【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

【危機的情勢への対抗戦略よりも政策の論理性・一貫性を重視する宇都宮健児氏の判断を惜しむ】

2016-07-29 23:43:33 | 政治・文化・社会評論

【危機的情勢への対抗戦略よりも政策の論理性・一貫性を重視する宇都宮健児氏の判断を惜しむ】

2016/07/29   櫻井 智志

 以下の資料①②③をとおして、私は宇都宮健児氏の政治的なスタンスとは、政治情勢を打開する国民的な共闘にはないことを思い知った。宇都宮健児氏の強固な信念ゆえのかたくなさに失望するとともに、都知事選はまたも「実質的分裂選挙」となった。その最大の原因は、つねに誠実に政治的実践に臨む宇都宮健児氏が、一方では自己完結的な論理や政策の一貫性を重視する原則的な視野しかもたない政治行動にある。


【資料①】
 体験的宇都宮健児氏論

 最初に、宇都宮健児氏が都知事選立候補となった時のことである。
市民運動で、市民の中から候補を出そうと呼び掛けたのは、住民運動の理論、実践ともに含蓄の深い今井一氏であった。第一回の集いで、ともかくもそれぞれが立候補できる人物を探してこようということになった。この集まりは「グループ【私が東京を変える】」と名付けられ、いまも団体は存続している。二回目の会合で、私は当時所属していた「平和への結集をめざす市民の風」代表の太田さん、大津留さんとともに湯浅誠さんを擁立しようと企図した。会場で今井一さんは弁護士の伊藤真さんの名前を出した。その場に元国立市長の上原公子さんが参加し、私たちの集まりは宇都宮健児さんを推薦し、本人の承諾を得ているとおっしゃった。三回目。弁護士の海渡雄一さんたちも参加された。湯浅誠さんは大阪の橋下氏らの維新グループの地方自治破壊に対して対応するために大阪に転居していて、東京都知事選には無理という返事を大津留さんにくださった。これらの経緯から、宇都宮さんを推薦することとなり、団体も宇都宮さんたちが立ち上げた団体が推進母体となっていった。

 二度目の都知事選には、直接かかわらず、ネットでの宇都宮さん支援をつづけた。ただ、この時、ある弁護士が激しく宇都宮氏を論難した。内部のことはわからないので、どちらがどうかもわからなかった。この都知事選では、元総理の細川護煕氏が出馬した。私は尊敬するジャーナリスト鎌田慧氏らが細川氏を応援したことに鑑み、鎌田氏・細川氏と宇都宮氏の協議と一本化を構想していた。しかし、親しい日本共産党の実践的知識人のブログなどを見てみると、細川・宇都宮一本化「協議」さえ日和見的な誤謬と批判する論調に、日本共産党の路線を明確に感じた。

 そして、三度目の都知事選。宇都宮氏の候補辞退。日本共産党幹部小池晃書記局長は、礼を尽くして対応し、鳥越氏の応援演説会の冒頭でも、宇都宮氏の候補統一への積極的辞退を称揚し、讃えた。ただ、宇都宮氏にしてみれば、それだけ計画的持続的に都知事選にとり組みつづけた努力と執念は、生半可なレベルのものではなかったから、おだやかな宇都宮氏が激高してインタビューに応じて話す様子、会見後、涙をながしたことなど、それだけ誠実で実行型の政治家であることを無言の内に示していた。


【資料②】
宇都宮健児公式ブログ

都知事選の応援要請について01
2016.07.27

お知らせ
東京都知事選も終盤を迎えています。
私たちのもとに、電話やメールなどという形で、「鳥越候補の支援に入ってほしい」(あるいは「入るべきではない」)といったさまざまな声が多く寄せられています。
これについての現時点での私たちの対応をご報告します。
本日27日午前中、希望のまち東京をつくる会に対し、鳥越候補の側から初めて公式に応援要請がありました。
これを受けて、私たちは午後、選対スタッフとの協議の場をもち、本日20時、宇都宮が応援要請を受ける政策面などの条件について書面で回答しました。現在そのお返事をお待ちしている状況です。
これまで鳥越候補への支援について多くのご意見を頂戴しておりましたが、私たちは、どこまでも政策本位であること、また、支援について多くの都民の納得を得られる状況が必要であること、また今日まで正式な要請もなされておりませんでしたので、みなさまへのご報告が遅れました。こころよりお詫び申し上げます。
また進展がありましたらご報告させていただきます。
2016年7月29日


【資料③】
日刊ゲンダイ

宇都宮健児氏に聞く 「なぜ鳥越氏の応援しないのですか」
2016年7月29日

宇都宮氏の返答は(C)日刊ゲンダイ

 野党が共闘して都知事選を戦うために、土壇場で出馬を取りやめた宇都宮健児氏(69)。しかし、選挙戦に入っても、宇都宮氏は一度も鳥越俊太郎の応援演説に立ってない。どうして、街頭に立たないのか、28日夜、本人に電話で真意を聞いた。

――鳥越事務所には「宇都宮さんは鳥越さんの応援をしないのか」という問い合わせが殺到しているそうです。先日、宇都宮さんの支援者の集会が開かれたそうですが、鳥越さんを応援するかどうか、結論は出たのでしょうか。

 女性人権問題(週刊誌報道)について、こちらが要求したことと鳥越氏側からの回答が一致しなかったので、宇都宮選対としては「判断できない」ということです。

――宇都宮さんの個人的な判断で、例えば「鳥越さんが(週刊誌報道に関する)裁判で負けたら都知事を辞めてもらう」という前提で、街宣車で「(鳥越氏と)政策は一致している」と応援演説をなさる可能性はないのですか。


 あの~、それも詳しくは話せないのだけれど、応援演説に入る条件として要請したものと違うものが返ってきたので、きのうの段階では「入れない」ということでした。

――かなり鳥越さんが厳しい情勢なので、宇都宮さんが街宣車に乗って「政策は鳥越さんが最も近い」という話をするだけで、全然違うと思うのですが。

 女性人権問題(週刊誌報道)がなければ、街宣車に立って応援演説をしていたでしょう。

――あの記事は10年以上前の話で、本当に人権侵害ならば、もっと前に法的手段に訴えたのではないですか。

 その議論をするつもりはありません。

(取材=ジャーナリスト・横田一)

私見
 「女性人権問題」を重視する宇都宮氏は、人権を擁護する弁護士であり、日弁連の会長も歴任されている。そのお立場からの見解とも思う。では、週刊文春の第一報以来の大手マスコミの洪水のような情報量は、人権擁護の草の根のこえだろうか?もしも宇都宮氏がそう思っているとしたらなら、「甘い」。都知事選での情報戦術の一環として、「市民と野党共闘」連帯の立場から立候補した候補・鳥越俊太郎氏を選挙戦の冒頭で叩き、出鼻を挫いた。鳥越歓迎の盛り上がりは、波をひくように沈静化された。終盤戦では「週刊新潮」がさらに反復・拡大した。宇都宮氏には、何かが欠けている。私はそう思った。
 残る一日となった。私は、いま必死で懸命に猛暑の中で闘いつづける鳥越俊太郎氏と鳥越候補を支える「市民と野党共闘」連帯の人びと、無言で実務を支えつづける人々。彼らを応援し共に闘う。
 選挙結果、だけではない。北海道5区補選で選挙には敗れたが、全国に圧倒的な「市民と野党共闘」連帯の推す候補が続々と当選していった。どう闘うか。どのように闘うか。それが都知事選最大の眼目となって、近い日にある衆院総選挙を占う位置となる、そう私は考えている。