http://spotlight-media.jp/article/334913206663287974 Life・Society 2016.11.08
ネットやテレビで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」のコーナー。今回も興味深いお話を伺ってきました。
みなさんは、日本における1日あたりの自殺未遂者の数をご存じでしょうか?
答えは、「約1,500人」です。
日本の年間自殺者の数は、2万4,025人(2015年度)ですが、過去1年間で自殺未遂を経験した人は、53万5,000人にも上るそうです。1日あたりに換算すると、約1,500人が自ら命を絶とうとしていることになります。この自殺未遂者の多さは、日本の大きな問題といえるでしょう。
そんな現状を変えるため1971年に誕生したのが心の危機に追い込まれた人々の話を聞くボランティア活動「いのちの電話」。多くの自殺志願者を支えてきた彼らですが、相談員の方々は「もっと、多くの相談者を支えたい」という思いに日々悩まされているようです。
この記事では、「埼玉いのちの電話」で相談員として活動していらっしゃるMさん(女性・活動歴20年)に取材を敢行。死にたいと願う人々に対し、電話越しで応える想いや葛藤を伺いました。
年間、約3万件の相談が寄せられる「埼玉いのちの電話」
「埼玉いのちの電話」の看板
2015年、「埼玉いのちの電話」に寄せられた相談の件数は、2万8,961件。2016年8月のボランティアの実働人数は284人で、1人当たり月2~3回の当番制で電話を取っています。
ボランティアの年齢は20~70代、性別・職業もさまざま。中には、親族、友人、同僚を自殺で亡くされたことをきっかけとして、相談員になった方もいるそうです。
Mさんがいのちの電話相談員として活動し始めたのは、約20年前のこと。当時、兵庫県西宮市に住んでいたMさんは阪神・淡路大震災を経験。お子さんの通っていた小学校が遺体安置所になり、震災で苦難に見舞われる人々を目の当たりにする中、「何もできない」ことに対しやりきれない思いを感じたそうです。そんなとき、「いのちの電話」で電話を取っているボランティアの方がいることを耳にし、相談員として活動することを決めたといいます。
17%が「死にたい」と相談
「埼玉いのちの電話」のMさん
――相談員としての活動を始められた20年ほど前と今を比べると、相談内容は変わりましたか?変わったとすれば、どのように変わりましたか?
「一番大きく変わったのは、自殺に関する相談の電話が増えたことです。20年ほど前は全体の3~4%でしたが、昨年は17%くらいが『死にたい』という内容の相談でした。それだけ、電話を取る相談員も大変になってきていると感じます」
昔より、自殺に関する相談が増えた原因は、「経済的な問題」が大きいとMさんは話します。特に、リーマンショックがあった2008年は、それ以前と比較して30%ほど相談が増えたといいます。そのときに比べれば、今はだいぶ相談が落ち着いてきているのも確かですが、やはり就職難といった問題は多くの人を苦しませているようです。
アドバイスはしない。ただ認めてあげることが大事
――相談を聞くときに、どんなことに気を付けていらっしゃいますか?
「『相手の気持ちを十分に聞く』。この一言につきると思います。『共感』するという言い方が、一番近いのかな。あるときは相手の家族になったり、あるときはお友達になったり、そういう対等な感じでお話を聞けたらと思っています」
――仮に、私たちの家族、恋人、友人が思い詰めていたとしたら、どんな風に話を聞けばいいでしょうか?
「つらい思いを、黙って聞いてあげてください。その方と親しければ、親しいほど、何かをアドバイスしたくなるんですよね。『頑張らなくちゃ』とか『そんなことしちゃダメ』とか。でもそうではなくて、いい・悪いは言わずに、話を聞いてあげてほしいと思います。つらかったり、苦しい気持ちを『今、そういう風に考えているんだね』と、ただ認めてあげてほしいです」
手首を切ったばかりの相談者から電話も
――いのちの電話では、相談者の方が「アドバイスがほしい」とおっしゃったとしても、基本的に助言はされないそうですね。どんな理由があるのでしょうか?
