【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

民主的立憲政権樹立の探求(中) 櫻井智志

2020-08-27 19:52:46 | 社会思想史ノート
構成
❶2014年の提言(上)・・・前回
❷2020年の実態(中)・・・今回
❸民主的立憲政権樹立の構想(下)

Ⅱ:2020年の実態~自公(維)政権に抵抗する勢力の実態と結集 



➀ 前回Ⅰの要諦
 A:【2014年の提言~国民統一戦線への展望粗案】
 私は、日本共産党はまず日本共産党として結束し発展すればよいと考えるようになった。革新統一戦線の時は社会党と共産党がほぼ互角か共産党の議席が少ない状態だった。いま社会党にあたる勢力が、社民党、新社会党、緑の党、みどりの風、社会大衆党などの「護憲リベラル」結集勢力と思う。一党にまとまらなくとも、イタリア版オリーブの木形式でもよい。「護憲リベラル」として結集すること。そのうえで日本共産党と提携したらどうか。その提携に一緒に戦える保守政党人なども結集していく。政党政治が今の日本の議会制民主主義の根幹だが、「議会制独裁主義」が広がっているいま、国民的規模での統一戦線を3つの段階を考えて構築したらどうだろうか。

 B: 21世紀の今日に、統一戦線を結成するためには、日本共産党において組織論の民主集中制は継承され検証されてきたものであるけれども、国民ないし日本に定住する民衆全般にわたる組織論としては、「円卓の論理」「フォーラムの論理」がふさわしい。統一戦線のテーブルにつく全ての個人と集団が対等に意見を述べ、行動の決定においても、少数派の意見が行動に反映される必要がある。諸個人は自らの見解を披歴するとともに、他者の意見を十二分にわきまえて納得し、行動においてはそれぞれが他者の存在を認めながら、一致点を追求する必要がある。統一戦線が成立するためには、積極的に相手の存在と見解とを尊重して吸収できるだけの確固とした人格が、成員に形成されていなければならない。



➁ 自公安倍政権の実相

 安倍政権が「黒い雨」訴訟に広島地裁が下した道理をふまえた判決を控訴するという。呆れて言葉もない。核兵器禁止条約に加わらない、原発には再稼働をすすめ、福島原発被害者を援護しない。アメリカには言いなりになり沖縄に米軍がもちこんだコロナになんの抗議も言えない。「被爆者を二度被爆させる」最低の政権である。
・憲法破壊空洞化だった解釈改憲を上回る軍国憲法創設はクーデターに等しい
・金権汚職政治の私物化
・国家を維持する国土保持予算・医療予算・社会福祉予算の数年に及ぶ連続削減
・アメリカ大統領トランプの言いなり外交経済軍事政策
・造語「アベノミクス」や意味の異なる「積極的平和主義」などまやかし多用

それらを受けて端的に社会が空洞化し異常な事件が発生している。TBS報道特集を視ながら私が思ったことをまとめた文章がある。以下に記す。

底知れぬ差別と偏見の国に住んで~2020.3.21『報道特集』
2020-03-27 23:21:45 | 政治・文化・社会評論
櫻井 智志

 神奈川県津久井やまゆり園大量殺傷事件。19人が殺された。金平茂紀キャスターは、植松聖被告に3度面会し何度も手紙のやりとりを続けた。検察の求告通り死刑の判決がくだった。金平氏は、「2か月17回の裁判で、この事件がなぜ起きたのか、被告人がおこした事件を解き明かすには全く十分ではない。なにひとつ事件の本質はあきらかになっていない」と結んだ。


 植松被告の言葉がいくつか明らかとなった。
「被害者の家族は、精神を病んでいる」
「トランプ大統領は勇気をもって信念を話している。生き方がかっこいい」
最後の出廷で「かっこよければすべてが手に入る」
荒唐無稽にも思える植松聖被告の言葉。だが番組は、れいわ新選組の参議院議員木村英子氏が登場し、私は衝撃を受けた。


