大乗起信論・・その３８

若し衆生有りて善根微少にして久遠よりこのかた煩惱深厚ならば、佛に値い亦た供養することを得といえども、然れども人天の種子のみを起こし、或は二乘の種子を起こすのみにて、設い大乘を求むことあるも、根は則ち不定、若しは進み若しは退く。
或は諸佛を供養することあらば、未だ一萬劫を経ざるも、中において縁に逢いて亦た
發心する有り。所謂、佛の色相を見て其の心を発すなり。或は衆僧を供養するによりて其心を発し、或は二乘の人の教令によりて發心し、或は他を学して發心するも是等の發心は悉く皆不定なり。惡因縁に逢うときは或は便ち退失して二乘地に堕すればなり。（もしここに衆生があって善根少なく久遠より煩悩厚いときは、仏に逢って供養したとしても人・天に生まれる果報の種、あるいは二乗（声聞縁覚）の種を得るだけであり、もし大乗に志向することがあってもその実践に堪えうるものを欠き、一進一退を繰り返すのみになる。また場合によっては、諸仏を供養する機会を得たので一万劫もかからずに縁を得て発心する場合もある。すなわちこの場合は仏の姿を見て発心するのである。その他、修行僧たちを供養することにより発心することもあるし、声聞縁覚の二乗の人の教えによりて発心することもあし、他の教えを学んで発心することもある。しかしこれらの発心はみな確定的なものにはなってない。悪因縁に逢えばすぐに声聞縁覚の二乗の道に堕するのである。）