平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「アルキメデスの大戦」~「数字はウソをつかない」が「人間はウソをつく」。ここに人間社会の悲喜劇が生まれる。

2024年06月20日 | 邦画
 空母VS戦艦。
 来たるべき戦争で有効なのはどちらなのか?

 山本五十六(舘ひろし)と永野修(國村隼)は空母派。
 嶋田繁太郎(橋爪功)と造船中将・平山忠道(田中泯)は戦艦派。
 戦艦派の主張の根拠は──
「戦艦こそが日本海軍の象徴である」
「砲撃戦こそ日露戦争以来の日本海軍の伝統である」
「巨大戦艦を目の当たりにすれば敵は怖じ気づくだろう」
「戦艦は美しい」
 
 こんな理由で物事は決められていくんですね。
 戦闘機による戦いこそが次の戦い方なのに。
 現在の日本の防衛は大丈夫なのだろうか?
 今になって「ドローンが重要」とか言っているけど……。

 さて、空母VS戦艦。
 山本五十六ら空母派は「空母の建造費より戦艦の建造費が安いこと」に疑問を持つ。
 戦艦派の見積もりのウソを暴くために、自ら巨大戦艦の建造費を割り出そうとする。
 そこで抜擢されたのが、帝大の数学の天才・櫂直(かい・ただし 菅田将暉)だ。

 櫂は奮闘する。
 補佐するのは海軍少尉の田中正二郎(柄本佑)だ。
 艦船の建造費は海軍の機密であるため、十分な情報を得られない。
 七転八倒の末、櫂はこんな数式を導き出す。
『艦に使用された鉄の総量から建造費を割り出す数式』だ!←すげえ!

 結果、見積もりのウソがバレる。
 主人公・櫂は胸を張って言う。
「数字はウソをつかない!」

 だが、物語はここで別の展開を迎える。
「数字はウソをつかない」が「人間はウソをつく」のだ。

 人間や組織の意思決定は必ずしも「数字の正しさ」でおこなわれない。
「思惑」「利害」「思想」「理想」で決められる。
 そのためには数字を誤魔化すし、ウソもつく。
 だから人間社会は厄介なのだ。
 数字の正しさや合理性がなくても、あらぬ方向に突っ走ってしまう。
 ここに人間社会の悲喜劇が生まれる。

 物語はここからさらに、ひと捻り、ふた捻りされる。
 ネタバレになるので書かないが、この捻り方が素晴しい。
 これが映画『アルキメデスの大戦』を深い作品にしている。

 それにしても、平山中将ではないが、やはり戦艦大和は美しい。
 主人公の櫂もこの美しさには抗えなかった様子。

 監督・脚本・VFXは『ゴジラー1.0』の山崎貴さん。
 山崎貴監督はVFXで大和を再現したかったのだろう。
 山崎監督はTAMIYAのプラモデルを一生懸命作った子供だったに違いない。


※追記
 本作に拠れば、太平洋戦争開始時のアメリカと日本の国力差は──
 工業力~アメリカ:日本=50:1
 石油 ~アメリカ:日本=120:1
 やはり無謀な戦争だった。

※追記
 ヒロインの尾崎鏡子役は浜辺美波さん。
『ゴジラー1.0』でも使っていたけど、山崎監督、浜辺美波さんが好きだねえ。
 浜辺さん(鏡子)の顔がなぜ美しいのかを数学的に解明するシーンもあった。笑


※関連動画
 映画『アルキメデスの大戦』予告(YouYube)
 攻撃を受けて傾く大和……!


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