みみなしの やまのくちなし えてしかな おもひのいろの したぞめにせむ
耳なしの 山のくちなし 得てしかな 思ひの色の 下染めにせむ
よみ人知らず
耳がないという耳成山のくちなしを手に入れたいものだ。あの人を思う私の思いの緋色の下染めにするから。そうすれば耳も口もないので、誰にも知られずに済むだろうから。
「耳成山」と書いて「みみなしやま」。「思ひ」の「ひ」には「緋」がかかっています。みみなしやまのくちなしで染めれば、耳も口もないから思いが他に漏れないだろうという理屈ですね。
みみなしの やまのくちなし えてしかな おもひのいろの したぞめにせむ
耳なしの 山のくちなし 得てしかな 思ひの色の 下染めにせむ
よみ人知らず
耳がないという耳成山のくちなしを手に入れたいものだ。あの人を思う私の思いの緋色の下染めにするから。そうすれば耳も口もないので、誰にも知られずに済むだろうから。
「耳成山」と書いて「みみなしやま」。「思ひ」の「ひ」には「緋」がかかっています。みみなしやまのくちなしで染めれば、耳も口もないから思いが他に漏れないだろうという理屈ですね。
ありぬやと こころみがてら あひみねば たはぶれにくき までぞこひしき
ありぬやと こころみがてら あひみねば たはぶれにくき までぞ恋ひしき
よみ人知らず
どのくらい逢わずにいられるかと、ためしに逢わずにいたら、そんな戯れなどやっていられないほどに恋しい気持ちになってきたよ。
0518 に、いとしい人と逢わずにいたら果たして恋死にするものかどうか試してみようという歌がありましたが、こちらは、いざ本当に試してみたらとても逢わずになどいられないほど恋しい気持ちが募ったという歌ですね。なにやらちょっとほほえましい気持ちがします ^^
こひしきが かたもかたこそ ありときけ たてれをれども なきここちかな
恋しきが 方も方こそ ありと聞け 立てれ居れども なき心地かな
よみ人知らず
恋の思いが叶う方向というものがあると聞いていたが、立っていても座っていても恋しい気持ちは鎮められず、そういうものはないという気持ちであるよ。
上記は「方」を「方向」の意と捉える解釈ですが、古来、「方法」の意とする説もあり、解釈が定まっていない歌。「方法」ととる方が、第四句の「立てれ居れども」との繋がりが良い気もしますね。
まくらより あとよりこひの せめくれば せむかたなみぞ とこなかにをる
枕より あとより恋の せめ来れば せむ方なみぞ 床中にをる
よみ人知らず
枕からも足元からも恋が迫って来るので、どうしようもなく寝床の真ん中でじっとしている。
「恋」はここでは相手を思う自分の心のこと。現代の感覚では恋心は自身の内側から湧き上がってくるイメージと思いますが、当時は自分の外からやってくるものと考えられていたとのこと。迫りくる恋の病になすすべなく床の中で縮こまっている、というところでしょうか。
いそのかみ ふりにしこひの かみさびて たたるにわれは いぞねかねつる
いそのかみ 古りにし恋の 神さびて たたるにわれは 寝ぞ寝かねつる
よみ人知らず
すっかり古くなった恋が神のようになって祟りをなすので、私はとても寝られないのであったよ。
「いそのかみ」は「古り」にかかる枕詞。「神さび」は神らしい振る舞いの意。過去の恋の想いがよみがえってきて寝られないという状況を、「いそのかみ」「神さび」「祟る」と縁語を連ねて大げさに表現したところが諧謔歌たる所以ですね。