福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

金光明最勝王經・長者子流水品第二十五

2022-09-15 | 諸経

金光明最勝王經・長者子流水品第二十五(流水は病者を治した後、池水枯渇で死に瀕した魚達を救い、読経して財施・法施を施したことで魚達は死後昇天すると説く。これが日本でも放生会の根拠となった。流水は釈尊、その父は妙憧、その子は銀憧・銀光、十千の天使たちは当時の魚であると説く
爾時、佛は菩提樹神善女天に告げたまはく「爾時、長者子流水は、往昔時に天自在光王國内に在りて、諸衆生の所有る病苦を療じ、平復するを得て安隱樂を受く。時に諸衆生は病除を以ての故に多く福業を修し、惠施を廣行し、以って自ら歡娯す。即ち共に長者子所に往詣し、咸く尊敬を生じ如是言を作す。「善哉善哉。大長者子、善能く福徳之事を滋長し、我等の安隱壽命を増益す。仁は今實に是れ大力醫王なり。慈悲菩薩なり。妙に醫藥を閑ならひ、善く衆生無量病苦を療ず」と。如是の稱歎は城邑に周遍す。善女天、時に長者子の妻水肩藏と名ずく。其二子あり。一を名て水滿。二を
名て水藏。是の時に流水は其二子を將いて、漸次に城邑聚落を遊行して、空澤中深險之處を過ぎて、諸禽獸、豺・狼・狐・玃(かく・猿のような妖怪)・鵰(ちょう・おおわし)・鷲の屬にして血肉を食する者を見るに、皆悉く奔飛して一向に而も去る。時に長者子は如是念を作す「此諸禽獸は何の因縁の故に一向に飛走するや。我當に隨後して暫く往き之を觀ん。即便ち隨
去す。見るに大池あり、名て曰く野生と。其水將に盡んとす。此池中において多く衆魚あり。流水は見已りて大悲心を生ず。時に樹神あり、半身を示現し如是語を作す。「善哉善哉。善男子。汝は實義ありて流水と名れば此魚を愍み應に其に水を與ふべし。二因縁ありて名て流水となす。一は能く水を流す。二は能く水を與ふ。汝今應當に名に隨ひて作すべし。是時、流水は樹神に問うて言く「此魚頭數は幾何有と為すや」。樹神答曰「數滿十千」と。善女天、時に長者子は是の數を聞き已りて倍す悲心を益す。時に此の大池は日の為に曝されて餘水幾くも無し。是の十千の魚は將に死門に入りなんとして旋身婉轉せり。是の長者を見て心に所悕ありて隨逐瞻視目して未だ曾って捨ず。時に長者子は是の事を見已りて四方に馳趣し、水を覓んと欲して竟に得ること能はず。復た一邊を望むに大樹あるを見る。即便ち昇上して枝葉を折り取り為に蔭涼と作す。復更に推求す。是の池中水は何處より來るやと。尋覓して已まざるに一大河名て曰く水生と曰ふを見たり。時に此河邊に諸漁人ありて取魚の為の故に、河上流懸險之處に於いて、其水を決棄して下過せしめず。所決の處において卒かに修補し難し。便ち是念を作す。「此崖深峻なり。百千人を設けて、時三月を經るとも亦た未だ能く斷ずることあたわず。況んや我一身にして濟辦するに堪へんや」と。時に長者子は速に本城に還りて大王所に至る。頭面禮足却住一面、合掌恭敬して如是言を作す。「我大王の國土人民のために、種種の病を治し悉く安隱ならしむ。漸次に遊行して其空澤に至るに、一池有るを見る。名て曰く野生と。其の
水涸んと欲して十千魚あり。日の曝するが為なり。將に久からずして死せん。惟だ願くは大王。慈悲愍念して二十大象を與へよ。暫く往きて水を負ひ彼魚命を濟ふこと我が諸病人に壽命を與へしが如くせん」と。爾時、大王は即ち大臣に勅し、速疾に此の醫王に大象を與へしむ。
時に彼の大臣、王勅を奉じ已りて、長者子に白す「善哉大士。仁今自ら象廐中に至り、隨意に二十大象を選取し、衆生を利益して安樂を得しむべし」と。是時流水及其二子は二十大象を将ひ、又た酒家より多くの皮嚢を借りて決水處に往きて嚢を以て水を盛り、象をして負ひて池に至り池中に瀉置す。水は即ち彌滿せり。還て復た故の如し。善女天、時に長者子は、池の四邊を周旋して視るに時に彼の衆魚は亦復た隨逐循岸して行く。時に長者子は復た是念を作す。「衆魚は何故に我に隨って行くや。必ず飢火の為に惱逼する所とならん。復た我に従って食を求索せんと欲す。我今當に與へん」と。爾時長者子流水、其子に告げて言く「汝一象の最大力者を取り速に家中に至り、父長者に啓して、家中の所有る可食之物乃至父母食噉之分及び妻子奴婢之分、悉く皆な收取して即ち持來るべし」と。
