漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 1021

2022-08-16 05:15:20 | 古今和歌集

ふゆながら はるのとなりの ちかければ なかがきよりぞ はなはちりける

冬ながら 春の隣の 近ければ 中垣よりぞ 花は散りける

 

清原深養父

 

 冬ではあるが春が隣まで来ていて近いので、中垣から花は散るのであったよ。

 詞書には「明日春立たむとしける日、隣の家の方より、風の雪を吹き越しけるを見て、その隣へよみてつかはしける」とあります。立春の前日の詠歌ですね。春はすぐそこまで来ているという時節を捉え、隣の家はもう春、自宅はまだ冬、そのすでに春が来ている隣家からの風に雪が吹き込んでくるのを散る花と見立てて洒落て見せたというところでしょうか。

 


古今和歌集 1020

2022-08-15 05:58:56 | 古今和歌集

あきかぜに ほころびぬらし ふぢばかま つづりさせてふ きりぎりすなく

秋風に ほころびぬらし 藤袴 つづりさせてふ きりぎりす鳴く

 

在原棟梁

 

 秋風に吹かれて、藤袴が綻びてしまったようだ。「つづりさせ」と言ってこおろぎが鳴いているよ。

 スマートな(?)口語訳が難しいですが、第二句の「ほころぶ」は花(藤袴)が開く意と、(袴が)綻びる意の両義で、こおろぎの鳴き声が「つづりさせ」と聞こえることをとらえての言葉遊びですね。「つづりさせ」は「綴り刺せ」で、綻びを縫い繕う意です。

 作者の棟梁(むねやな)は業平の子。古今集に四首入集している四首目で、これまでの三首は 001502430902 に採録されています。


古今和歌集 1019

2022-08-14 06:31:20 | 古今和歌集

はなとみて をらむとすれば をみなへし うたたあるさまの なにこそありけれ

花と見て 折らむとすれば 女郎花 うたたあるさまの 名にこそありけれ

 

よみ人知らず

 

 花だと思って折ろうとしたら、女郎花ではないか。何とも困った名を持つ花なのだろうか。

 歌意がとらえにくい歌です。「うたた」はここでは「厭わしい」「嫌だ」の意。「咲いている花を手折ろうと思って良く見たら女郎花であった。「女」と名のつく花となると、下心があって近づいたと思われかねないではないか。困ったものだ。」というくらいのおどけた詠歌でしょうか。


古今和歌集 1018

2022-08-13 05:21:43 | 古今和歌集

あきぎりの はれてくもれば をみなへし はなのすがたぞ みえかくれする

秋霧の 晴れて曇れば 女郎花 花の姿ぞ 見え隠れする

 

よみ人知らず

 

 秋霧が晴れたり曇ったりすると、女郎花の花の姿が見えたり隠れたりする。

 「それがどうしたの?」と言いたくなるような、何の変哲もない歌ですね(笑)。秋霧と女郎花の組み合わせは、0235 でも詠まれています。


古今和歌集 1017

2022-08-12 05:54:12 | 古今和歌集

あきくれば のべにたはるる をみなへし いづれのひとか つまでみるべき

秋来れば 野辺にたはるる 女郎花 いづれの人か 摘まで見るべき

 

よみ人知らず

 

 秋が来ると、野辺にみだらな様子で立っている女郎花を、一体誰が摘まずに見ることができるでしょうか。

 女郎花を詠んだ歌が続きます。「たはる」は漢字で書けば「戯る/狂る」で、ここではみだらな行為をする意。第五句冒頭の「つまで」は「摘まで」と「抓まで」の掛詞になっており、「抓む」は「抓る」意で、男女の戯れの行為ですね。