・強固な支持母体を持たない維新の会は、有権者の選好を鏡に映し出すゆおに政策内容に反映させようとする。それは、本書のキーワードである財政ポピュリズムとも関連している。こうした財政運営は維新の極めて重要な政策ツールとなる。
・大阪維新の会が口にする「大阪の成長」が本当に実現したのかを、いくつかのデータを用いて分析する。そこから見えてくるのは、大阪全体の底上げというよりも、一部の地域や事業に偏った「成長」の姿である。
・急激な(公務員の)縮小は、2011年以降、つまり大阪維新の会が首長が姿勢を運営するようになってからである。中之島一家批判の矛先が、主に公務員に向けられたことを思い起こせば、維新の会は実際に、公務員組織の縮小という手段を用いて改革を進めたこととなる。
・大阪維新の会は2010年代後半から、家庭の教育費負担に対する地方財政独自の支援の拡大を強調している。とはいえ、維新の会は、教育費の公的支援について一貫して手厚い方針を示していたわけではない。大阪府知事時代の橋下徹は、府による就学支援補助の私学に対する減額に抗議した生徒や保護者に「今の世の中、自己責任だ。保護されるのは義務教育まで。希望の学校へ入れないと不満があるなら海外の学校へ行けばよい」と、にべもない言葉をかけている。
橋下によるこの発言は、維新の会結党以前の2008年10月23日のもであるとはいえ、同党の象徴的存在であった橋下の過去の思想を思い出せば、現在の維新の会の推進する教育政策のスタンスは、180度の方針転換があったと言っても過言ではない。
・大阪府の人口100万人あたりの死者数は974.4人と、全国で最も多い(2023年5月9日最終集計)。
・2020年3月以降、統計のある2023年5月までの新型コロナウイルス罹患に伴う死亡者の累積数は、大阪府が最下位であった。特に2022年2月の感染流行期においては、それまでワースト二位であった北海道が一定の抑え込みに成功した一方で、大阪府では再び死亡者数が増加した。
・「身を切る改革」と均衡財政を前提に、マジョリティを含めた普遍主義的なサービスを提供するためには、いずれかの予算を削り取り、全体に配り直す必要がある。限られた財源の範囲内でマジョリティへの配分を意識する教育政策は、普遍主義的な発想でありながら、その陰でマイノリティから財を奪い、社会的分断を生み出しかねない。
・生活保護受給率は現状でも極めて高い水準で推移しているが、大阪市の埼葛保護の人口一人あたり支出の水準は2011年以降、低下傾向にある。偏差値で見ると、2011年には85付近であった生活保護費の一人あたりの支出は2021年まで緩やかに低下している。
実額で見ても、大阪市の近年の人口一人あたり生活保護費は2011年の12万⑤千円をピークに、2021年には10万円強に減少している。特に、2020年、2021年はコロナ禍でもあったため、それまで同じく低下傾向であった横浜市や名古屋市でもわずからに生活保護費の一人あたり額が増加したが、大阪市のみ現象となっている。
・大阪維新の会が「成長を止めるな」と喧伝する中、大阪府の企業や個人の所得水準は横ばいであり、雇用者報酬については全国平均に対して低下傾向にある。こうした数値は、大阪府の地方税の歳入が、全国的な水準から見ればほとんど横ばいであったことと整合的である。以上、税収やGDPといった指標からは、明確な「大阪の成長」を読み取ることは難しいといえる。
維新「財政ポピュリズム」論を検証する現代の理論
感想;
コロナ死者数が全国一。成長もしていない。なのに府民は大阪維新の会を評価している不思議。
数値で以って維新の実績を客観的に評価しているように思いました。
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