「なかなか難しいところではありますが、やはり自分で決めたことでないと、人は動けないものなので。私たちがお話を聞いていくうちに、ご本人様が『こうしたい』と自分で考えられるようになるのが一番いいと思っています」
いのちの電話の場合、病院やカウンセリングのような予約や身支度が必要なく、自宅から直接相談が寄せられます。つまり、かなり危ない状態の方や今すぐにでも死にたいと考えている方もいるということです。実際に、手首を切ったばかりの方や、過呼吸の状態の方からも電話がかかってくるそうです。
そこで、相談者の方の意に沿わないアドバイスをしてしまうと、電話を切られてしまうこともあるとのこと。そのため、Mさんを始めとした相談員の方々は、とにかく話を聞いて「落ち着いていただく」ことを心がけていらっしゃるとのお話でした。
「1本でも多く電話を取りたい」それが私の願い
――相談者の方を「支えられなかった」と悔やんだご経験はありますか? たくさんの電話がかかってくるとお聞きしましたが、すべてに対応することはできていらっしゃるのでしょうか。
「じつは相談員の数はすごく少なくて、『埼玉いのちの電話』にかかってくる電話は、3〜4%以下しか取れていないのが現状です。つまり100本の電話のうち、3本か4本しか取れていません。相談員の方はみなさん一生懸命ですし24時間365日稼働はしていますが、それでも人員の関係上、取れる電話は限られてしまいます。
たまに、警察や遺族の方から、『亡くなった人が、ここ(埼玉いのちの電話)に何回もかけている』と電話がかかってくることがあります。でも調べてみると、こちらでは電話を取れていないんです。そういう状態の方がたくさんいて、亡くなられているという事実を知ると、『せめて、1回でもつながっていれば…』とやるせない気持ちになります。
今後、1人でも多くの方にボランティアに参加していただきたいと思っています。そして、『1本でも、多くの電話を取りたい』、それが私の中の一番大きな願いです」
多くのボランティアが参加することで、支えられる命がある
日々、命を手放そうとする人々と向き合い続けるいのちの電話の相談員(ボランティア)たち。あらためてお話をうかがってみると、その裏側には、支えたくても全員を対話することができない葛藤がありました。
記事を読み、ボランティアに関心を持った方は、各都道府県のいのちの電話までお問い合わせください。
感想;
いのちの電話 つながらない メール(インターネット)相談の状況
1人の自殺者のバックには10人の自殺未遂者がいると言われていました。
最近の調査では20人という結果がでていました。
今も鉄道での飛び込み自殺が続いています。
本人は苦しくて、楽になりたくて、思わず飛び込んでしまうのだと思います。
遺族は助けられなかった苦しみだけでなく、賠償金を請求されます。
ある人の知り合いがJRに飛び込み自殺して、その実際かかった費用として500万円を請求されたそうです。
ネットやテレビで話題のニュースに関して、編集部が独自の切り口で取材調査をする「ソコ行く!?ソレ聞く!?取材班」のコーナー。今回も興味深いお話を伺ってきました。
みなさんは、日本における1日あたりの自殺未遂者の数をご存じでしょうか?
答えは、「約1,500人」です。
日本の年間自殺者の数は、2万4,025人(2015年度)ですが、過去1年間で自殺未遂を経験した人は、53万5,000人にも上るそうです。1日あたりに換算すると、約1,500人が自ら命を絶とうとしていることになります。この自殺未遂者の多さは、日本の大きな問題といえるでしょう。
そんな現状を変えるため1971年に誕生したのが心の危機に追い込まれた人々の話を聞くボランティア活動「いのちの電話」。多くの自殺志願者を支えてきた彼らですが、相談員の方々は「もっと、多くの相談者を支えたい」という思いに日々悩まされているようです。
この記事では、「埼玉いのちの電話」で相談員として活動していらっしゃるMさん(女性・活動歴20年)に取材を敢行。死にたいと願う人々に対し、電話越しで応える想いや葛藤を伺いました。
年間、約3万件の相談が寄せられる「埼玉いのちの電話」
「埼玉いのちの電話」の看板
2015年、「埼玉いのちの電話」に寄せられた相談の件数は、2万8,961件。2016年8月のボランティアの実働人数は284人で、1人当たり月2~3回の当番制で電話を取っています。
ボランティアの年齢は20~70代、性別・職業もさまざま。中には、親族、友人、同僚を自殺で亡くされたことをきっかけとして、相談員になった方もいるそうです。
Mさんがいのちの電話相談員として活動し始めたのは、約20年前のこと。当時、兵庫県西宮市に住んでいたMさんは阪神・淡路大震災を経験。お子さんの通っていた小学校が遺体安置所になり、震災で苦難に見舞われる人々を目の当たりにする中、「何もできない」ことに対しやりきれない思いを感じたそうです。そんなとき、「いのちの電話」で電話を取っているボランティアの方がいることを耳にし、相談員として活動することを決めたといいます。
17%が「死にたい」と相談
「埼玉いのちの電話」のMさん
――相談員としての活動を始められた20年ほど前と今を比べると、相談内容は変わりましたか?変わったとすれば、どのように変わりましたか?
