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【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

孫崎享氏の明晰な参院選の本質的分析と三つの課題

2016-07-24 13:45:29 | 政治・文化・社会評論
《拡散・転載大歓迎》

孫崎享氏の明晰な参院選の本質的分析と三つの課題

                 櫻井 智志

Ⅰ 孫崎氏の見解
【孫崎享のつぶやき】

『参議院の野党共闘の成功は自民、公明に深刻な影響。衆議院一人区共闘成立なら自民議席大幅に減少さす。公明、追い込まれる,山口代表は9条に手を付けないと発言。逆にこれをうけ、民進党内に党首選びで前原・長島、細野ら共闘崩しの動き』

2016-07-24 07:161



 先の参議院選挙では、自公などの「改憲勢力」が参議院の議席で3分の2を確保し、自公の圧勝という面が強調された。しかし、冷静に選挙結果を分析すると、自公には大きい不安状況が出てきている。


 自民党の獲得議席は56であったが、これは前回の65議席から大幅減になっている。大幅減を作り出したのは小選挙区で、予想以上の敗北をしたことにある。共闘は11議席を獲得した。これは、安倍首相が先頭にたち、従来にない強力な利益団体への締め付けにも関わらず実現したことによって、打撃は大きい。11議席の特徴を県内の地域別にみると、都市部だけではなくて、その他の地域にも平均的に票を伸ばしている。


 参議院選挙で野党共闘ができれば、自民党は大きく票を失う可能性が出現した。だからこそ、この危機をうけて、民主党内に野党共闘を崩そうという動きが出た。第2自民党としか呼べない人々の動きである。名前を列記するまでもなく、それは前原氏、長島氏、細野氏、馬淵氏などである。先の選挙で、共闘で利益を得たのは民進党である。それを崩そうというのであるから、彼らは民進党のために動いているのではない。


 自民党以上に深刻な影響を受けたのが公明党である。公明党の基盤は「平和の党」である。安保法制への参加によって、これが大きく揺らいだ。完全に安倍首相から「改憲勢力」と位置付けられた。これが公明党支持者に大きい打撃を与えた。選挙期間中創価学会員、公明党支持者が、野党共闘の集会に公然と現れ始めたのである。



 すでに、ブログで書いたが次の現象が出た。

「 参院選の投開票日の翌11日、朝日新聞は与党と野党統一候補が戦った1人区の投票行動について報じていた。各政党の支持層が与野党候補のどちらに投票したのかを分析したのだ。それによると、「自民候補」と「野党統一候補」に投じた割合は、自民支持層は86%、11%、公明支持層は66%、24%、民進支持層は7%、90%、共産支持層は9%、84%──だった。つまり、党の方針に従わなかった有権者の割合が自民支持層で11%、民進支持層で7%、共産支持層で9%だったのに対し、「鉄の規律」を重んじる公明支持層は24%も離反したのである。
さらに朝日新聞は〈公明党支持者中、改憲4党に投票した人(66%)の憲法改正への意識は『必要がない』が36%〉と報じた。大ざっぱにいえば、改憲4党の投票者の中でも24%(66%×36%)は改憲に反対で、離反者と合わせて計48%にも達するのだ。」



選挙戦、公明党は「改憲勢力」と呼ばれることを嫌い。「加憲」という言葉を出してきた。それだけではない。選挙戦後半では山口代表は「憲法9条に手を付けない」と強調した。選挙戦が終わって、自民党は選挙中の発言は反故にしても支障はないが、公明党はそういうわけにはいかない。「憲法9条に手を付けない」は安倍首相の思惑とは異なる。自民、公明は3分の2をとれたから即、憲法改正とはいかない。



とりあえず、
①民進党党首選挙をめぐる動きがどうなるか
②野党共闘の実現に貢献した市民グループの動きがどうなっていくか
③公明党内で憲法論議がどう展開されるか
に着目したい。

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Ⅱ 孫崎氏の提起した重要三点への私見

 昨夜までの東京都知事選の予想は、小池>鳥越>増田の獲得得票数の順位だった。今朝の読売新聞は、都知事選で小池・増田がトップを競り合っている、という記事を出し、ネット各局はそれを配信している。マスコミの安倍政権のスピーカー役は、今後もどんどん膨張していこう。すでにネットやマスコミの中に、「安倍政権」宣伝省を務める仕組みは、完璧になりつつある。それはゲッペルス=ヒットラーのナチス宣伝省とほぼ同じ役割をはたしつつある。