爾時、二子は父の教を受け已りて、最大象に乗り、速に家中に往き祖父所に至り、如上事を説き、家中可食之物を收取し象上に置き、父所に疾還し彼池邊に至る。是時、流水は其子の來るを見て、身心喜躍、遂に餅食を取り池中に遍散す。魚食を得已りて悉皆な飽足す。便ち是念を作す。「我今施食して魚をして得命せしむ。願くは來世において當に法食を施し充濟無邊ならん」と。復更に思惟す。我先に曾って空閑林處において、一苾芻の大乘經を読し、十二縁生甚深法要を説けるを見る。又經中に説かく、『若し衆生ありて臨命終時に寶髻如來名を得聞する者あらば即ち天上に生ず。我今當に是の十千魚の為に、甚深十二縁起を演説し亦當に寶髻佛名を稱説すべし。然るに贍部洲に二種人あり。一は深信大乘。二は不信毀呰(きし・責めそしる)。亦當に彼をして増長信心せしむべし。
時に長者子は如是念を作す。「我池中に入りて衆魚の為に深妙法を説くべし」と。是念を作し已りて即便ち入水して唱言す。
「南謨過去寶髻如來・應・正遍知・明行足・善逝・世間解・無上士・調御丈夫・天人師・佛・世尊。此佛往昔に菩薩行を修せし時、是の誓願を作さく『願はくは十方界の所有る衆生、臨命終時に我名を聞ん者は命終之後、三十三天に生ずることを得ん』と。爾時、流水、復た池魚の為に、如是に甚深妙法を演説す。「此有るが故に彼れ有り。此れ生ずるが故に彼れ生ず。所謂る
無明は縁を行じ、行は識を縁じ、識は名色を縁じ、名色は六處を縁じ、六處は觸を縁じ、觸は受を縁じ、受は愛を縁じ、愛は取を縁じ、取は有を縁じ、有は生を縁じ、生は老死憂悲苦惱を縁ず。此れ滅するが故に彼れ滅す。所謂る無明滅すれば則ち行滅す。行滅すれば則ち識滅す。識滅すれば則ち名色滅す。名色滅すれば則ち六處滅す。六處滅すれば則ち觸滅す。觸滅すれば
則ち受滅す。受滅すれば則ち愛滅す。愛滅すれば則ち取滅す。取滅すれば則ち有滅す。有滅すれば則ち生が滅す。生滅すれば則ち老死が滅す。老死滅すれば則ち憂悲苦惱が滅す。如是に純ら苦蘊を極めて悉く皆な除滅す』と」。
是の法を説き已りて復た爲に十二縁起相應陀羅尼
を宣説して曰く
「怛姪他 毘折儞 毘折儞 毘折儞 僧
塞枳儞 僧塞枳儞 僧塞枳儞 毘爾儞 
毘爾儞 毘爾儞莎訶 怛姪他 那弭儞那
弭儞 那弭儞 殺雉儞 殺雉儞 殺雉儞
颯鉢哩設 儞 颯鉢哩設儞 颯鉢哩設儞
莎訶 怛姪他 薛達儞薛達儞 薛達儞 
窒 里瑟儞儞 窒里瑟儞儞 窒里瑟儞儞
鄔波地儞 鄔波地儞 鄔波地儞 莎訶 
怛姪他 婆毘儞婆毘儞 婆毘儞 闍底
儞 闍底儞 闍底儞 闍摩儞儞 闍摩儞
儞 闍摩儞儞莎訶(たにゃた びしゃに びしゃに びしゃに そうさくきに そうさくきに びにに びにに びにに そわか たにゃた なみに なみに なみに さっちに さっちに さっちに さっぱりしゃに さっぱりしゃに さっぱりしゃに そわか たにゃた べいたに べいたに べいたに ちりしつにに ちりしつにに ちりしつにに うはじに うはじに うはじに そわか たにゃた ばびに ばびに ばびに じゃちに じゃちに じゃちに じゃまにに じゃまにに じゃまにに そwか)」
爾時、世尊、諸大衆の為に、長者子の昔縁を説きたまふ時、諸人天衆、未曾有なりと歎ず。時に四大天王、各の其の處において、異口同音に如是の説を作す。
「善哉釋迦尊、 妙法明呪を説き
福を生じ衆惡を除き 十二支相應す
我等も亦た呪を説きて 如是の法を擁護せむ
若し違逆を生じ 善く隨順せざる者あらば
頭破れて七分と作る 猶ほ蘭香梢(蘭香花は生ずる時,梢頭花が分れて七分となる)の如くならむ。
我等佛前において 共に其呪を説かん、曰く
「怛姪他 呬里謎 掲睇健 陀哩 旃茶
哩地囇 騷伐囇 石呬伐囇 補囉布囇
矩矩末底 崎囉末底 達地目契 窶嚕
婆 母嚕婆 具荼母嚕健提 杜嚕杜嚕 
毘囇 醫泥悉 泥沓㛱 達沓婫 
鄔悉怛哩 烏率吒囉伐底 頞剌娑伐底
鉢杜摩伐底 倶蘇摩伐底 莎訶(たにゃた しりめい がてい けんだり せんだり じれい そうばれい しゃくばれい ふら ふれい くまてい きらまてい だじもくけい ろろば ぐだもろけんだい ずろ ずろ びれい いねいしつ ねいとうべい だふべい うしつたり うそつたらばてい あんらましゃばてい はずまべてい くすまばてい そわか)」


