寅次郎(伊勢谷友介)の黒船渡航事件に対応する家族の描写が秀逸でした。
息子が死罪になるかもしれない状況で、
父・百合之助(長塚京三)は畑仕事が残っていると、畑にいく。飯を食べれば「美味い」と言う。
母・滝(檀ふみ)は風呂を焚く。
心の中は嵐が吹きまくっているのに、あくまで日常に生きようとする彼ら。
彼らは寅次郎の事件も日常の出来事として受け入れようとしている。
梅太郎(原田泰造)の妻・亀(久保田磨希)も日常を生きる。
「お帰りなさいまし。ほんによう戻られました」
上手い描写ですね。
怒ったり、泣き叫んだり、落ち込んだりするよりも彼らの戸惑い、混乱、不安が伝わって来る。
チラリと見える本音もあった。
母・滝は、江戸、東北、長崎などを旅してきた息子に関して「次は異国ですか……」
思わず「そっちかよ!」と、ツッ込みたくもなるが、母親の愛情を感じさせる見事なせりふだ。
これは伏線にもなっていて、滝はラストでこうつぶやく。
「あんなに旅の好きな子やったのに、もう二度と外に出られんとは……」
父・百合之助もいつもと同じ生活を送りながら、心の中ではさまざまなことを考えていた。
父親としての責任の取り方だ。
「国の法を破った以上、いずれその責めは誰かが負わにゃならん」
「わしは凡庸じゃ。
才もなけりゃ金もない。
異国へ出ようという勇気もなければ、文之進のように己が憎まれる覚悟で子をしつける強さもない。
こういう形でしかお前たちを守ってやれん」
百合之助も滝も強い人ですね。
文(井上真央)も強く、賢い。
「あんなに旅の好きな子やったのに、もう二度と外に出られんとは……」
という滝の言葉を受けて、書物は広い世界に通じていることを語り、
「うちが兄上の手足になります。
そうすれば兄上は海も渡れる。異人にも会える」
おそらく今後、文は、野山獄の寅次郎の手足になることで、兄からさまざまなことを学ぶのだろう。
つまり松下村塾の最初の塾生。
あるいは、寅次郎の思想、考え方を継ぐ女性版・吉田松陰の誕生か?
これは『八重の桜』で八重が兄から鉄砲のことを学んだことと比べると、面白い。
寅次郎の黒船渡航の描写の仕方も上手い。
牢の囚人たちに語る形で、回想される渡航シーン。
最初、囚人たちは「そんなバカなことがあるか」と信じないが、次第に話に引き込まれていく。
そして、最後は牢名主が、
「異国は脅威なのか? もっと話を聞かせろ」
寅次郎らしいエピソードですね。
まさに誠を尽くして話せば他人は共感してくれる、という話。
今回は脚本の上手さと父・百合之助の長塚京三さんの演技に感心しました。
息子が死罪になるかもしれない状況で、
父・百合之助(長塚京三)は畑仕事が残っていると、畑にいく。飯を食べれば「美味い」と言う。
母・滝(檀ふみ)は風呂を焚く。
心の中は嵐が吹きまくっているのに、あくまで日常に生きようとする彼ら。
彼らは寅次郎の事件も日常の出来事として受け入れようとしている。
梅太郎(原田泰造)の妻・亀(久保田磨希)も日常を生きる。
「お帰りなさいまし。ほんによう戻られました」
上手い描写ですね。
怒ったり、泣き叫んだり、落ち込んだりするよりも彼らの戸惑い、混乱、不安が伝わって来る。
チラリと見える本音もあった。
母・滝は、江戸、東北、長崎などを旅してきた息子に関して「次は異国ですか……」
思わず「そっちかよ!」と、ツッ込みたくもなるが、母親の愛情を感じさせる見事なせりふだ。
これは伏線にもなっていて、滝はラストでこうつぶやく。
「あんなに旅の好きな子やったのに、もう二度と外に出られんとは……」
父・百合之助もいつもと同じ生活を送りながら、心の中ではさまざまなことを考えていた。
父親としての責任の取り方だ。
「国の法を破った以上、いずれその責めは誰かが負わにゃならん」
「わしは凡庸じゃ。
才もなけりゃ金もない。
異国へ出ようという勇気もなければ、文之進のように己が憎まれる覚悟で子をしつける強さもない。
こういう形でしかお前たちを守ってやれん」
百合之助も滝も強い人ですね。
文(井上真央)も強く、賢い。
「あんなに旅の好きな子やったのに、もう二度と外に出られんとは……」
という滝の言葉を受けて、書物は広い世界に通じていることを語り、
「うちが兄上の手足になります。
そうすれば兄上は海も渡れる。異人にも会える」
おそらく今後、文は、野山獄の寅次郎の手足になることで、兄からさまざまなことを学ぶのだろう。
つまり松下村塾の最初の塾生。
あるいは、寅次郎の思想、考え方を継ぐ女性版・吉田松陰の誕生か?
これは『八重の桜』で八重が兄から鉄砲のことを学んだことと比べると、面白い。
寅次郎の黒船渡航の描写の仕方も上手い。
牢の囚人たちに語る形で、回想される渡航シーン。
最初、囚人たちは「そんなバカなことがあるか」と信じないが、次第に話に引き込まれていく。
そして、最後は牢名主が、
「異国は脅威なのか? もっと話を聞かせろ」
寅次郎らしいエピソードですね。
まさに誠を尽くして話せば他人は共感してくれる、という話。
今回は脚本の上手さと父・百合之助の長塚京三さんの演技に感心しました。