 東京都知事選についての対応において、巨大情報心理戦への分析と対抗戦略が重要な課題である。その際に、大手マスコミ・大手インターネットサーバーサイトから流れる情報は、それ自体が選挙戦術の一環として認識しておくべきである。1週間前の都知事選情報自体が浮動層に大きな影響力を駆使することだけ注意を喚起したい。

 さて、市民運動の中から市民・国民・民衆の情報ネットワークが、憲法廃止・明治憲法復古に対峙する取り組みがなかば自然発生的にできつつある。それは、戦後日本でも画期的な市民革命に近い自主・自立・公開の民主主義運動である。

 孫崎氏が提言していらっしゃる三点に、私はこう考えている。
①民進党党首選挙をめぐる動きがどうなるか
-確かに自民党に親しい民進党議員は存在する。この間、「市民と4野党共闘」連帯を進めてきた岡田代表の側と、それに否定的な議員側との代表選となろう。

②野党共闘の実現に貢献した市民グループの動きがどうなっていくか
―孫崎氏は、直接的に市民グルーブには加担なされていない。私は、政党よりも市民が動いている様子は、官邸前抗議行動や反原発連合に始まり、SEALDs、若いママさんの会など燎原の火のように広がり「市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)」を代表格として、参院選の野党共闘でも大切な役割を果たした。この参院選野党共闘のさきがけは北海道5区補選の池田まきさんと氏を直接擁立交渉にあたったSEALDs奥田愛基さんから始まる。池田まきんは総括文書に、明確に「日本で最初もの市民選挙」「市民革命」という言葉を表現している。

③公明党内で憲法論議がどう展開されるか
-ここは、わからない。1970~1980年代の「全野党共闘」路線を当時の代表格の社会党は唱えた。革新統一戦線派は、社共を重視したが、公明党や当時の「民社党」も加わった。社共路線と社公民路線とが対立。ついに社公合意により、日本共産党が共闘から排除され、明確な「革新統一戦線崩壊」が確定した。
 こういった歴史的な政治史をたどると、この発問への保留、というのが小生の見解である。


もう一点。
「開票・投票・当確」について

 新宿区では選挙のたびに百票あまりの投票がもちさられる事態が連続していた。それは当事者のあいだですまされてきて、ついに2016年7月24日(日)の東京新聞朝刊のシリーズ『新聞を読んで』で新聞紙面において国民に伝えられた。ITジャーナリズムに詳しい井上トシユキ氏が『「消えた一票」に思う』で全国各地を報道している。2014年11月の新宿区区長選から2015年4月の新宿区議選まで、4回あった選挙ごとの交付済みの投票用紙と開票結果が合わず、約百票ずつが行方不明となって不足していた。区議選では最下位当選者と次点の差が29票。当落結果に影響するとの指摘に、総務省は「数が多くても特段問題視はしていない」という驚くべき対応で済ませてきた。投票用紙の誤交付が原因で消えてしまう票が、今回2016年の参院選でも発生している。7月1日の群馬県みどり市で59人、7月3日の鹿児島市で34人、4日に那覇市で26人。投票日の7月10日には大阪府和泉市で53人、岐阜県羽島市では31人分が無効となっている。7月11日の夕刊(7面)では新宿区の「消えた票」は10票以下に減った。

 数年も前から評論家の本澤二郎氏は、開票作業が「ムサシ」一社によって占められ、開票作業そのものの矛盾や問題点を指摘されている。無名の庶民はかなりの人々が、開票作業を午後六時に閉めきり、開票作業の八時までの様子や開票作業中に見た不正行為の報告などを指摘している。

 私は選挙権をもらってから、一度も棄権したことがない。
いつから開票作業も行われていない投票終了時刻に、NHKテレビに「当確」のテロップが流れるようになったのか?その際に常套句として言われることは「開票はまだですが出口調査と独自の情勢分析から、今後大きく得票の伸びが見込まれる事から、当選確実と判断しました。」のアナウンスである。若い人は子どもの頃からの慣例として違和感をもたないだろう。しかしよくよく考えて、開票がなされていない選挙結果が公的報道機関から、公的結果として流されるのは、やはりおかしい。