福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

第四、 所依経論章(「真言宗義章」真言宗各派聯合法務所編纂局 1916)より・・5

2019-01-05 | 法話

第四、    所依経論章(「真言宗義章」真言宗各派聯合法務所編纂局 1916)より・・5

(真言宗は、大日経、金剛頂経を両部の大経とし、その他、宿曜経、仁王経、守護國界経、発菩提心論一巻、釈摩訶衍論十巻、大毘盧遮那経疏二十巻。高祖大師の御著作の十住心論十巻、秘蔵宝鑰三巻、弁顕密二教論二巻、即身成仏義一巻、声字実相義一巻、吽字義一巻、般若心経秘鍵一巻等を所依の経典とする)

 

わが宗は、四種法身の両部雑部の一切の真言経及び八祖撰述の数百部の論疏を以て総じて所依の経論とするなり。法身大日如来自内証の説、是を大日経、金剛頂経両部の大経といふ。一切如来の秘蔵、一切教法の本源なり。故に大蔵同性経の中に釈尊いはく「あらゆる声聞の法、辟支仏の法、菩薩の法、諸仏の法、この如くの一切皆悉く毘盧遮那の智蔵大海に流入す」と。(大乘同性經卷下に「佛言。如是如是。善丈夫。如汝所説。何以故。所有聲聞法辟支佛法。菩薩法諸佛法。如是一切諸法。皆悉流入毘盧遮那智藏大海・・」とあり。)

善無畏三蔵の釈にいはく「此の経は一切如来秘密の蔵、大乗衆経において威徳特尊なる事猶し千目の釈天の主となるが如し(大毘盧遮那神変経疏1に「故曰神力加持經。若據梵本。應具題云大廣博經因陀羅王。因陀羅王者帝釋也。言此經是一切如來祕要之藏。於大乘衆教威徳特尊。猶如千目爲釋天之主・・」とあり)と。

しかるにこの両部の大経には凡そ四種の経本あり。

第一には法爾常恒の本といふ。大日如来三世常恒の説なれば無始無終なること環の端なきが如く、其の体、遍法界の法曼荼羅あり。

第二には無量頌の広本といふ。金剛薩埵、如来の教勅を受けて彼の法爾の教本をば諸経の例に倣ひて五成就・三段等(經を釈するとき、序文(經のおこる因縁)、正宗分(本経の所説)、流通分(本経を未来に流通し衆生に信受奉行させるための功徳)の三段とするのは晋の道安以来のならいとなっている。序文にはさらに、通序と別序がある。通序はどの經でも五成就を説く。五成就とは、信成就(かくのごとくわれ聞く)、時成就(一時)、如来(教主成就)、住所成就(某処において)、眷属成就(某々の弟子らの為)である)を安置して且く端なきに端をつけて隨縁結集したまへるものをいふ。その量広さ床の如く厚さ四五天にして無量の頌文あり。之を読誦すること人力のおよぶところに非ざれば永に南天の鉄塔に秘蔵せられて未だ嘗て閻浮に流伝せず。

