平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

GANTZ PERFECT ANSWER~憎しみの連鎖を止めるということ

2012年05月01日 | 邦画
 この作品にはいくつかの隠喩がある。

 まずは、得点・点数社会。
 玄野計(二宮和也)は星人との戦い方、戦果によって得点がつけられる。
 これって、学校や受験での試験と同じ。
 トータル百点を獲れば、<記憶を消されて解放される>か<好きな人を生き返らせる>という特典が得られるのも点数社会の隠喩。
 試験でいい点数をとれば、いい大学・いい企業・いい生活が送れるという現実と同じ。←現代では、この神話もかなり崩れつつあるが。
 いずれにしても玄野たちは、ニンジンを目の前にぶら下げられて走らされる馬と同じなのだ。
 あるいは星人との戦いに負ければ、死んでしまうということも。
 現代社会では勝ち抜いていかなければ、たちまち落ちこぼれて、いわゆる<負け組>になってしまう。
 GANTZの登場人物たちの戦いはそのまま現代人の生活でもある。

 ふたつめは、会社組織や国家。
 玄野たちに戦いを強いるGANTZは、会社組織や国家に他ならない。
 人々は会社に入れば、シェア争いなど、他のライバル会社との競争に勝たねばならない。
 国家は時に<戦争>を起こし、国民を武器を与え戦場に向かわせる。
 黒い球体であるGANTZは不気味な存在であるが、この不気味さは会社組織や国家に他ならない。

 みっつめは<やられたからやり返す>という論理。
 玄野たちは、自分たちが何のために星人と戦っているのか正確には理解していない。
 地球を征服されるのを防ぐため? しかし、それも確かではない。
 唯一、確かなのは星人が「お前たちが最初に戦いを始めたんだ」「殺された仲間の復讐のために戦っている」という言葉。
 これって、現代の<アメリカとアルカイダの戦い>に似ている。
 アメリカがイスラム過激派を暴力で鎮圧したから、9・11が起こしたアルカイダ。
 9・11が起きたからアフガニスタンを攻めたアメリカ。
 この<やられたからやり返す>という論理は、玄野たちと星人との戦いにもそのまま当てはまる。
 いつの間にか戦う大義が霧散して、<やられたからやり返す>という復讐目的の戦いになっている。

 このようにGANTZの世界は現代社会の隠喩である。
 戦いは果てしなく続き、人々は戦いを強いられる。

 一方、この戦いをやめる唯一の方法がある。
 それが玄野が選んだ方法。(以下、ネタバレ)



 <PERFECT ANSWER>
 つまり戦うことを放棄することだ。
 玄野はGANTZとなり、星人との戦いを放棄する。
 死んだ人間を生き返らせ、戦士たちを解放する。

 戦いを放棄して<やられたからやり返す>という憎しみの連鎖を棄てることで、人々は穏やかな生活を取り戻すことが出来る。
 この<PERFECT ANSWER>が全世界に行き渡れば、世界は紛争のない平和な社会になれるのに。
 現在、日本は北朝鮮や中国を仮想敵国として、防衛力の増強などをしようとしている。
 自民党は<自衛隊>を<防衛軍>にしたいそうだ。
 確かに北朝鮮や中国が、将来、GANTZの世界でいう<星人>になる日が来るのかもしれない。
 でも、そんな時、われわれが思い出さなくてはならないのは、玄野が選んだ戦いを放棄するという<PERFECT ANSWER>だ。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 平清盛 第17回「平氏の棟... | トップ | 朝まで生テレビ! 田原総一... »

コメントを投稿

邦画」カテゴリの最新記事