先日に引き続き、チャンドラーです。
これも先日の『プレイバック』と同じく比較的短かったので、一気に読んでしまいました。
今回のプロット(筋)は少し複雑です。その複雑に入り組んだ謎を、主人公であるフィリップ・マーロウが丹念に解き明かします。彼の言葉を借りれば、"I found out. Some I was told, some I researched, some I guessed."
まったく、お節介というか何というか、放っておけばよいことにまで首を突っ込むのがマーロウのいつもの悪い癖。そこに求めるのは "the truth"、人を納得させるのは「真実」しかないという強い信念。その一方で、不必要に人を傷つけることは可能な限り避ける優しさ。マーロウには、何とも言えず人間臭い魅力があります。
今回はプロットも複雑でしたが、そこに登場する人物の心理状態も、やや複雑です。しかしそれが、心理的な描写は一切使わず、あくまでも目に見える状況描写のみで、深く鋭く描かれています。
最後の謎解きはまるでスポーツカーの疾走のようです。そこに至るまでの複雑な筋が一気に集束する快感。当分この酔いは冷めそうにありません。
Raymond Chandler,
The High Window
(Penguin Books)
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