第三には、二十万頌の大本といふ。龍猛菩薩、彼の鉄塔の中に入りて

金剛薩埵より両部の広本を誦伝せられ金剛薩埵の威神力によりて其の精要を取りて各々十万頌となりて始めて之を閻浮に流伝したまへるものをいふ。

第四には、略本といふ。大本は猶ほ浩広難持なるゆへ、龍猛菩薩更にその肝心を採りて大日経をば三千余頌に、金剛頂経をば四千余頌につつ゛め給へるものをいふ。この如くの四本は唯これ法爾隨縁広略の不同にして所詮の理に至りては本より平等平等也。しかして略本の中、四千頌の経は唐の玄宗皇帝の開元十一年金剛智三蔵、勅を奉じて東都の資聖寺に於いて訳して四巻としたまへり。これを金剛頂瑜伽中略出念誦経といふ。( 金剛智三蔵は、南インの婆羅門の家に生まれ、十歳のときナーランダー寺で出家。  龍智から『金剛頂瑜伽経』など密経の法燈を伝授され、阿闍梨に。観自在菩薩のお告げで唐に渡る途中の航海で大嵐にあい携えていた『金剛頂経』の梵本を海に投げ込まれたとされる。  玄宗皇帝の開元八年(七二〇)、金剛智三蔵は東都洛陽に入り、皇帝に入国の事情を奏上した。『金剛頂瑜伽中略出念誦経』四巻などを訳出した。)  また二千頌の本は開元十二年善無畏三蔵、勅に依りて東都の大福光寺において訳して七巻となしたまへり。之を大毘盧遮那成仏神変加持経といふ。二十万頌の大本は悉く翻訳せられざれども之より流出する種々の梵本の経軌は概ね金剛智、不空、善無畏等の三蔵これを翻伝し給ひ、真言の行軌一として欠けたるところなし。これらを総じて真言密教両部の秘蔵と名つくるにて是れ即ち根本所依の経典なり。雑部の真言経といふは大日如来加持三昧に入りて十方の世界に現じ給へる三種法身の説きたまへる経なり。

或は吉日良辰を知らんと欲ふ者のためには宿曜経を説き、

或は国土安寧を欲ふもののためには仁王経、守護國界経を説き給ふ等の類にて、要は三密平等句の法門を離れざる上の種々の秘密方便なり。 このゆえに其の宗体を論ずれば、全く両部の大経の異ならざることたとへば一味の黄金を以て鳥獣等の種々の形を作りたるが如し。

次に八祖撰述の論疏の中に、且く二三を示さば金剛頂瑜伽中阿耨多羅三藐三菩提心論一巻、釈摩訶衍論十巻。この中、発菩提心論は詳らかに真言行者の発菩提心の相を示し、釈摩訶衍論は因果二分、明無・無明の法相に依りて広く顕密の優劣深浅を判釈す。此の二論(発菩提心論・釈摩訶衍論)は龍猛菩薩所造の論の中において密蔵肝心の論なり。

次に一行禅師、善無畏三蔵に就きて大日経の講釈を請ひ聴くに随ひて之を筆記し給へるをものを大毘盧遮那経疏二十巻といふ。是によりて始めて大日経王の深旨をうかがうことを得べし。

次に高祖大師の御著作に十住心論十巻、秘蔵宝鑰三巻、弁顕密二教論二巻、即身成仏義一巻、声字実相義一巻、吽字義一巻、般若心経秘鍵一巻等あり。この中、十住心論及び秘蔵宝鑰は十住心を建立して(1.異生羝羊心 ―凡夫。2.愚童持斎心 –―儒教的道徳の目覚め。3.嬰童無畏心 - 老荘思想の境地。4.唯蘊無我心 - 声聞。5.抜業因種心 - 縁覚。6.他縁大乗心 - 唯識・法相。7.覚心不生心 -中観・三論。8.一道無為心―天台宗。9.極無自性心 - 華厳宗。10.秘密荘厳心 - 真言密教)真言行者の追趣の次第を示し兼ねて自ら顕密の浅深を判釈す。弁顕密二教論は専ら顕密対弁を主とす。即身成仏義、声字実相義、吽字義の三部は即身成仏の理趣及び真言陀羅尼の法体を釈する肝心の書なり。般若心経秘鍵は心経一部につきてその幽旨を示して是によりて一部雑部真言経の幽旨を例知せしむるにあり。この如くの祖師の撰述は一一師資相承の深旨にして四種法身(大師は真理たる法身が宇宙の事象に仮託して常に法を説く法身説法を唱えられ、その衆生へ働きかける作用を四種法身とされた。真理そのものの大日如来の位が自性法身・諸菩薩の位が受用法身・釈迦如来として現れる応化法身・諸天や諸鬼神の位の等流法身である。)金句の直説と異なる所なし。真言密教を知らんと欲するものは須らく善くこれらの経論を学ぶべし。

 

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