やまかはの おとにのみきく ももしきを みをはやながら みるよしもがな
山川の 音にのみ聞く ももしきを 身をはやながら 見るよしもがな
伊勢
山川の音のように、今となっては噂にだけ聞く宮中の様子を、自分の以前の姿に戻って見てみたいものです。
詞書には「歌召しける時に、奉るとて、よみて奥に書きつけて奉りける」とあります。歌を召したのは時の天皇である醍醐天皇。「ももしき」は宮中、「身をはやながら」は「身を」と同音で「山川の音」にもつながる「水脈」を思い浮かばせつつ「以前のままの自分で」の意で、ここで言う「以前のまま」とはすなわち、先代の宇多天皇のころのようにということとなります。そのころと比べると、今は歌を献上できる立場にはあるものの、宮中は遠い存在になっているということで、その寂しさを詠んだ歌ですね。
さて、本歌をもって巻第十八「雑歌下」は読み切り。そしてちょうど1000番に到達しました。一日一首の古今和歌集歌のご紹介を始めてから1,000日たったということですが、良く続けて来られたと思うと同時に、実はさほど実感はありません。まだおよそ100首残っているからかもしれませんね。いずれにしても、ここまで来れたのも、いつもご来訪くださる皆さまのおかげです。ありがとうございました。そして引き続きよろしくお願いいたします。
振り返れば、andさんにはこの連載が100番に到達したときから、100首ごとの節目にはかならず暖かいコメントを頂戴し、またちょうど1年になった0365、0444以降のゾロ目の日にも激励やご質問をいただきました。こうして、間違いなく読んでくださる方がいらっしゃることが本当に嬉しく、日々の更新の原動力ともなっていただきました。心より感謝しております。毎日本当にありがとうございます。
別の話になりますが先月、東北に出かける機会があり、しろねこさんにお目にかかりました。漢字談義やブログ談義であっという間に時間が過ぎて行きましたが、どちらからともなく and さんのことも話にのぼりました。and さんとも、いつかどこかでお目にかかる機会があればなぁなどと勝手に思いながらの時間でした。
さてさて、古今和歌集の方は残り100首ほど。明日からは長歌や旋頭歌なども出てきます。どうぞ引き続きおつきあいください。^^