木村さんは「(植松被告は)私だったかも知れないという恐怖を感じた」と語った。
「施設には小さないじめやいじわるがしょっちょうある。その究極が植松被告。」
「誰の心にでも潜んでいる」
「育てるのが精いっぱい」。木村さんは明るく元気な子どもだったが、突然の事故で転落して、くびの骨を骨折、脳に損傷を負い、車椅子生活をおくる。家族は、育てるのが精いっぱいだったという。
「うちの家族も一家心中未遂は何度もあった」
木村さんは車椅子からおち、冷たい床にずっと横たわったままで放置されたままの体験を数回体験している。介護する側の悔しさや失望感も感じてきた。
「殺して」、
虐待している側の罪悪感なども感じた。
障がい者が生きていける、当たり前の社会を作ってこなかった。
木村さんは、もしも自らが国会議員に当選して施設から出ることが遅れたら、植松聖被告のような犯罪に巻き込まれるか自分が自暴自棄になるか、どうなっていたか・・と考えた。


 川崎市幸区の老人介護施設で奇妙な事件が起きた。高層7階の廊下から3人の老人がわずかな期間に、同じ場所から転落して死亡した。捜査によって、施設に勤務していた青年男性職員がおこなった行為と判明した。

 植松被告が、やまゆり園に深夜侵入して次々に殺傷した被害者たちはみな自分への不当な犯罪に抗議の声をあげないひとびとだったという。金平キャスターは、ある事実を知る。植松被告は、つぎつぎに殺傷する時、職員に「こいつは声をあげるかあげないか?」と尋ねその応答によって攻撃実行の判別にしたという。

植松「僕は死にたくないんだ」
金平「津久井やまゆり園で働いていなかったら、変わっていたと思いますか」
植松「変わっていたと思う」

 金平氏は言う。「この事件がなぜ起きたのか」事件は解き明かせないままで裁判は終えた。被告人の更生とは離れている。優生思想が、私たちの社会にゆきわったっている。
植松被告はこう告げたという。
「自分は、正義を実践している」


 犯罪は、社会を反映しているし、社会の縮図でもある。最近日本の自殺率はここ2,3年下がっている。だが日本国内を覆う閉塞感は、不定形の構図を国内に形づくっている。植松被告の事件は、精神鑑定で異常、と片づけられる問題ではない。日本社会から急速に失われつつある事態。
 この国には、高まる軍国化志向の管理主義と並走する底知れぬ差別と偏見が不気味にゆきわたりつつある。左翼、右翼をひっくるめて、緊急事態を多用してニッポン差別偏見社会というシステムが完成している。-了=

③ 自立する市民運動の成熟

ケース1 山本太郎

 現在2020年において、東京都知事選に挑んだ宇都宮健児・山本太郎両氏の今までの市民として意欲的な実践は特記に値する。山本太郎氏が2019参院選に、日本共産党大阪選挙区の辰己幸太郎候補を宣伝カーに同乗しマイクで語り続けた応援のスピーチは、他の共産党員のスピーチよりも迫力があった。山本氏は神奈川選挙区でも共産党あさか由香候補を前川喜平氏・山口二郎氏と街頭で応援演説をした。それらの事実からすれば、2020都知事選での山本太郎氏出馬を野党分断だと決めつける一部宇都宮候補支援者の批判は背景もわきまえていない。
 立民党は山本太郎氏に都知事選出馬を促し続けた。先立つ京都市長選の真っ最中からの働きかけなので、市長選応援をないがしろにしていると顰蹙をかった。それでもコロナ感染症の急激な拡大で、サラリーマンがホームレスに陥り、窮乏化する現実を見た山本氏は、実際はれいわ新選組代表として衆院選準備に取り組んでいたがそれを停止し、都民の暮らしを救援するために立民党枝野代表ら首脳部と交渉に入った。山本氏は従来消費税を廃止する政策だったが、5%説を柱にした。相手は妥協しなかった。もうひとつ、衆院選準備との兼ね合いで「れいわ東京」候補と申し込んだ。だが立民党側は「無所属」を譲らなかった。もう告示直前だったので山本太郎氏は単独で立候補に臨んだ。なお以上の記述は直接に山本氏の選挙街頭演説で傍聴した内容である。

ケース2  宇都宮健児

もう一方の宇都宮健児候補は立候補を非難するどころかそれぞれ政策論争で競いあいましょうと応じて、一度も山本候補を選挙期間中も選挙後も非難も批判もしなかった。ここに宇都宮健児氏の独自のひそかなポリシーがあった。
以下やや長くなるが宇都宮健児氏について記したい。

