福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

「抗神論」

2022-04-23 | 法話

コロナの次はウクライナの大虐殺と次次に地獄絵図が地上に展開してきました。改めてこの世は不条理でありまた地獄そのものであることを思い知らされています。いままでは何とかこの不条理に対する不安を「輪廻」「因果」「代受苦」「予定調和」などの考えで押さえつけてきましたが改めて「東日本大震災」「コロナ」「ウクライナの大虐殺」を体感し、トルストイの「カラマーゾフの兄弟」に出てくるように「日々いたいけな子供たちが世界で不条理に泣いている現実」等を見る時、「代受苦の菩薩」、「因果」、「業」、「輪廻」、「神義論」の「神は悪や禍を予定調和のための手段」としている等という無理やりの世界観ではどうしても納得できなくなります。「カラマーゾフの兄弟」ではここを以下の様に問いかけます。「人は皆、永遠の調和を苦しみであがなうために苦しまなければならないとしたら、子どもはそれにどう関係する? なぜ子どもたちは苦しまなくっちゃならなかったのか。なんのために子どもたちが苦しみ、調和をあがなう必要などあるのか、いったいなんのために子どもたちは、だれかの未来の調和のための人柱となり、自分をその肥やしにしてきたのか。」

 

また「神は、鼠をなぶる猫のように、わしらをからかっているのじゃ……そうして置いて、わしらにまだ感謝しろという。何に感謝するのだ? 何に?……」(贋金つくり・ジッド)という絶望感も生まれます。

 

2,ここから「反出生主義」という考えが出てきます。「この世は苦で満ちているから生まれてこないことが最善である・・・数千人の幸福と喜びは、一人の人間の苦痛を補う事はできない」というショーペンハウアー等の考えが出てきます。しかしここからは今現在この世に生きている者たちの救いは生まれません。

 

3,ここででてくるのが「抗神論」です。「神は『完全な善』でかつ『全能』であるとすればなぜいたいけな子供たちや弱者の想像を絶する犠牲があるのか?こう考えるとどうしても神は不完全な存在と考えざるを得ない、そこでその不完全さを埋める努力するのが人間の役割である」とするものです。此の考えはなにか東西を問わず納得させられるものがあります。「大般涅槃經卷第二十二光明遍照高貴徳王菩薩品第十之二」には「諸衆生を觀ずるに、昔より無數無量劫より來かた常に苦惱を受ける。・・身より出すところの血は四海の水より多し。父母兄弟妻子眷屬の命終に哭泣して出す所の目涙は四大海より多し。盡地草木を四寸籌となし以って父母を数えるも亦た盡すあたわず。無量劫より來かた、或は地獄畜生餓鬼にありて受くる所の行苦は稱げて計ふべからず。」とあり、司馬遷も「天道是か非か」といっていますが、いろいろな現象を見るに「天道是か非か」どころか「天道は非である」と断定せざるを得ない気もします。しかしここで反転して「だからこそ我々は助けあってこの世の不条理にたちむかわなければならない」となるのがこの「抗神論」だと思います。

 

これはまさに生きとし生けるものに生・老・病・死があり、宇宙に成・住・壊・空があるという不条理の極致に立ちつつもその中で身を奮い立たせて「利他行に身を投じる」菩薩行に通じるものです。遅すぎますがやっと自分の方向性が見えてきた気がします。

です。「神は『完全な善』でかつ『全能』であるとすればなぜいたいけな子供たちや弱者の想像を絶する犠牲があるのか?こう考えるとどうしても神は不完全な存在と考えざるを得ない、そこでその不完全さを埋める努力するのが人間の役割である」とするものです。此の考えはなにか東西を問わず納得させられるものがあります。「大般涅槃經卷第二十二光明遍照高貴徳王菩薩品第十之二」には「諸衆生を觀ずるに、昔より無數無量劫より來かた常に苦惱を受ける。・・身より出すところの血は四海の水より多し。父母兄弟妻子眷屬の命終に哭泣して出す所の目涙は四大海より多し。盡地草木を四寸籌となし以って父母を数えるも亦た盡すあたわず。無量劫より來かた、或は地獄畜生餓鬼にありて受くる所の行苦は稱げて計ふべからず。」とあり、司馬遷も「天道是か非か」といっていますが、いろいろな現象を見るに「天道是か非か」どころか「天道は非である」と断定せざるを得ない気もします。しかしここで反転して「だからこそ我々は助けあってこの世の不条理にたちむかわなければならない」となるのがこの「抗神論」だと思います。

 

これはまさに生きとし生けるものに生・老・病・死があり、宇宙に成・住・壊・空があるという不条理の極致に立ちつつもその中で身を奮い立たせて「利他行に身を投じる」菩薩行に通じるものです。遅すぎますがやっと自分の方向性が見えてきた気がします。

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