日本の企業や個人から海外の巨大テック企業への支払いが膨らむ一方だ。日本はいわゆる「デジタル赤字」を埋める新たな稼ぎ手を育てる必要がある。
多くの人にとって、米GAFAMが代表する海外テック企業のデジタルサービスは、日々欠かせないものになっている。これらのサービスを利用するたびに、日本の富が海外に流れ出ている現実は実感しにくいかもしれない。
日本の財務省の国際収支統計をみれば一目瞭然だ。デジタル分野の赤字は2023年に5.5兆円となり、5年で2倍に増えた。24年もすでに上期(1〜6月)だけで3.1兆円に達し、前年を上回るペースで拡大している。
この赤字が縮小に向かう兆しはない。デジタルサービスは海外勢が圧倒的に強く、日本勢が入り込む余地は小さいからだ。ならば、それらのサービスを使ってデジタル化を加速し、次の稼ぎ手を育てる発想が重要になる。
日本は何で稼ぐのか。かつてのような「貿易立国」を目指すのは現実的でない。
24年上期の輸出から輸入を差し引いた貿易収支は2.6兆円の赤字だった。輸出は自動車を除くとこれといった品目が見あたらない。一方、多くの原子力発電所が止まっている影響で、原油などエネルギー関連の輸入は膨らむ。貿易赤字は常態化しつつある。
日本が経常収支の黒字を保っているのは、海外への投資で得られる利子や配当のやり取りである第1次所得収支が大幅な黒字だからだ。日本企業が海外で攻めのM&A(合併・買収)を進めた成果であり、この流れは太くしたい。
ただ、それだけでは心もとない。海外投資で稼いだお金の多くは国外での再投資に向けられ、日本への還流は限られるからだ。
新たな稼ぎ手が必要になる。急増するインバウンド(訪日外国人)の需要取り込みや、アニメ、ゲームといったコンテンツ、農水産物の輸出は有力な候補だ。
なにより、日本発のイノベーションを起こす努力が欠かせない。
海外のデジタルサービスに支払いが増えても、それを使って世界に通用する革新的な技術や製品を生み出せれば、日本から富が出ていくだけの状況は変えられる。政府は規制改革などで民間のイノベーションを後押しすべきだ。