いまさらに なにおひいづらむ たけのこの うきふししげき よとはしらずや
いまさらに なに生ひ出づらむ 竹の子の うきふししげき よとは知らずや
凡河内躬恒
いまさらどうしてこの子は生まれ育ってゆくのだろうか。竹が多くの節が重なって成長してゆくように、この世の中にもつらいことが多いのを知らないのであろうか。
詞書には「もの思ひける時、いときなき子を見てよめる」とあります。「いときなし」は幼い意。第五句の「よ」は世の中の意の「世」と、「節」の意の「よ(漢字で書けば『節』)」の掛詞になっています。節が重なって成長してゆく「竹」も、「竹の子」の時点ではまだ節がない。それと同じく、世の中にはつらいことが多いけれども、幼いこの子はまだそのことを知らない、というわけですね。