「一番大きく変わったのは、自殺に関する相談の電話が増えたことです。20年ほど前は全体の3~4%でしたが、昨年は17%くらいが『死にたい』という内容の相談でした。それだけ、電話を取る相談員も大変になってきていると感じます」
昔より、自殺に関する相談が増えた原因は、「経済的な問題」が大きいとMさんは話します。特に、リーマンショックがあった2008年は、それ以前と比較して30%ほど相談が増えたといいます。そのときに比べれば、今はだいぶ相談が落ち着いてきているのも確かですが、やはり就職難といった問題は多くの人を苦しませているようです。
アドバイスはしない。ただ認めてあげることが大事
――相談を聞くときに、どんなことに気を付けていらっしゃいますか?
「『相手の気持ちを十分に聞く』。この一言につきると思います。『共感』するという言い方が、一番近いのかな。あるときは相手の家族になったり、あるときはお友達になったり、そういう対等な感じでお話を聞けたらと思っています」
――仮に、私たちの家族、恋人、友人が思い詰めていたとしたら、どんな風に話を聞けばいいでしょうか?
「つらい思いを、黙って聞いてあげてください。その方と親しければ、親しいほど、何かをアドバイスしたくなるんですよね。『頑張らなくちゃ』とか『そんなことしちゃダメ』とか。でもそうではなくて、いい・悪いは言わずに、話を聞いてあげてほしいと思います。つらかったり、苦しい気持ちを『今、そういう風に考えているんだね』と、ただ認めてあげてほしいです」
手首を切ったばかりの相談者から電話も
――いのちの電話では、相談者の方が「アドバイスがほしい」とおっしゃったとしても、基本的に助言はされないそうですね。どんな理由があるのでしょうか?
「なかなか難しいところではありますが、やはり自分で決めたことでないと、人は動けないものなので。私たちがお話を聞いていくうちに、ご本人様が『こうしたい』と自分で考えられるようになるのが一番いいと思っています」
いのちの電話の場合、病院やカウンセリングのような予約や身支度が必要なく、自宅から直接相談が寄せられます。つまり、かなり危ない状態の方や今すぐにでも死にたいと考えている方もいるということです。実際に、手首を切ったばかりの方や、過呼吸の状態の方からも電話がかかってくるそうです。
そこで、相談者の方の意に沿わないアドバイスをしてしまうと、電話を切られてしまうこともあるとのこと。そのため、Mさんを始めとした相談員の方々は、とにかく話を聞いて「落ち着いていただく」ことを心がけていらっしゃるとのお話でした。
「1本でも多く電話を取りたい」それが私の願い
――相談者の方を「支えられなかった」と悔やんだご経験はありますか? たくさんの電話がかかってくるとお聞きしましたが、すべてに対応することはできていらっしゃるのでしょうか。
「じつは相談員の数はすごく少なくて、『埼玉いのちの電話』にかかってくる電話は、3〜4%以下しか取れていないのが現状です。つまり100本の電話のうち、3本か4本しか取れていません。相談員の方はみなさん一生懸命ですし24時間365日稼働はしていますが、それでも人員の関係上、取れる電話は限られてしまいます。
たまに、警察や遺族の方から、『亡くなった人が、ここ(埼玉いのちの電話)に何回もかけている』と電話がかかってくることがあります。でも調べてみると、こちらでは電話を取れていないんです。そういう状態の方がたくさんいて、亡くなられているという事実を知ると、『せめて、1回でもつながっていれば…』とやるせない気持ちになります。
今後、1人でも多くの方にボランティアに参加していただきたいと思っています。そして、『1本でも、多くの電話を取りたい』、それが私の中の一番大きな願いです」
多くのボランティアが参加することで、支えられる命がある
日々、命を手放そうとする人々と向き合い続けるいのちの電話の相談員(ボランティア)たち。あらためてお話をうかがってみると、その裏側には、支えたくても全員を対話することができない葛藤がありました。
記事を読み、ボランティアに関心を持った方は、各都道府県のいのちの電話までお問い合わせください。
感想;
いのちの電話 つながらない メール(インターネット)相談の状況
1人の自殺者のバックには10人の自殺未遂者がいると言われていました。
最近の調査では20人という結果がでていました。
今も鉄道での飛び込み自殺が続いています。
本人は苦しくて、楽になりたくて、思わず飛び込んでしまうのだと思います。
遺族は助けられなかった苦しみだけでなく、賠償金を請求されます。
ある人の知り合いがJRに飛び込み自殺して、その実際かかった費用として500万円を請求されたそうです。