なかなか成長戦略の結果が見えてこない中、米国の不安定さから株価が下落している日本ですが、ここに来て安倍首相の盟友ともいえる渡辺喜美氏の事実上失脚により憲法改正もとん挫しそうです。憲法改正⇒96条変更⇒憲法解釈変更と与党にいる公明党の顔色をうかがいながら妥協を重ねていますが、肝心の経済が消費税引き上げの影響で不安定です。現にスーパーやコンビニでの商品開発で中食ブームになりつつあり、外食を控える消費者が増えています。安倍内閣も党内で内閣改造をちらつかせ政権にしがみつくことが命題になりつつあります。たしかに、今の内閣には力量を問われかねない?大臣がいるのも事実です。下記の水野和夫氏は12年前に当時としては異例の100年デフレという本を書きそれを読んだ筆者は衝撃を受けたものです。その後、12年以上デフレが続いているのですから、先見の明があります。その水野氏が日本に対して指摘しているのは成長戦略を捨てて格差の是正に取り組むこと。所得税の累進性を高め法人課税を強化するとの主張は今の政権とは真逆です。今後も成長出来ず、中食のような商品開発でパイを取り合い全体としてはなだらかに国力が弱っていくとすれば貧困家庭が増加します。筆者も最近の政治の流れから成長を続けられるのか疑問です。つらいですね。
(以下コピー)大規模な金融緩和でデフレを脱却し、成長戦略へとつなげようというアベノミクス。だが、それは本当に正しい道なのだろうか?
リーマン・ショックを予見するなど、経済の長期予測で定評のある水野和夫氏が『資本主義の終焉と歴史の危機』で突きつけるのは、投資が利潤を生まない時代、すなわち「資本主義の死期」が近づきつつあるという、経済学上の「不都合な真実」だ――。水野氏に聞いた。
―「成長」をすべての前提として成り立つ資本主義そのものが、今や終焉を迎えようとしている……という発想が大胆です。こうした問題意識はいつ頃から持たれていたのですか?
「1997年に日本の長期国債の利回りが2%を割り、その後、ITバブルがあっても、小泉政権時代の景気回復期に突入しても超低金利のままでした。いったい何が起こっているのだろう?と疑問に思っていたとき、17世紀初頭のイタリアでも超低金利現象が起きていたことに気づいたのです。
『金利ゼロ』というのは、端的に言えば投資に対して『利潤』が期待できない、つまり『成長』を前提とした資本主義が危機に瀕しているということ。そんなとき、資本は悪あがきをはじめ、暴走します。16世紀から17世紀の欧州でも資本の側は狡知(こうち)を巡らせ、労働者階級は没落しました。
しかも今回は、『成長』の余地が世界のどこにも残っていないため、資本主義は終焉に向かっているとさえ言えるのです」
―グローバル化が進むなかで、富を吸い上げる対象としての「周辺」を失いつつある資本主義が、今後は国境の外側ではなく、国内に「新しい周辺」、つまり「格差」を生み出そうとしている……という部分が気になりました。それが本当なら、自分は「吸い上げられる」側ではなく、「吸い上げる側」にいたいと思うのが人情ですが。
「どのみち搾取する側は1%、搾取される側は99%ですから、仮にあなたが1%の側に回りたいと思っても、ほぼ不可能でしょう。だとしたら自分たちで今の社会の仕組みを変えていくしかない。幸い日本では辛うじて『ひとり一票』の権利が残っています。99%の自分たちのための社会をどうやってつくるのか?という意識を持って政治に働きかけてゆく以外に方法はないと思います」
―ただ、現実には「アベノミクス」の名の下に大胆な金融緩和が行なわれ、従来どおりの「成長」を前提とした経済政策のもとで景気も回復、一部の大手企業では春闘でベアが復活するなど一見、順調なようにも見えますが……。
「資本主義の死が近づいているなかで、『成長』を前提とした金融緩和を無理やり続けても、バブルの醸成と崩壊が繰り返されるだけでしょう。次はおそらく中国バブルの崩壊だと思いますが、そうやってバブルが崩壊するたびに働く人たちが疲弊し、『中間層』が失われてゆくのです。
最近、雇用の流動化や解雇の自由化がしきりに議論されているのも、次に来るバブル崩壊のツケを、そうした『働く人たち』に払わせるための準備だと思います」
―ゼロ金利で「成長」が期待できないとして、日本はどんな経済政策を取るべきなのでしょう?
