福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

ブータン訪問記 その4

2010-01-15 | 講員の活動等ご紹介
物質文化も最小限になっています。首都の街でも手にはいるのは本当に生活に必要なものばかり。「人間が生きていくうえで、本当に必要なものは実はそんなに多くないんだろうな」と思いました。取材で訪れた松茸が採れる山の近くの小学校では、棒っきれに空缶の底をつけただけの器具で、子供が「くるまごっこ」をしていました。こどもはこんなものだけでも、十分に想像力を働かせて楽しめるのかもしれません。ひるがえってうちの長男など、決して過剰におもちゃを与えているつもりはないのですが、それでも「あんなにおもちゃっていらないなぁ」と反省した次第です。また、取材期間中には「機械に感謝するお祭り」という日もありました。どうもインドの風習から来ているらしいのですが、市民がみんなでトラクターや自動車・バイクに飾りものをつけて、日頃の感謝を示すものだとか。機械を大切にし、その恩恵を有り難いとおもう、そんな感じがいかにもブータンらしく思えました。

市民は外国人ずれもしていません。年間観光客は毎年5000人。最近ではそんなに珍しい存在でもないのでしょうが、それでもほかのアジアの国みたいに「外人観光客からむしり取ってやろう」というまでには至っていない。こんなことがありました。実はブータンは短い期間だけ硬貨を発行していた時期がある。で、硬貨っていうのは、お札に比べるとやはり製造コストがバカにならないのでしょう、もう作っていない。実際、カンボジアにも硬貨はなく、かわりにまるでモノポリーのお札のようなちゃちなお札があったことを思い出します。で、まったく市中で見かけないのでこちらも忘れていたわけですが、ある日、ティンプー市内の映画館前で宝くじを売っているのを発見。これが、買ったその場で当りがわかる、いわゆる「インスタントくじ」。つまりスクラッチ方式で、そこを削りとるタイプなのですが、その売場に「幻の」ブータンの1ニュルタムのコインがあるではないですか。どうもその硬貨でその場で当りを見てみなさい、ということらしい。硬貨を見せて貰うと、これが日本の100円玉とおなじ素材、大きさはアメリカの25セント玉ほどながら、デザインがじつにいい。各種の仏具や曼陀羅風の意匠があるわけです。すっかり欲しくなり「換えてくれ」とたのんだら「いい」という。しかも1ニュルタムそのままでいい、という。すっかりうれしくなってモノポリー風1ニュルタム札と交換、「カディン・チェ(ゾンカ語でありがとう)」を連発してきたわけです。しかし、こうなるともっと欲しい。かみさんの甥っ子で各種外国コインをなんとなく集めている小学生もいるし、同行のU氏も「お、なかなかいいねぇ」と言う。「これはもっと貰おう」と決心、帰国前日の午後、時間ができた際に首都の街にくり出しました。ホテルで聞くと「銀行か郵便局で換えてもらえるはず」というので、「20枚、いや、せっかくだから30枚は手に入れようかナ」なんて考えていたわけです。ところが、郵便局は午前中で閉まった、発行銀行「バンクオブブータン」もダメ。もうひとつの「ブータンナショナルバンク」では「うちは扱っていない」。帰国前日なだけに焦ります。で、再び宝くじ屋へ。向こうにとってはこれでも立派な商売道具、そんなに換えてくれるはずはないのですが、なんとなくモノ欲しそうに近づいていったら、なんと向こうもこちらを憶えており、懐からコインをチャラチャラと出し「またこれが欲しいの?」なんて聞いてくる。「うん、うん!できれば2枚は頂戴!」ということになり、また1ニュルタム札2枚と交換。「まあこれで、甥っ子とUさんと自分の最低3枚は確保したわい」とホテルへ。するとさきほど「郵便局へ行け」と教えてくれたマネージャーが「どうだった?」「いやぁ、郵便局も銀行も閉まってたよ」と言うと「ボクも2枚あったはずだ」と自分のオフィスの机をゴソゴソやって、本当に2枚出してくれました。「記念にあげる」というのですが、まさかそのまま貰うわけにもいかないのでまた2ニュルタムを出して交換。このコイン、地元の人にはそんなに珍しくもないんでしょうが、こちらを憶えていてくれた宝くじ売り、ただで差し出してくれたマネージャーとのふれ合いがうれしいエピソードでした。これには後日談があります。翌日、4時に起きて出国のため再びパロの空港へ。ここにはケチな売店があるわけですが、ここでも例のコインを発見。ところが!なんとここでは1枚2ニュルタムで販売しているではないですか。うーむ、やはり外国人から儲けてやろうという商魂は少しずつ出てきているではないですか。といいつつ、ちょうど6ニュルタム余っていたので、また3枚を「購入」。こうしてお土産ができたわけです。
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