福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

地蔵菩薩三国霊験記 2/14巻の3/16

2024-06-23 | 先祖供養

地蔵菩薩三国霊験記 2/14巻の3/16

三、千の松原地蔵尊の事

天台山楞厳に住しける僧に仁證と云ふあり。悲心内に薫じ忍力外に露る。然るに一時俄に病を受て幾ばくならず退没す。獨黄泉の冥路に赴き道に迷ひ東西を失ひける。青衣の官人三人来り引導して西北に向かって行ければ一の大河の邊に着ぬ。岸の上を看るに一の大官舎あり。王庭に百千の罪人各々手を束ね地に跪き、鬼王各々呵責す。器杖を曳き鋤戟の刃を双べて威を振ひ拳を挙げて列居り。其の河水の色黒して波白し。中に無量の毒蛇充満して口を開き波に炎を吐く。大力の鬼王各の鋤を取て罪人を追ふ。正に大河を渡んとするに或は水に溺れ岸に當りて骨を砕き、浮沈漂流して叫ぶ聲天地を動揺してをびただし。然るに仁證大法師驚て恐れ曰く、是はいかなる大河ぞや。官人の曰く、是は奈河津と名く。亡人の渡るべき津に三所あり。三津と云ふ。一には山水の瀬、二には江深(こうじん)、三には有橋の渡なり(地藏菩薩獲心因縁十王経に「渡るところに三つあり、一つは山水の瀬、二つは江深の淵、三つには有橋の渡なり」)。是罪人の中に於いて亦罪の軽きと重きとあり。一切の有情財色を恣にし邪曲放逸にして此の奈河の業水に漂流せり。高山の嶺より流るが如く急なれば、山水の瀬と云ひ江河の水速かに流れて深きこと知りがたし。急に流るる中に至って業の軽きは山水の瀬を渡り、業の重きは江深の淵を流る。少善あるものは橋を往くなりと云々。時に仁證心身惑乱して言を絶す。爰に小僧一人忽然として来たり玉ふが光容奇廉にして香染の袈裟を着し玉ひ、手に香盧を持して仁證に向て曰く、我は是れ地蔵菩薩なり。汝が慈意を哀れみて琰王に請受るなり。汝早く旧郷に皈りて大法を布演せよ。小悪といへども作すこと莫れとの玉ひ摩頂して細き道より推し出し玉ふと思ひければ蘇生しぬ。其後に名聞は無間の因と思知れば本山を持して近江國千の松原と云所に初て一宇の堂を構へ本尊には冥途にて見奉る辞沿い売菩薩の像を造り現し安置供養して更に怠ることなし。されば常の像に似ず御皃(すがた)少し思痩玉ひて人長(ひとたけ)ばかり在ます。御手に香盧水晶の念珠を持し玉へり。香染の袈裟を掛けさせ玉ひ御足には沓をぞ召れき。彼の千の松原と云ひし所は東西往復の路頭にして又水海船道の水際なり。されば水陸行旅の客も自然法得の縁を結びやせんための方便に此の大路に建立せらる有り難き方便なり。

 

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