宇都宮健児、日本社会改善への長く明確な闘い
ー20200801うつけんZOOMライブー
 以下は東京都中野区の市民団体が開催したZOOMライブでの宇都宮健児氏の発言を聴写したものである。20008年8月1日のほぼ午後2時~4時に開催された。(文責 櫻井智志)
❶知事選を語る
 冒頭宇都宮さんは語った。韓国の視察をおこない立候補する決意を固め、それが2016年前回知事選。結果は辞退したが、今回満を持して2020年立候補した。結果は小池知事が現職でコロナ問題を、安部政府に比べよくやったと都民にうけとめられた。だが候補のテレビ討論会が一度も行われなかった。

 「れいわ新選組との共闘について。」出馬会見の頃は市民の要請を受けて、ひとりで出馬した。後から、政党が次々に応援してくれた。誰でも政策を掲げて立候補すべきと思う。選挙戦をとおして一層候補者が政策を磨きあうことが大事だ。

 「都のコロナ対策」。小池さんはオリンピックが延期決定まで対応しなかった。日本の検査は先進国中35位。 世田谷区がニューヨーク形式を取り入れ電話による申し込みでいつでもどこでも検査に応じている。政府はPCR検査を徹底する必要がある。財政力があるのに、GoToトラベルをやり真剣に取り組んでいない。
 コロナ患者を受け入れる病院ほど経営的に赤字になっている。都立病院公社病院は経営にこだわらずコロナに取り組んでいる。独立行政法人化は、民営化であり病院をだめにする。 
 国民都民に貧困化が増大している。15兆4000億の財政を都はもっている。これは北欧一国の予算なみ。都が貧困化にとりくめば解決できるのに、できていない。知事の考えが希薄である。

❷日本の政治の特質

 砂川事件の問題のときに、最高裁に市民の抗議は集まらなかった。安保闘争のときに国民が立ちあがった。日本は市民革命としていまの憲法をかちとったわけでない。
 警察は行政に属し、検察は司法に属す。黒川検事長の定年は行政が口を出すべきではない。安倍首相はそれを正しく理解していないし、国民が結果的に許す結果になっている。#検察庁案の改定に反対です、のツイッターが広がって世論にも広がる。
 国際人権規約では大学まで授業料を無償にとうたっている。その予算をどうするか、税金、法人税をもっと論議して改定すべき。国民は論議せずわかっていない。税金をどう使うか、もっと国民が関心をもち考え合う必要がある。

❸都民に応える

 少人数学級。教師が十分に取り組むには30人以下の人数にすべき。教師数や学校数を増やすべき。デンマークなどでは、教師が知識をつめこむのでなく、子どもの自らの学びを援助すべき。 
 ジェンダー平等。女性が半数なのにその人権が認められていない。また、多様な性のありかたを人権保障から考えるべきである。
 生活保護は憲法25条で「健康で文化的な生活を国が補償する」と明記している。
 健康法。小中は野球をやっていた。中二から大学まで卓球をやっていた。いまは歩くことを重視している。 「自己責任」「生活保護」自己責任という言葉は、昔はあまり使われなかった。困難な状況に置かれている人々を分断する役割をはたし、政治家を免責することばとなっている。
 兄弟が高齢になり、飢餓死して発見された。生活保護を福祉事務所に申請していなかった。生活保護を権利として受け止め、福祉もまわって援助すべき。韓国ソウル市では、それが実現している。
 人権について。個々の人間に尊厳が保障され世界的国際的な人権規約に謳われている。日本社会で実現されているのか.建前で言っていても、人権侵害の言動をくりかえす政治家もいる。
 差別によって貧困で苦労している人々の存在を、大学で知った。そこから弁護士をめざした。サラ金問題で悲惨なめに追い込まれていることに、個別救済だけでなく立法運動に弁護士として取り組んできた。
 法律を変えるために、自民党や公明党の半分以上をロビー活動として弁護士会としてとり組んできた。

❹今後の展望

 都知事選は終わったけれど、課題に社会運動として取り組んでいきたい。都議選は、都議会の7割は小池さんの与党。コロナ、カジノ、教育、家賃補助制度、など課題は来年の都議選の課題。 つぎの知事選は自分のことも含めその時の状況による。

「私たちにできること」
都議会や区議会の傍聴。要望。一緒に考えること。投票率の低
さは外国スウェーデンなどに比べても低すぎる。民主主義が根付いていない。投票率は民主主義と密接。日本では政治に関心をもつことに高校生でも偏見をもたれることを変えたい。
「座右の銘」
真理は寒梅のごとし (新島穣)
「将来の夢」
市民活動家として実践を弁護士活動ののちもやっていきたい。
保守や中道も加われるような運動を。韓国のパク・クネ大統領弾劾運動は、リベラルだけでなく保守や中道も一緒に動いた。韓国に近いのがオール沖縄の取り組みです。翁長さん自身が自民党です。
「最後に」
サラ金問題に取り組み弁護士と立法化するまで30年かかった。そう簡単に変わらないけれど誰かが変えることで社会は変わっていく。戦後ほとんど自民党政治なのはなぜかを考える必要がある。地方の市町村議選から国政まで粘り強く変えていかなければ。<了>


