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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

軍師官兵衛 第32回「さらば、父よ!」~時が来るまで待て。摘み取る頃合いを考えろ

2014年08月11日 | 大河ドラマ・時代劇
 祖父の言葉は父に、その言葉を父が子に伝える。
 こうして価値観は未来に伝えられていくのでしょうね。

 黒田家の場合は、薬草摘みのエピソード。
「時が来るまで待て。摘み取る頃合いを考えろ」
 この黒田重隆(竜雷太)の教えが職隆(柴田恭兵)に伝えられ、官兵衛(岡田准一)に、長政(松坂桃李)に伝えられる。
「ケチでなく倹約」の教えも光(中谷美紀)から糸姫(高畑充希)に伝えられた。

 職隆、官兵衛、長政の描き分けも面白い。
 職隆は隠居の身ゆえ、ゆったりしている。
 長政に語る言葉もやんわりと間接的に。
 一方、官兵衛は現役。
 厳しい権力闘争の中に生きていて、一歩間違えば一族を滅ぼしかねないから、語調もきつくなる。
 職隆がやんわりと語り、官兵衛がズバリと語る。いいコンビネーション。
 そして、長政は未熟。
 未熟は若さの特権だが、長政の場合は考えるより手が先に出るタイプのようだ。
 知略というよりは武力の人。
 しかし、自分の間違いを認めると、即座に領民に頭を下げる潔さを持っている。御曹司にありがちなおかしなプライドがない。
 これは長政の優れたところ。

 政治に目を移してみれば、
 秀吉(竹中直人)は<権力の魔力>に取り憑かれ始めている。
「大将はわしじゃ。官兵衛に頼らずともわしは勝てる」
 と、変なプライドを持ち始めている。
 同時に「官兵衛は先が見えすぎている」と家臣に対する猜疑心。
 <プライド>と、自分の地位を奪われるのではないかという<猜疑心>が権力者を狂わせる。

 今回、秀吉が、官兵衛の進言(~徳川と戦うのではなく、四国、九州を平定すれば自ずと徳川は臣従してくる)を「もっともじゃ。官兵衛の言うとおりじゃ」と受け入れたのは、かろうじて、かつての自分を取り戻したからか?
 いずれにせよ、物事が見えなくなりおかしくなっていく秀吉。
 こういう時は官兵衛のような厳しいことを言ってくれる、官兵衛のような存在が必要なのだが、どうしても石田三成(田中圭)のような官僚タイプを重用してしまう。
 三成(田中圭)を叱りとばした官兵衛の言葉が次の心地良い。
「面目を守るためのいくさなど愚の骨頂!」
 現在も「中国や韓国になめられないために軍備増強せよ。誇りある日本を取り戻せ」という人達がいるけど、愚の骨頂。

 考えてみると、官兵衛はすでに若者に物事を教える立場になったんですね。
 今回、長政に教え、三成に教えた。
 しかし、官兵衛の言葉は長政には響いたが、三成には届かなかったようだ。

 立ち位置で面白いのは、蜂須賀小六(ピエール瀧)と道薫・荒木村重(田中哲司)。
 小六は、徳川とのいくさに否定的な官兵衛に「上様の前でむしかえすなよ」と忠告する。
 苦労を共にしてきた良き同僚という感じだ。
 道薫は物事をシビアに客観的に見ている。
「いずれにせよ、上様は少しお変わりになった。そうは思いませぬか?」
 道薫は、秀吉の傍にいて<権力は人を狂わせる>いう現実を見定めようとしているかのようだ。

 最後は職隆の言葉。
「家族を信じ、家臣を信じ、乱世を生きのびるのじゃ」
 この言葉はしっかり官兵衛に受け継がれている。


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2 コメント

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面白くなってきました (TEPO)
2014-08-11 20:24:28
本能寺前後から、本作は格段に面白くなってきたと思います。

小牧・長久手および四国遠征での合戦シーンがまたまたカットされていました。
例によって批判する人が多いようですが、山崎の合戦を省いた分「中国大返し」の兵站を丁寧に描き、今回また毛利との戦後処理の領地交渉、長政の領国経営の苦労といった地味な活動を描いている点は一つの見識だと思います。
戦国武将の仕事の中でもチャンバラはほんの一部に過ぎないことを明確に主張しているわけですから。

また、織豊期の武将が主人公だとどうしても「信長物」「秀吉物」の「外伝」になってしまいがちですが、最近はしっかり官兵衛が主人公になってきています。
もっとも、たしかに前半ではちょっと信長パートの比重が大きすぎた-不要論までは唱えませんが-かもしれません。

大河ファンであれば秀吉物をいくつか見ているので、今後の羽柴=豊臣家が「おね-清正・正則ら武将派=尾張派」と「淀殿-三成ら吏僚派=近江派」とに分裂してゆくことを知っています。
黒田家は新参ですが、長政はおねに預けられ、清正・正則とほとんど「朋輩」であり、今また糸の絆で蜂須賀家とも縁が深いので、前者に近くなることでしょう。
今回すでに三成との確執が暗示されていました。
しかし

>今回、長政に教え、三成に教えた。

後に関ヶ原で敵同士となって戦うこの二人は今回まったく同じ構造の論理でいるところを官兵衛にたしなめられていたことが印象的でした。
つまり、二人とも「対面を保つために力に訴えよう」としていたわけです。
無論、官兵衛は支配者にとって「対面を保つ」ことが必要であることは百も承知ですが、そのためには時間をかけて前提条件を整えて待たなければならない、と説いていたわけです。

おっしゃる通り、長政への教育については職隆と官兵衛との連携が絶妙でした。
そして職隆の最期、あんな風に死ねたら、と思わせるような幸せな死でした。
考えてみれば職隆も官兵衛も長政も、さらに遡って祖父重隆も皆平穏な死を迎えています。
戦国の世にあって、このことだけでも大変なことなのかもしれません。

来週は官兵衛の受洗ですか。
そこにどうやら村重=道糞=道薫が絡んでくるようです。
注目したいところです。
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体面を保つ長政 (コウジ)
2014-08-12 08:32:59
TEPOさん

いつもありがとうございます。

小牧・長久手に関しては上手く逃げましたね。
官兵衛がこれに参加していなかったことが第一の理由でしょうが、描かないことで、官兵衛と秀吉の隔たりを描くことが出来た。
一方、四国平定に関してはもう少し描いてほしいという気もしましたが、今回描くべきメイン主題は、官兵衛と秀吉の隔たりなので必要なかったのでしょうね。

>「信長物」「秀吉物」の「外伝」になってしまいがち

そうなんですよね。
これをどう克服するかが、作家に求められるものなのだと思いますが、今作は官兵衛目線で貫かれていてよかったと思っています。

>二人とも「対面を保つために力に訴えよう」としていたわけです。

ありがとうございます。
確かに長政のケースも<体面を保つため>のものでしたね。
見落としていました。
おっしゃるとおり、支配者は体面を保つために力で押さえつけようとしますが、上の者に対する尊敬って、信頼関係から生まれてくるものなんですよね。
このことは重隆→職隆→官兵衛と受け継がれたものでしたが、長政には理解されていなかった。
黒田家にとって一番大切なことを伝えていなかったのは官兵衛の子育ての失敗なのでしょうが、まあ、長政の一番大切な時期に官兵衛がいなかったので仕方がなかったのかもしれませんね。

官兵衛とキリスト教の関係については、今まであまり描かれてこなかったので、受洗がどう描かれるか楽しみです。

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