先週の金曜日、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開かれている「岸田劉生~肖像画をこえて」に行ってきました。
多くの美術館と同様、ここも金曜日はいつもより遅くまで開いているので、少し気合いを入れて会社を出れば、割とゆっくり鑑賞することが出来ます。この日も暮れなずむ新宿の高層ビル街を歩き、6時半頃には美術館に着きました。
今回の展示は岸田劉生が描いた肖像画(というよりも人物画と言った方がよいでしょう)に絞ったもの。会場に入ってすぐ、いきなり自画像だけを集めたスペースになっています。年譜を見ながら作品を見ていくと、岸田劉生がかなり短い期間に画風を変えていったことがよく分かります。それは特に自画像を見ると分かりやすく、初期はゴッホやセザンヌの影響が強い、タッチの荒い絵だったのが、何年かするとまるで静物のように落ち着いた、写実性の高い絵に変わっていきます。
ほどなく劉生は、知人を片っぱしからモデルにすることから、「首狩り」の異名を取るようになったそうですが、それはこの写実性、リアリスムというものの追究に他なりません。有名な麗子の肖像画も何点か展示されていましたが、改めてその絵の前に立つと、それが本人に似ている似ていないを超越した、麗子の人間としての奥深さがダイレクトに伝わってきます。
(岸田劉生「麗子肖像(麗子五歳之像)」1918年)
しかし、圧巻だったのはこちらの絵。今回の展示、個人的には、この絵を見るためだけにでも訪れる価値があると思います。
(岸田劉生「古屋君の肖像(草持てる男の肖像)」1916年)
写真と見まがうばかりの写実性。この作品の脇に添えられた解説では、劉生自身がこの絵のことを「ひとつの転機になった作品」と述べていたとのこと。
それにしても、モデルはここまで(内面まで)裸にされることを欲したのでしょうか?画家の目というのは恐ろしいものだと寒気がしました。
会期は7月まで。古屋君に会いに、もう1回行ってしまうかも知れません。
岸田劉生~肖像画をこえて
損保ジャパン東郷青児美術館
2009年4月25日~7月5日
すばらしいです。
同時に、この麗子ちゃんも素晴らしいですね。
実を言えば、麗子像を馬鹿にしていました。
反省します。
2葉とも、感激しています。
文泉
古屋君いいですね…妻の絵も実際はもっと美しい人であろうにため息が聞こえてきそうな深刻な表情でした
麗子があまりにも有名なので長生きされた方かと思っていました
人間の悲しみが滲み出ているんでしょうね…
F君は本当にびっくりしました。実物に会えて幸せでした。
麗子像もそうですが、写実を追って行きついた先が
人間の内面への深い洞察。
人物画だけという今回の展示は、誠に心憎いものでした。
どれも暗く、憂いがあって、長く見ているのが辛い感じでした。
作品を時系列に見ていると、劉生は文字通り太く短く生きたのだと感じます。
素晴らしいが儚い、芸術家の人生を思います。
古屋くんについて調べていたら辿り着きました。
今、国立新美術館で開催されている陰影礼賛という企画展で古屋くんに出会いました。
どの作品よりも印象的で、しばらく動けませんでした。
劉生がかなりの何かしらの想いを込めたことは、誰もが感じたのではないかと思います。
六本木の陰翳礼讃はなかなか面白そうな企画だなと思いつつ、
今回はちょっと行けそうにありません。
古屋君が出ているのは聞いていたのですが、
竹橋ならまたいつか(いつでも)この写実の権化のような作品に
ゆっくり会えるかと。