Year In, Year Out ~ 魚花日記

ロッドビルドや釣りに関する話題を中心に。クラシック音楽や本、美術館巡りに日本酒も。

小惑星探査機はやぶさ 「玉手箱」は開かれた

2011年02月19日 | 

川口先生の手になる「はやぶさ」本、第二弾。

私淑するwatari夫妻ご推薦の通り、「はやぶさ」に関しては先日の「そうまでして君は」とこの「玉手箱」の2冊で、必要にして完璧に十分。堪能しました。

内容についてはwatariさんも書かれている通り「そうまでして君は」よりも科学的な解説が多く含まれています。しかし、非常に丁寧に言葉が選ばれていますので、私のような文系人間でもすっと頭に入ります。カラーの写真もたくさん挿入されています。

はるか昔、将来の天文青年を夢見ていた頃、NHKのTV番組で故小田稔先生が「すだれコリメータ」の仕組みを説明しておられるのを聞いて、難しいこと(のはずなのに)を何て簡単に、分かりやすく説明するのだろうと、子供心にとても感心したことを覚えています。

これは個人的な感想ですが、一流の技術者があまりにも突き抜けて詳しくなり過ぎると、逆に最後は子供にも分かる表現でそれが解説出来るようになるということだと思います。本質的なポイントは何か、ということがきちんと整理され認識されていればこそのお話。

私もモノ作りの会社に勤めていますが、技術系の人であれシステム関係の人であれ、そのことにはとても詳しいのだけれどそれを自分たちに(だけ)馴染みの深い専門用語で話をする人たちが時々居ます。会議や打ち合わせの場で私のような純文系人間が必死で分かろうと何度も質問を重ねると、最後には「なぁーんだ、最初からそういう説明してくれたらいいのに」と思うことがしばしばです。その方たちは始めから全て分かっていることばかりなのに・・・。

勿論このプロセスが私たちのように専門知識のない人間にはとても勉強になっていることは事実で、そうやって技術的・専門的な理解を深めていけるのはとても有難いことです。ただ、これは逆に自分たち自身にもあてはまることで自分ではいつも心がけているつもりですが、自分が知っていることを自分の言葉で語るだけではなく、相手に伝えたいことがあるならばまずその本質は何かを明らかにした上で、相手の理解が進むように話す順番や言葉を選ぶことが重要なのだと思っています。

川口先生の文章はまさにそれを体現したようなところがあって、読んでいてとても気持ちのいいものでした。

        

この本、サイズは新書版ですが、見開きの左下にパラパラ漫画が付いています。



これを見ると、イトカワに会いに行くためにこんなにもぐるぐる廻らなければならなかったのかと驚いてしまいます。

「はやぶさ」7年の生涯に、改めて敬意を表したくなりますね。


川口淳一郎『小惑星探査機はやぶさ-「玉手箱」は開かれた』(中公新書)

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2 コメント

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技術力 (watari)
2011-02-19 16:42:21
内容はもちろん良いのですが、パラパラ漫画もイイですよね(笑)
軌道工学のスペシャリストである川口先生の本らしい素晴らしいアイデアだと思いました。

私もひとりのエンジニアとして、素人だけど理系出身の新人クンや、文系だけどウチで働いている営業さんに説明することはこなせますが、原理的に全く知識のない嫁さんに説明するのは非常に難しい(笑)

川口先生は大学の先生ということもあるでしょうけど、文章も説明もわかりやすく、非常に勉強になります(笑)
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watariさん (魚花)
2011-02-19 18:46:55
パラパラ漫画の動画についてはwatariさんのブログを、
というリンクを貼るのを忘れておりました
http://dwata.blog.shinobi.jp/Entry/1498/

私も営業に配属された新人クンにはいつも
「技術屋さんに上手に質問することも智恵のうち」
と言っています。

小田先生にしろ川口先生にも、本当にかしこい人って
たくさん居られるのだなぁと、尊敬してしまいます。
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