ケース3 自主自立の市民運動群像

 戦後史でも、市民社会論争がさかんだった頃、日本は「市民社会」を形作る経済的社会構成体が形成されておらず、市民も「臣民」を抜け出してやっと公民的状態だった。政治家の中で日本共産党委員長の志位和夫氏が「市民」「個」「個性」について着目し、それをベースに「市民と野党の共闘」を政策として位置づけている。
 首都圏反原発連合(写真)やそれをいかした全国にある市民連合は、新たな市民像を感じさせる。一つの政党の枠組みの中にある市民団体も大衆化にとって意義はある。
だが「市民連合」「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」「九条の会」をはじめ市民が自ら考え立ち上げていく動きは、若い世代でも高齢者世代でも広がっている。

➃ 野党政党の健闘と検討

 国会では、立民党・国民党・共産党・社民党など国会対策に野党が共闘しあって国民の気持ちや要求を活かして取り組んできた。
 社民党が、緊急事態法に「与野党の別なく」賛同に加わったのは反対である。だが沖縄県で多くの県民に支持され、オール沖縄の有力な政党として健闘していること、福島みずほ党首が平和と護憲の理論派として言行一致の政治家であることを応援したい。私は日本共産党を選挙で支持し続けている。 
 ただベースは #国民統一戦線 の理念である。3層からなる。1:護憲リベラルを軸とする野党の結集グループ。2:日本共産党と共闘するれいわ新選組、緑の党、新社会党。3:保守本流と護憲保守のグループ。この3つが重層的に統一戦線を結成し、反安倍反極右政権に闘う。一気に実現できずとも持続。
 当面は、政権構想で抗争せず。新型コロナパニックの政治で、個人の人権と国民主権の民主主義の立場から、専制管理主義を強権発動する安倍政権に、第二次大政翼賛会に巻き込まれぬ声を拾い集めていきたい。#地方自治体首長選や衆参一人区では平和人権護憲派を、議員選では日本共産党を主に応援したい。
立憲民主党の福山哲郎、国民民主党の平野博文両幹事長と連合の相原康伸事務局長は8月27日、都内で共同記者会見し、新型コロナ禍を踏まえた新たな社会像について、3者が共有する「理念」として発表した。原発政策などに関しては「低炭素なエネルギーシステムを確立する」とした。
立民国民にも連合の影響は大きい。テレ朝労組が民放労連から脱退したが、テレ朝労組を非難する前に、労組が追い詰められている現在は人が進歩する労働の権利を放棄させる。労働の根本的危機であることを市民が認識しなければ。

➄ 民主的立憲政権を樹立するための変革主体形成

 今の情勢のもとでは、民主的立憲政権を樹立することは困難である。それは野党側の個々人が、烏合の衆と似た不安定さをもっていて、個人として日本の改善にとり、自己の思考や感性に多数依存、空気に続く流される風潮が多いことが主な原因である。
 たとえば沖縄で平和運動センター続く流される代表の山城博治、ひとりで闘うことを決めて意を決して都知事選に出馬した宇都宮健児、山本太郎、そのような人格像が求められている。
 また国民民主党の馬淵澄夫元国土交通相は、東京都知事選(7月5日投開票)に立候補したれいわ新選組の山本太郎代表の街頭演説に駆け付け、支持を表明した。国民は自主投票を決めているが、党所属議員が山本氏の応援に入るのは馬淵氏ひとりだった。組織に自分なりの信念を表明するくらいの主体がなければ、あっと言う間に自民党入りした議員もいた。
 民主党政権で厚労相に就任した長妻昭は、毅然として厚労省の官僚におもねずに任期最後まで貫いた。また小澤一郎氏は政権交代に賭けて深謀にたけ、自民党幹事長を振り切って野党で一貫して実践し続けた。毀誉褒貶するがこのかたの存在はいまの日本に重要な意義をもっている。<了>

(近日中の『「民主的立憲政権樹立の探求」下』へ)

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