『トランプ・安倍・小池が、大衆の人気をさらう共通項を探る』
(資料:日刊ゲンダイ記事)
2016/07/23
櫻井 智志
【問題の所在と仮説】
問題
なぜこうしたポピュリスト政治屋が、多くの有権者の支持を集めてしまうのか。
小池、安倍、トランプという衆愚の大衆人気に支えられた政治家が、日米で旋風を巻き起こしている背景には何があるのか。
仮説
仮想敵をつくり、そこに大衆の不満をぶつけさせ、自らは改革者を気取る。そのやり口は危険極まりないのだが、それでも有権者はコロリと騙されてしまう。根底にあるのは、経済成長が見込めない中、将来に対する不安感からくる強い者への憧れだ。
【二人の知識人に学ぶ見解】
【見解 Ⅰ】
■「ヘイト」対象をつくり、バッシングして留飲を下げる社会~上智大教授の中野晃一氏(政治学)
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日本人も米国人も、地方にいようが高齢者だろうが、かつてはある程度の生活水準が約束されていました。国民生活を安定させるためには、徴収した税金をきちんと公共支出に回す必要があります。
しかし、現在のように国の財政が厳しくなってくると、税金で全ての国民に一定程度の生活を保障することができなくなりました。そして自己責任論が大手を振るようになり、“分断統治”が行われるようになったのです。
例えば、生活保護を受けている人を攻撃する。バスの運転手などの公務員が給料をもらいすぎだと攻撃する。
本当に特権を持っている政治家など1%の富裕層を攻撃するのではなく、99%の中に『ヘイト』の対象をつくり、バッシングすることで留飲を下げている。日米ともにそんな社会になっているから、有権者は仮想敵をつくって情念に訴えかける政治家にごまかされてしまうのです。
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【見解 Ⅱ】
■幻想に踊らされる国民~前法政大学教授の五十嵐仁氏(政治学)
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小泉さんというのは日本で初めての大衆の人気取り政治家、いわゆる『ポピュリスト』で、その小泉流の継承者が小池さんと言えます。もっとも、小泉さんは『自民党をぶっ壊す』と言ったが、結果的には自民党を『救う』形となったことを忘れてはいけません。
つまり、小池さんも同じなんじゃないか。彼女はいまでも自民党員です。都連は批判しても、自民党自体は批判していない。
そして、安倍首相も増田さんを積極的に応援するでもなく、小池さんでも増田さんでもどちらが都知事になってもいいと思っているきらいがある。小池さんは当選すれば、安倍内閣をバックに自分を高く売って、都議会のボス連中と交渉を始めるんじゃないかと思いますよ。
ポピュリズムが蔓延するのは、既存の政治体制が機能していないことへの不安の裏返しであり、日米だけではなく欧州も同様です。
英国の国民投票でEU離脱が決まったのもそう。トルコのエルドアン大統領もポピュリスト政治家です。今までのやり方に不満を持っている人たちが、今までとは違うやり方や大衆受けする約束に“幻想”を抱く。実現できるかできないかは後回しで、あくまでも幻想なのですが、それでも国民は踊らされる。
恐ろしいのは、ポピュリズムの先にあるのがファシズムだということです。両者が危険な回路でつながっていることを忘れてはいけないのです。
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【結論的提言】~日刊ゲンダイ編集部
民主主義は、国民世論の多数派が健全な判断力を有している場合に限って機能する。国民の多数がポピュリズムに煽られてしまえば、その判断は危うく、国がおかしな方向に行っても、それは国民の選択だ、ということになってしまう。
民主主義の脆弱さがむき出しになった結果、いま日米でポピュリストが力を得ているのだ。そのことを、有権者はよく考える必要がある。
(資料:日刊ゲンダイ記事)
2016/07/23
櫻井 智志
【問題の所在と仮説】
問題
なぜこうしたポピュリスト政治屋が、多くの有権者の支持を集めてしまうのか。
小池、安倍、トランプという衆愚の大衆人気に支えられた政治家が、日米で旋風を巻き起こしている背景には何があるのか。
仮説
仮想敵をつくり、そこに大衆の不満をぶつけさせ、自らは改革者を気取る。そのやり口は危険極まりないのだが、それでも有権者はコロリと騙されてしまう。根底にあるのは、経済成長が見込めない中、将来に対する不安感からくる強い者への憧れだ。
【二人の知識人に学ぶ見解】
【見解 Ⅰ】
■「ヘイト」対象をつくり、バッシングして留飲を下げる社会~上智大教授の中野晃一氏(政治学)
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日本人も米国人も、地方にいようが高齢者だろうが、かつてはある程度の生活水準が約束されていました。国民生活を安定させるためには、徴収した税金をきちんと公共支出に回す必要があります。
しかし、現在のように国の財政が厳しくなってくると、税金で全ての国民に一定程度の生活を保障することができなくなりました。そして自己責任論が大手を振るようになり、“分断統治”が行われるようになったのです。
例えば、生活保護を受けている人を攻撃する。バスの運転手などの公務員が給料をもらいすぎだと攻撃する。
本当に特権を持っている政治家など1%の富裕層を攻撃するのではなく、99%の中に『ヘイト』の対象をつくり、バッシングすることで留飲を下げている。日米ともにそんな社会になっているから、有権者は仮想敵をつくって情念に訴えかける政治家にごまかされてしまうのです。
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【見解 Ⅱ】
■幻想に踊らされる国民~前法政大学教授の五十嵐仁氏(政治学)
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小泉さんというのは日本で初めての大衆の人気取り政治家、いわゆる『ポピュリスト』で、その小泉流の継承者が小池さんと言えます。もっとも、小泉さんは『自民党をぶっ壊す』と言ったが、結果的には自民党を『救う』形となったことを忘れてはいけません。
つまり、小池さんも同じなんじゃないか。彼女はいまでも自民党員です。都連は批判しても、自民党自体は批判していない。
そして、安倍首相も増田さんを積極的に応援するでもなく、小池さんでも増田さんでもどちらが都知事になってもいいと思っているきらいがある。小池さんは当選すれば、安倍内閣をバックに自分を高く売って、都議会のボス連中と交渉を始めるんじゃないかと思いますよ。
ポピュリズムが蔓延するのは、既存の政治体制が機能していないことへの不安の裏返しであり、日米だけではなく欧州も同様です。
英国の国民投票でEU離脱が決まったのもそう。トルコのエルドアン大統領もポピュリスト政治家です。今までのやり方に不満を持っている人たちが、今までとは違うやり方や大衆受けする約束に“幻想”を抱く。実現できるかできないかは後回しで、あくまでも幻想なのですが、それでも国民は踊らされる。
恐ろしいのは、ポピュリズムの先にあるのがファシズムだということです。両者が危険な回路でつながっていることを忘れてはいけないのです。
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【結論的提言】~日刊ゲンダイ編集部
民主主義は、国民世論の多数派が健全な判断力を有している場合に限って機能する。国民の多数がポピュリズムに煽られてしまえば、その判断は危うく、国がおかしな方向に行っても、それは国民の選択だ、ということになってしまう。
民主主義の脆弱さがむき出しになった結果、いま日米でポピュリストが力を得ているのだ。そのことを、有権者はよく考える必要がある。