍はシャカリキなのである。


○米国のホンネは米英同盟並みの日米軍事同盟
 となると、今後も安倍は米国の求めるままに自衛隊をいつでも、どこにでも差し出すのだろう。「自衛隊のリスクは増えない」なんて、大ボラで、「何でもやらせる」ことになる。そのための「切れ目ない法整備」であって、国民をケムに巻くための「事態」乱発法案なのである。

 米国が自衛隊に求めていることは2012年版の「第3次アーミテージ・ナイ・リポート」に書かれていることだけではない。第2次(2007年)リポートにはもっとホンネが書かれている。

<米日同盟のモデルは米国と英国のような特別な関係だと考える。求められる要素は、互いの防衛責任の確認、新ガイドラインの誠実な履行、米3軍と陸、海、空の自衛隊の密接な協力、施設の共用、訓練の統合、さらに新しい難題に対して支援しい、平和維持や平和創出活動で協力する方法を定めなければならない>

 こう書くリポートは「新しい難題」として、次のようなものを挙げている。

<国際テロや国境を越えた犯罪、長期にわたる潜在的脅威のことである>

 「やっぱり!」ではないか。安倍がいくら、国会答弁で否定しても、米国はイスラム国への軍事的対応をすでに期待しているということだ。安保法制が通れば、米国の対イスラム国作戦が変わる可能性だってある。


○南シナ海に展開する海自のヘリ空母
 それでなくても、米国は安保法制で活動の地理的制限を取っ払う自衛隊に中東・ペルシャ湾から南シナ海の監視活動まで求めるハラだ。先週来日した米軍のハリス太平洋軍司令官は南シナ海での海上自衛隊の哨戒活動を「歓迎する」と明言している。

「おそらく、事実上のヘリ空母である護衛艦「いずも」が展開し、矢継ぎ早に対等ヘリを飛ばして、監視活動をすることになると思います。先日、来日したフィリピンのアキノ大統領はフィリピンの軍事基地を使ってくれと言っています。心配なのは経験が浅い中国海軍が常軌を逸した行動を取ることです。それが偶発的な危機を招き、自衛隊の対潜ヘリが攻撃する事態に発展する可能性があります」(軍事評論家・神浦元彰氏)

 そうすれば、言うまでもなく、戦争である。自衛隊は今年7月、初めて米豪合同軍事演習に参加する。3万人規模の演習をやる。こうやって、どんどん、米軍と一体化。その結果はすぐに米英軍事同盟と同じようになっていく。

 イラク戦争に自動参戦、176人が死亡した英国である。もちろん、そのあとにはテロとの戦いが迫ってくる。国民も自衛隊もたまったもんじゃないが、今や、覇権国家の地位を失いつつある米国のために、安倍は自ら進んで法案成立を急がせている。

 ジャーナリストの板垣英憲氏はこう言った。
「第1次アーミテージ・ナイ・リポートでは防衛庁の省への昇格、有事法制の整備、集団的自衛権の行使、憲法改正を提言していました。このうち、防衛省への昇格と有事法制は実現した。残っているのが集団的自衛権と改憲で、安倍首相はアーミテージ・リポートの総仕上げをするつもりなのでしょう。日本がそれをやってくれれば、米軍の負担軽減になる。日本に費用分担だけでなく、力の分担を求めることができる。中国の脅威論が台頭していますが、その脅威を増幅させているのは米国の言動でもある。そんな米国と一緒になって、日本は血を流す国際貢献に突き進むことになります」


○持病の不安が法案成立を急がせる
 安倍がやっているのは、米国の要望の完全履行ということだ。そこにあるのは政治的保身であり、野望であって、国益ではない。

 国会審議が長引けば、こうした事情が見透かされる。追い詰められて、詭弁答弁がバレてしまう。だからこそ、馬脚が現れないうちに、力ずくで法案を通してしまいたいのだろうが、安倍が成立を急ぐ理由は他にもある。

 ひとつはアベノミクスの化けの皮が完全に剥がれかけてきたこと、つまり、この先、支持率の回復は見込めないこと。

 もう一つはやっぱり、健康問題だ。

「持病を抱えている安倍首相にとって、第1次政権のように持病が悪化し、気持ちが萎えてしまうのが一番怖いのだと思う。だからこそ、常人では考えられないような過密スケジュールを組んで、ハイテンションを維持しているように見えます。安保体制を急ぐのも同じ理由で、継続審議にしたら、緊張の糸が切れてしまう。その心理的ダメージが怖いのだと想います」(野上忠興氏=前出)
 
 かくて、戦争法案を急ぐ安倍政権は、その理由を何一つ、国民に説明できないわけである。

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私見

私は、「日刊ゲンダイ」を読んできた。その政治社会面に比べ風俗記事には、電車内で開きづらいと思った。最近の「日刊ゲンダイ」のスクープや的確な評論に、想い出した。かつて月刊誌『噂の真相』誌は、硬軟両方で、ある週刊誌の投書欄には「あんな卑猥な記事を載せた雑誌には嫌悪感しか感じない」という女性の投書が多々見られた。会計収支が黒字なのに、編集・発行人の岡留安則氏は突然廃刊して沖縄に移り住んだ。
 「日刊ゲンダイ」の優れた報道感覚は、『噂の真相』で次々に政界の中枢を射貫く評論やスクープと似ている。百パーセント完璧である必要はない。いまの「日刊ゲンダイ」は、夜ごと料亭で大手のマスコミの幹部や経営者や中堅が、安倍首相と会食して結局は報道の自主規制から世論コントロール、報道管制へと日々悪化している。
 そんななかでの勇気ある政治の核心を射貫くジャーナリストの理性に、大いに応援したいしまなびたい。

 そういえば、きょうのトップは仕事帰りにコンビニで買ったら、なんと『橋下副総理密約説』、「安倍一派たちのドス黒い悪相」。
全国の地域紙である「北海道新聞道東版」「琉球新報」「沖縄タイムス」「中日新聞」「東京新聞」などには大いに参考となる。政党機関紙ではあるが、「しんぶん赤旗」も民衆派ジャーナリズムに徹していて良い。

 安倍首相の性急な強引政権運営には、上記の引用にしるしたように、アメリカのネオコン、軍産複合体とその操縦下の政治家からの強力な働き掛けがあることが私にも理解できた。しかし、アメリカにはもうひとつのアメリカがあり、ジェファーソンの起草した「アメリカ独立革命宣言」、リンカーンの「奴隷解放令」「ピッツバーグ演説」、さらに公民権運動のキング牧師、ニューヨーク州立大学で哲学主任教授をつとめたジョン・サマヴイルさん、ベトナム侵略戦争に抗議行動で「われ炎となりて」の著者アリス・ハーズ。このような伝統も同時にあり、それがアメリカの世界覇権主義に抵抗する思想的基盤ともなっている。

 日本にも軍事侵略国家主義に抵抗する思想家は明治以降でも数多い。なによりも、戦争法案を葬り平和国家再建をめざすために、全国で立ち上がった市民たちは、福島原発「人災」事故以来反原発運動として、さらに戦争STOPで政府の専制政治にノーの意思表示を自らができる方法で草の根としてたちあがっている。
 橋下徹氏を籠絡して副総理にと、暗ににおわせることで維新の党を、「与党独裁で強行したのでなく野党も賛成した合意形成の法案」通過と、詭弁のうらづけで済ませようと考えているとしたら、あまりにも情けない。

 もう詭弁と恫喝と利権と民主主義崩壊の安倍政権は、要らない。安倍自公政権は、全員辞職退陣する時である。