佛、善女天に告げたまはく「爾時、長者子流水及び其の二子は彼の池魚のために、施水施食し并に説法已りて倶共に還家す。是の長者子流水は復た後時において、聚會あるに因りて、衆伎樂を設け、醉酒而して臥す。時に十千魚は同時に命過ぎて三十三天に生じ、如是の念を起こす。『我等何の善業因縁を以てか、此の
天中に生じたる』と。便ち相ひ謂て曰く『我等先に贍部洲内において傍生中に墮し共に魚身を受く。長者子流水は我等に水及び以餅食を施す。復た我等の為に甚深法十二縁起及陀羅尼を説法す。復た寶髻如來名號を稱ふ。是の因縁を以て能く我等をして此の天に生ぜしむ。是故に我今咸く應に彼の長者子の所に詣りて、報恩供養すべし』と。爾時、十千の天子は即ち天より沒して贍部洲大醫王所に至る。時に長者子は高樓
上に在りて安隱にして睡る。時に十千天子、共に十千の眞珠瓔珞を其の面邊に置く。復た十千を其足處に置く。復た十千を以て右脇に置く。復た十千を以て左脇邊に置く。曼陀羅花・摩訶曼陀羅花を雨ふらすこと、積て膝に至り光明普く照す。種種の天樂は妙音聲を出し、贍部洲の睡眠せる者をして皆悉く覺悟せしむ。長者子流水は亦た睡より寤ぬ。是時、十千の天子は供養を為し已りて即ち空中において飛騰して去り、天自在光王國内において、處處皆天妙蓮花を雨ふらしぬ。是の諸天子は復た本處空澤池中に至りて衆天花を雨ふらし、便ち此に沒して天宮殿に還り、隨意自在に五
欲樂を受けぬ。天自在光王は天曉に至り已りて諸大臣に問ふ「昨夜、何の縁にか忽ち如是の希有の瑞相現れ、大光明を放つ」。
大臣答言「大王よ、當に知るべし、諸天衆ありて長者子流水家中において、四十千眞珠瓔珞及天曼陀羅
花を雨ふらし、積みて膝に至る」と。王は臣に告げて曰く「長者家に詣りて其子を喚取せよ」と。大臣受勅して即ち其家に至る。王命を奉宣して長者子を喚ぶ。時に長者子は即ち王所に至る。王曰「何の縁ありてか昨夜、如是の希有の瑞相を示現すや」。長者子言「我思惟するが如くんば、定て應に是れ彼の池内の衆魚、經の所説の如く命終之後、三十三天に生まれるを得て、彼來りて報恩の故に如是の希奇之相を現じたるなるべし」。王曰「何以ってか知るを得んや」。流水答言「王
、使いを遣すべし。并に我二子と彼池所に往き其虚實を驗ぜよ。彼の十千の魚は死となすか活となすか」。王是語を聞きて即便ち使及び子を遣して彼池邊に向ひ、其池中に多くの曼陀羅花、大聚を成し諸魚並に死ぬ。見已りて馳還り王のために廣説す。王
是を聞き已りて心に歡喜を生じる歎ずること未曾有。爾時、佛菩提樹神に告げたまはく「善女天よ、汝今當に知れ、昔時の長者子流水者は即ち我身是なり。持水長者即ち妙幢是なり。彼之二子の長子の水滿は即ち銀幢是なり。次子の水藏は即ち銀光是なり。
彼の天自在光王は即ち汝、菩提樹神是なり。十千の魚
は即ち十千の天子是なり。我往昔、水を以て魚を濟すくひ食を與あたへて飽かしめ、爲に甚深十二縁起并に此相應陀羅尼呪を説き、又た爲に彼寶髻佛名を稱す。此善根によりて天上に生ずることを得、今我所に来りて歡喜聽法す。我皆な當に爲に阿耨多羅三藐三菩提の記を授け其の名號を説かん。善女天よ、我往昔生死中において諸有を輪廻し廣く爲に利益す。
今、無量衆生をして悉く次第に無上覺を成ぜしめ、其の授記をあたへしむるがごとく、汝等皆な應に出離を勤求して放逸となる勿れ」。爾時、大衆是の説を聞きおわりて悉く皆な悟解す。「大慈悲に由り一切を救護し、勤修苦行して方に能く無上菩提を證獲せん」と。咸く深心を発し信受歡喜せり。
(金光明最勝王經卷第九終わり)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 今昔物語の放生会 | トップ | 仏教大原理(釈雲照)より・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

諸経」カテゴリの最新記事