平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

おんな城主直虎 第35回~井伊はさして負けておらぬのではないですか。 皆様は生きている。 民はいくさに連れていかれることもなかった

2017年09月04日 | 大河ドラマ・時代劇
 今回は〝戦争〟について考えさせられる回だった。

 直虎(柴咲コウ)は言う。
「いくさに勝つとは何であろう?
 勝ったところで、またいくさに駆り出される。
 深手を負い馬に乗れぬ者もおる」

 そう、仮に勝ったところで、憎しみの連鎖は続き、戦争は続くのだ。
 アメリカはイラク戦争に勝ったが、9・11が起こり、「イスラム国」が生まれた。
 現在は北朝鮮との緊張が高まっているが、仮に戦争をして勝ったとしても、北朝鮮の残党によるテロの可能性は高まるだろうし、新たに中国・ロシアとの緊張が始まる。
 安倍さん、あなたはタカ派のようだけど、そういう想像力は働かせてね。

 龍雲丸(柳楽優弥)は、いくさの勝ち負けについて、こう語った。
「井伊はさして負けておらぬのではないですか。
 皆様は生きている。
 民、百姓はいくさに連れていかれることもなかった」

 そう、政次(高橋一生)は考えたように、最良の策は出来る限りいくさを避けて逃げることなのだ。
 もちろん、戦争が始まれば、巻き込まれて何らかの傷は負う。
 しかし、大きな負けにはならない。
 隠れ里の身を隠した井伊の人間は皆、生きて、政次の真似をして笑っている。
 逆に戦った鈴木重時(菅原大吉)は戦死し、近藤康用(橋本じゅん)は怪我をした。
 ………………

 今回のエピソードで、僕が最も印象的だったのは、今川氏真(尾上松也)だった。
「和睦は有り難いぞ、三河の守殿」
 自分を裏切り、追い詰めた憎むべき相手なのに、家康(阿部サダヲ)のことを「三河の守殿」と呼んだ。
 家康も敬意を払うことを忘れずに、
「はい、太守様」
 こんなやりとりがなされれば、〝憎しみの連鎖〟は起こらない。

 そして、氏真が披露したのは、〝蹴鞠によるいくさの決着論〟!
 蹴鞠で勝負をつければ、人も死なないし、お金もかからない。
 ほんと、それ。
 甘い空想家の考えで、信玄(松平健)などの強欲な連中には鼻で笑われてしまうけど、世の権力者がみんな氏真のような発想を持てればいいのに。

 何もかも失った氏真はこんな悟りに似た境地にもたどり着いた。
「今まで私は身の丈に合わぬ鎧をつけていた。
 しかし、今、やっと肩の荷が下りた」

 そう、人は身の丈に合った生き方をすればいいのだ。
 身の丈以上のことを望めば、必ず苦しむことになる。
 氏真は今川家を失ってしまったが、生きているし、妻もいる。
 これからは不信にとらわれることもなく、穏やかに暮らせるだろう。
 それだけで十分ではないか。
 龍雲丸が言ったように、いくさに勝つことだけが勝利ではない。
 負けて得たものの方が大きいこともある。
 これが直虎が問いかけた「いくさに勝つとは何であろう?」の答えなんでしょうね。

 やはり、この作品には「非戦」の哲学があるな~。
 戦争というものを、さまざまな角度から追究して描いている。
 ………………

 最後は瀬戸方久(ムロツヨシ)。
「もう、いくさの道具は売りません。
 では、何を売るか?
 人を助けるもの、薬を売ります」

 戦争で儲けることは同じなのだが、武器を売るより薬を売る方がずっと上等。
 安倍さんもさ、武器輸出三原則を変えて、武器を売れるようにしちゃったけど、武器で儲けるって卑しいことだと思うよ。


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2 コメント

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癒やしと芽生えの季節 (TEPO)
2017-09-04 23:18:35
>やはり、この作品には「非戦」の哲学があるな~。
>戦争というものを、さまざまな角度から追究して描いている。

おっしゃるとおりですね。
本作は「戦国」の世にあって、本当に戦を避けながら生き抜く人々のドラマなのでしょうね。

直虎にしてみれば城と政次を失い、龍雲丸まで斬られて「どん底」に見えながら、大局的に見れば龍雲丸の言うとおり「井伊はさして負けておらぬ」。
今回は、井伊家にかかわる人々が心身の傷が癒やされ、新しい生命の芽生えに向かいつつある姿が描かれていました。
私はオープニングの映像を思い出しました。
花の小枝と矢とが飛び交い、鏃で花びらは散らされてしまうが、直後には力強い芽生えの映像が続きます。

今回は、直虎と同様に視聴者である私も「隠れ里」に避難している一族の人々がいとおしく感じられました。
特に元気な「元百姓娘」高瀬と慣れない「貧しい生活」に適応しようとしている人々の姿が心に残りました。

直虎が「薬の口移し」を南谿和尚のしたことにした直後、南谿にことさら龍雲丸に親しげな態度をとらせたのは作者の遊び心でしょうね。
ただし、「一人生き残って」しまった龍雲丸は今後どのような道を歩むのでしょうね。
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生活者の勝利 (コウジ)
2017-09-05 10:35:31
TEPOさん

いつもありがとうございます。

なるほど、あのオープニングは今回のエピソードのことを描いているんですね。
これからも、この再生のイメージは繰り返し、形を変えて描かれていくんでしょうね。

それと、書き忘れていましたが、隠れ里のシーンは僕も癒やされました。
井伊の人たちの笑い声と生活。
これを持っている人間こそが勝利者なんですよね。
そして、彼らはたくましい。

口移しのシーンは、小林薫さん、何かそれ(=男色家)っぽく演じていましたよね(笑)
その演技を見て、柴崎コウさんも思わず笑ってしまった感じ。
役者さんの遊び心も感じました。

龍雲丸は……。
そうか、彼はまだ救われていないんですよね。
失って、ぽっかり空いた穴を埋められずにいる。
まだまだ楽観はできないんですね。
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