平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「坂の上の雲」第1話「少年の国」~少年は青年になる。秋山真之も日本という国家も

2024年09月18日 | 大河ドラマ・時代劇
「坂の上の雲」第1回「少年の国」前・後編を見た。
 14年前の放送は見ているのだが、あの頃よりは少しは成長していると思うので
 改めて「坂の上の雲」を考えてみる。
 ………………………………………………………

 御維新を経て日本人は「国家」というものを意識するようになった。
 自分はその「国民」だと言われた。
 その「国民」は学問をして努力を続ければ、政治家・軍人・企業家など何にでもなれる、
 と言われた。

 このことは当時の人々にとんでもない高揚感をもたらした、と司馬遼太郎は考える。
 これが司馬遼太郎の「明治」に対する基本的な史観だ。
 確かに僕がその時代に生きていたら、ものすごくワクワクしていただろう。
・「村」という小さな世界に生きていた人間に「国家」という大きなものを突きつけられた。
・自分もその一員だと言われた。
・農民は農民として生涯を終えると思っていたのに、何にでもなれると言われた。
 このワクワクは現代に生きていても想像できる。

 秋山真之(本木雅弘)、正岡子規(香川照之)もこのワクワクを抱いて東京にやって来た。
 大学に入るために予備校に入る。
 そこで後に財務大臣・総理大臣になる高橋是清(西田敏行)に英語を習う。

 だが横浜の外国人居留地に行った時、真之たちは自分たちの「国家」の現実を知る。
 欧米の西洋人から「サル」と蔑まれている現実だ。

 外国人居留地で真之たちはこんな事件を目撃する。
 英国人が難癖をつけて日本の商人(蛭子能収)から鎧を奪い取ろうとしていたのだ。
「金を払って下さい……!」と懇願する商人に英国人は「これは盗まれたものだ!」と
 突っぱねて、鎧・兜を荷車に乗せる。
 なおも食い下がる商人の背中をステッキで叩く。
 この横暴に対して、真之は英語で次のように抗議する。

『イギリス紳士は博愛精神に富み、弱きを助け強きをくじく。
 常に法を拠り所にして犯罪や不正を憎み、正義を貫く』

 高橋是清の英語授業のテキストに書かれていた「英国人像」だ。
 英国人にとっては、このフレーズは学校で教えられる一般的なものらしい。
 言われた英国人は一瞬ひるむが、横暴をやめない。
 そこにひとりの人物が現れる。
「ひさしぶりに懐かしい言葉を聞きました」
 英国人の海軍大尉ジョーンズ(ブレイク・クロフォード)だ。
 ジョーンズは英国人にあるまじき行為をした英国人に謝るように言う。
 英国人にもまっとうな人がいるのだ。
 ジョーンズと真之は握手をする。

 事はこれで収まるが、真之は自分たちの国の課題を知る。
『治外法権』だ。
 犯罪を犯した外国人を日本人は裁けない。
『治外法権』に対して高橋是清は真之たちに言う。

「この国の法律と憲法をつくり国会を開く。
 国としての正義を世界に示すのです。
 日本が紳士の国だと世界に認めさせることができたら治外法権はなくなるでしょう」

 真之は日本の現実を知り、具体的に自分は何をすればいいかを考え始めた。
 少年のようなワクワクから現実的な行動へ。
 無邪気な少年は考え悩む青年になっていく。
「坂の上の雲」はこうした青年たちの成長物語でもある。

 そして、それが日本という国家の成長・成熟とリンクしている。
 物語は「少年の国」の時代から新たなステージへ。
 青年たちと日本国家はどのような道を歩んでいくのだろう?


※追記
 英国人のアイデンティティは──
『イギリス紳士は博愛精神に富み、弱きを助け強きをくじく。
 常に法を拠り所にして犯罪や不正を憎み、正義を貫く』
 日本人のアイデンティティはどんな言葉で表わせばいいのだろう?


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