「まずは成長戦略を捨てて、格差の是正を進めなければならない。所得税の累進性を高め、富裕層への最高税率は50%に戻せばいい。もちろん、法人税を下げるなどもってのほかで、むしろ上げるべきでしょう。政治の本来の役割というのは『富の再分配』なのだということを、いま一度、思い起こすことが大切だと思います」
(取材・文/川喜田 研 撮影/村上庄吾)
●水野和夫(みずの・かずお)
1953年生まれ、愛知県出身。日本大学国際関係学部教授。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官などを歴任。近著に『超マクロ展望 世界経済の真実』(萱野稔人との共著)など
(以下コピー)大規模な金融緩和でデフレを脱却し、成長戦略へとつなげようというアベノミクス。だが、それは本当に正しい道なのだろうか?
リーマン・ショックを予見するなど、経済の長期予測で定評のある水野和夫氏が『資本主義の終焉と歴史の危機』で突きつけるのは、投資が利潤を生まない時代、すなわち「資本主義の死期」が近づきつつあるという、経済学上の「不都合な真実」だ――。水野氏に聞いた。
―「成長」をすべての前提として成り立つ資本主義そのものが、今や終焉を迎えようとしている……という発想が大胆です。こうした問題意識はいつ頃から持たれていたのですか?
「1997年に日本の長期国債の利回りが2%を割り、その後、ITバブルがあっても、小泉政権時代の景気回復期に突入しても超低金利のままでした。いったい何が起こっているのだろう?と疑問に思っていたとき、17世紀初頭のイタリアでも超低金利現象が起きていたことに気づいたのです。
『金利ゼロ』というのは、端的に言えば投資に対して『利潤』が期待できない、つまり『成長』を前提とした資本主義が危機に瀕しているということ。そんなとき、資本は悪あがきをはじめ、暴走します。16世紀から17世紀の欧州でも資本の側は狡知(こうち)を巡らせ、労働者階級は没落しました。
しかも今回は、『成長』の余地が世界のどこにも残っていないため、資本主義は終焉に向かっているとさえ言えるのです」
―グローバル化が進むなかで、富を吸い上げる対象としての「周辺」を失いつつある資本主義が、今後は国境の外側ではなく、国内に「新しい周辺」、つまり「格差」を生み出そうとしている……という部分が気になりました。それが本当なら、自分は「吸い上げられる」側ではなく、「吸い上げる側」にいたいと思うのが人情ですが。
「どのみち搾取する側は1%、搾取される側は99%ですから、仮にあなたが1%の側に回りたいと思っても、ほぼ不可能でしょう。だとしたら自分たちで今の社会の仕組みを変えていくしかない。幸い日本では辛うじて『ひとり一票』の権利が残っています。99%の自分たちのための社会をどうやってつくるのか?という意識を持って政治に働きかけてゆく以外に方法はないと思います」
―ただ、現実には「アベノミクス」の名の下に大胆な金融緩和が行なわれ、従来どおりの「成長」を前提とした経済政策のもとで景気も回復、一部の大手企業では春闘でベアが復活するなど一見、順調なようにも見えますが……。
「資本主義の死が近づいているなかで、『成長』を前提とした金融緩和を無理やり続けても、バブルの醸成と崩壊が繰り返されるだけでしょう。次はおそらく中国バブルの崩壊だと思いますが、そうやってバブルが崩壊するたびに働く人たちが疲弊し、『中間層』が失われてゆくのです。
最近、雇用の流動化や解雇の自由化がしきりに議論されているのも、次に来るバブル崩壊のツケを、そうした『働く人たち』に払わせるための準備だと思います」
―ゼロ金利で「成長」が期待できないとして、日本はどんな経済政策を取るべきなのでしょう?
「まずは成長戦略を捨てて、格差の是正を進めなければならない。所得税の累進性を高め、富裕層への最高税率は50%に戻せばいい。もちろん、法人税を下げるなどもってのほかで、むしろ上げるべきでしょう。政治の本来の役割というのは『富の再分配』なのだということを、いま一度、思い起こすことが大切だと思います」
(取材・文/川喜田 研 撮影/村上庄吾)
●水野和夫(みずの・かずお)
1953年生まれ、愛知県出身。日本大学国際関係学部教授。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官などを歴任。近著に『超マクロ展望 世界経済の真実』(萱野稔人との共著)など