次期国連事務総長に元ポルトガル首相のアントニオ・グテレス前国連難民高等弁務官が任命されることが確実になった。1.強い国連 2.人道主義の貫徹 3.国際NGOとの連携が構築できるのか下記の児玉克哉氏は期待しています。しかし、国連は5つの安保理常任理事国が、対立の当事者で、且つ拒否権を持つています。戦勝国として有利な権限を持っている国が手放すはずがない。日本や他の国が常任理事国入りすれば状況は変わりますが、当面は期待するだけ無駄な気がします。
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国連事務総長選挙では、多くの支持を得ることだけではダメで、拒否権を持っている安保理の5常任理事国の1カ国からも不支持をもらわないことが重要だ。これは最後の段階では大きな問題になる。特に、アメリカ、ロシア、中国は国際政治の絡みから不支持を表明することができる。
今回のグテレス氏の任命においても、ロシアと中国の意向は注目された。ロシアは今回は旧東欧出身の国連事務総長を希望していた。実際に予備投票では、旧東欧出身の女性の候補者が有利とみられていた。そこでユネスコ事務局長のボコヴァ氏などが注目を浴びていた。それだけにロシアがあっさりとグテレス氏にOKを出すとは思われていなかった。多少条件をつけながら、圧力をかけた後の「渋々」の了承となるのではないかと思われた。またグテレス氏は前国連難民高等弁務官であり、10年にわたって難民支援の活動を行ってきた。人道主義的活動家としても知られる。これは国際的には高い評価となるが、ロシアや中国は人権問題における国連の介入が増える可能性を危惧する。拒否権を持っているだけに、こうした国の一つでも「ノー」といえば、次の候補者からの選出しかなくなる。危ぶむ声もあったが、結局、5常任理事国すべてが支持となった。5常任理事国すべてが支持しているのはグテレス氏だけである。難民問題は非常に難しい問題となっている。厳しい交渉が必要だ。それだけにグテレス氏のバランスのとれた交渉能力が評価されたものと思われる。ロシアや中国にとっても「話が分かる」国際人としてグテレス氏を捉えたのだろう。
問題は来年から国連をどのように牽引するかである。私が注目するのは3つのポイントだ。
1.強い国連
国連は構造的な問題を抱えている。最大の問題は5つの安保理常任理事国に拒否権が与えられていることだ。重要な国際的な問題において、5つの常任理事国が関わっていないものはないといっていい。特に、アメリカ、ロシア、中国は国際的な対立に密接に関わっている。現在大きなテーマである中東問題や南シナ海をめぐる問題、東アジア問題などでは、この3国は密接に絡んでいる。アフリカの紛争にも絡んでいることが多い。国連が行動を起こすには、5つの常任理事国の承認が必要で、重要な問題なればなるほど、ほとんど身動きができない。北朝鮮の核実験への非難決議でさえ、簡単ではない。制裁となるともっとハードルが高い。国連がいかに実現力を持つかは長年のテーマだ。ヨーロッパ、日本、アフリカ、中南米などとともに新たな仕組みづくりをしなければならない。5つの安保理常任理事国を敵に回すことなく、実質的な改革を行うことは至難の業だ。この至難の業をグテレス氏が成し遂げることができるかどうか。日本の協力も求められるはずだ。
2.人道主義の貫徹
グテレス氏は人道主義の活動を行ってきた。Human Rights Watchなども好意的にグテレス氏の次期国連事務総長への決定を伝えている。難民問題やテロ対策、情報化社会における諸問題など、現代社会においては人権問題は非常に大きな問題となっている。簡単な解決策はない。グテレス氏がどこまで人道主義を貫くことができるのか。そしてそれを国際社会がどれだけ支えることができるのかは注目ポイントだ。
3.国際NGOとの連携
国連難民高等弁務官時代には国際NGOとの連携は重要であった。実践においても国際NGOとの連携を行ってきたグテレス氏は国連と国際NGOとの連携をさらに進めるものと期待される。国際NGOは国際社会の中で確固たる地位を築きつつある。私は国連改革の最大の目玉は国際NGOの関与だと思っている。アドバイスだけでなく実質的な国連の「メンバー」として活動できる仕組みづくりと成し遂げて欲しい。
国連には失望の連続だ。UNはUnitede Nonsenseの略だというジョークはジョークにとどまらない。それだけにグテレス氏に国連の新たな展望を拓いて欲しい。