福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

十善戒和讃略解(慈雲尊者・釋雲照)、15

2020-02-15 | 諸経

人天中に香はしきものは善語に過ぐるなし 妻子眷属和悦して上下人心、皆服す
これは不悪口戒を賛揚したもの。「口はこれ災いの門、舌はこれ災いの根」というが、沙弥戒経に「それ、士の世に処する、斧、口中にあり、身を切る所以はその悪口に依る」とある。自他の差別をして己の意に反する者に憎悪を起こして生々世々に互いに怨み相争いて瞬時の安楽をも受けず、ついには修羅闘戦の巷に展転するもの哀れむべきの極みならずや。・・我みずから衣せず、食せず、住せず、一切の衆生の恩恵を離れては瞬時も立つこと能わざるものなり。しかるをこの有恩の衆生に向かいて悪口し誹謗するの非理なること甚だ明白なり。一切男子はわが父、いっさい女人は我が母なり。また天地万物は我が身と同体なり。一切衆生は我体と一体なり。・・真如平等の中に於いては自心と佛と衆生は本来平等なり。自他の差別をするは真理に通じてない迷である。この自心・佛・衆生が同じであるという三平等の真理に到達するときは大悲の心は法界に遍満し・・他者の困窮は全く自身の困窮となり、他人の快楽は直にわが身の快楽となり、不悪口戒はここに極まる。

十善業道経に不悪口戒の八功徳を説きたまえり。一に、言に背かず、二に、言、皆利益(りやく)す。三、言、必ず理に契(かな)う。四、言詞美妙なり。五、言、承領す。六、言えば即ち信用さる。七、言、譏(そし)るべきなし。八、言、悉く愛楽せらる。この八種の功徳により生じるところの好果報は誠に無量無辺なりとす。

昔仏在世のころ、波斯匿王末利夫人の子に醜き一女あり、王は、この子に落ちぶれた豪族を夫として当てがったが、この醜い姿の子がお釈迦様に身の醜悪なるを嘆き、助けを乞うたところ、お釈迦様は法をお説きになり、この子は須陀恒果を得て、忽ちに端正無比の天女のごとき夫人になった。夫の豪族は驚きお釈迦様に分けを聞いたところ、お釈迦さまは『過去無量劫に波羅那国に長者の娘がいた。この娘は父が供養していた辟支仏の姿が醜いことを罵ったが辟支仏が涅槃に入るとき十八変化する姿を見て懺悔した。この娘は悪口の罪により自身も常に醜陋な姿に生まれたが、懺悔の福によりその後端正な姿も得ることができ辟支仏を供養した徳により生まれるところ常に豪尊富貴の所であった。しかし一度つくった罪は決して廃滅しないものであった。しかれば最もおそるべきは悪口の罪業である。しかしこの不悪口戒を守れば妻子眷属悉く相和合悦楽して上は君主の寵愛を得、下は人々の信用を得て生まれるごとに端正、動作美麗となり、成仏の時は如来の慈悲柔軟語を成就する等皆この功徳である。』とお説きになった。




十善戒和讃全文「 帰命頂礼 十善戒、 十方三世の諸如来の三十二種の妙相もこの浄戒を種因とす。戒定智慧も三密も三十七の道品も身三口四と意三より 皆生じたる功徳なり。世間諸善の根本にて人の人たる道なれば、出家在家も持つ(たもつ)べく老若長幼奉ずべし 。龍樹菩薩の教誡に 仏果を期して戒なきは、渡りに船のなき如く 到るを得じと、のたまえり。昔、比丘あり、行く道に渇きに迫り水を得て、蟲の命をあわれみて 死して道果を得たりけり。また八才の少沙弥の、水の流れて蟻穴に入るを救いし功徳にて 夭死転じて長寿せり。また、毘舎伽母の指の輪の 落ちて入江に沈みしも、元の指端に還りたるためしは実にいなまれず。影勝王の像の子の産に臨みて悩みしを牧牛の女の操もて、誓いて分娩せしめたり。斑足王の猛悪も 実語のとくに感悟して、九十九余の命をも放ちて道に入りにけり、言辞弁舌明瞭に生まれし種(もと)は不綺語なり。時候和順に資産富み 草木さえ皆色ぞ増す。人天中に香はしきものは善語に過ぐるなし。妻子眷属和悦して上下人心、皆服す。主従和睦違わぬは 不両舌語の功徳なり。親好厚く和敬せば これぞ菩薩の心なる。足ることを知る人の身は 地上に臥すも浄土なり。 己をせめて施せよ、多欲は餓鬼の種因なり。世を乱し、身を滅ぼすは皆一朝のいかりなり。一切男女は過去の父母、とか一子の慈悲を運ぶべし。八正の道広けれど 邪見の人ぞ踏み迷う。己が顔貌智慧技量 皆善悪の影ぞかし。神も聖もみ仏も みなこの道に由りたもう。これぞ真実の道なれば この道撥無するなかれ。妻子珍宝及王位 死出の旅路の共ならず。唯この戒の功徳のみ 身に添う三世の友ぞかし。百歩の間持(たも)つすら 仏になるとのたまえば、萬行中の易行なり 唯 ひたすらに守るべし]
 

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