幸せに生きる(笑顔のレシピ) & ロゴセラピー 

幸せに生きるには幸せな考え方をすること 笑顔のレシピは自分が創ることだと思います。笑顔が周りを幸せにし自分も幸せに!

「水辺のブッダ」ドリアン・助川著 ”償い尽くせない人生を生きること”

2019-11-10 13:42:08 | 本の紹介
会社で盗難が何度か発生し、その犯人が望太(主人公)だとうわさが立った。その噂を流した田島を問い詰めたところ、逃げ出したので追いかけて揉めている内に田島を殺害してしまった。自宅からは盗品が見つかった。6年の刑期になったが、妻から娘(絵里)を殺人者の子にはしたくないとのことで、離婚した。子どもには父親は亡くなったと大きくなってから伝えた。

新宿で長くホームレスしようとしたが、もう死のうと思い、多摩川に行きそこで入水した。意識が遠のいた。しかし、多摩川を根城にしていたホームレスに助けられた。それから多摩川を根城にするホームレス仲間と暮らすようになった。そこにブンさんという、ちょっと悟ったような人物が周りのホームレスに精神面で助けていた。
望太もその一人になった。

・「刑期をまっとうしたのに、毎晩のようにうなされている。法的にどうであれ、それはあなたの償いが終わっていないということですよね」
望太は遅れて、「はい」と答えた。
「だったら、償いのためにも、あなたは生き抜かなければいけない。それが生きる義務というものですよ」
「でも、ブンさん・・・。どうしたら償いなんてできるのですか? 人を殺したんですよ。なにをどう償ったところで彼の命は戻らない。娘に対してもそうです。娘の父親を死なせてしまった。それはたしかにかっての俺ですけど、今はもう、父親だったその男はいない。二人の人間に、いえ、田島の奥さんや、多くの人たちにも取り返しのつかないことをしてしまった。もちろん俺だって、償えるものならそうしたいです。この命にかけて、そうしたいです。だけど、どうしたら・・・」
「ならば、命をおかけなさいよ。どうすれば償えるのかということも、障害かけて考えぬきなさい。それが望太さん、あなたの人生ですよ。命ある限り、そうして生き抜くんですよ」
・・・
「ただね。望太さん。生き抜くと決めた以上は、苦しみ一色でもいけません。そきに飲まれ過ぎてしまえば、見えるものも見えなくなる。できれば、一日のうち三十分でも、あなたの個を滅却する時間をつくった方がいい」
「滅却?」
「あなたがあなた自身を意識すること。それを消し去り、裸の命に戻る時間ですよ」
意味がわからず、望太は潤んだままのブンさんの目を見た。
「どんな苦悩もそうですが、それは、私が私であると意識するところから始まります。あなたの苦しみも、あなたのものですよね」
「はい。そうだと、思います」
「ならば、あなたがあなたであるという意識が消えればどうなりますか? 苦しみも、あなたとともに消え去ることになります」

・「これはあなたに言っていいことなのかどうか・・・。自分の本当の父親は、この世にいないと思っていたようですよ。特区の昔に病死していると思っていた。それなのに、つい私が言ってしまいましてね。死んだ記録はないと。あのときの絵里さんの表情、まだはっきりと覚えています」 ・・・
「死んだと教えられてきた父親が、実は生きていた。それはきっと、私たちには想像のつかない衝撃を彼女に与えたんじゃないでしょうか。こういう言い方はよくないかもしれませんが、あなたの娘さんはすでにさまよい始めていますよ。職業(警察官)柄わかります。家庭にはもう、戻れないんじゃないかな。頼る人もいないかもしれない。そんななかで、あなたのことも思うでしょう。生きているなら、なぜ会いにきてくれないんだって。どうして自分を捨てたんだって。それなのに、あんたはこのざまだ。傷ついて生きていくのは勝手だけど、それこそ身勝手ってものですね。いまだに人を苦しませ続けているんじゃないですか。自分の本当に娘を」
望太の肩が落ちた。膝に置いた手がかすかに震えている。
「絵里さんと、あなた、いつか会うかもしれませんね。それがにとは言い切れないのが人生というやつです。そのとき、今の姿でいいんですか? たとえ生涯一度でも、会うかもしれない。それ、考えてくださいね」

感想
一生かけても償い尽くせないことをしてしまうことがあります。
それでも生きていくこと。
生きていることに価値があるのでしょう。
もちろん、何かを周りのために行えるならそれはステキなことです。