岩波から出ている露伴全集の、随筆その一からその三を借りて読んでみました。
貸出期間が2週間ということもあるのですが、パラパラと見ていると、露伴の博学博識、マニアックな随筆に少し気後れしてしまったところがあり、とりあえず釣りと魚に関係する作品ばかりを選んで読んでみました。
結論から言うと、先日の現代語訳で読んだ時に一番感心した随筆を原文で味わえたことが、今回一番の収穫です。それ以外の随筆も個々には非常に味わい深い名文ではあるものの、今の私の心境にグッと来るものはこれが一番でした。
タイトルは先日もご紹介した「游魚の説」。その中の一番最後の方にあるこの一節。
「日々能く勤め、時々能く遊び、家に在つては各自の職業を忘れず、
綸を垂れては遊漁者の資格を忘れず、若(てきじゃく)として
恆に愼み、悠然として長く樂まむものは、心に憂無く、身に病無く、
清福十分、俗にして仙たり、愚にして哲たらん。」
色紙か何かに書いて飾っておきたいくらい、この一節がとても気に入りました。
砂浜などで一人で釣りをしているとそれほど感じませんが、乗合船に乗って他の人と一緒に釣りをしていると、気にしないようにしていてもつい人のことが気になってしまうもの。出来れば1日のんびりと愉快に過ごしたいもので、そういう釣り人の心の持ちようを、極めて簡潔に表現しています。
ここの境地にまで来ると、横に他人が居る居ないは全く関係ないでしょう。我々凡人は目があると見えてしまい、耳があると聞こえてしまうので、ここまでの泰然自若とした心境にまでなかなか到達出来ないものですが、しかし、本来釣りを心底楽しむとはそういうことなんでしょう。何だか釣りをすることの新たな目標が出来た気がします。
露伴全集第29~31巻
岩波書店
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