福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

今日は花園天皇が宸翰御記一巻を書された日

2021-10-26 | 法話

今日は花園天皇が宸翰御記一巻を書された日

花園天皇は文保二年二月二十六日(1318年)後醍醐天皇に譲位されたばかりの玄應元年(元応元年1319)この記を宸筆されました。毎日食事の時間以外は経典を読誦されていること、また顔回の不幸薄命であったことに触れられて修道は世の禍福に拘わらずとされています。

ここで親王とあるのは光厳院量仁親王(花園天皇の猶子で後醍醐天皇の後に北朝初代天皇とされる)。

以下宸翰栄英華に依ります。

「(玄應元年十月)二十六日、晴、今日風気頗る減喩、仍って沐浴す。此の間他事無し。終日大略食事を除きて経典を披く。心を文義に属すと雖も性稟遅鈍にして通達すること能ず。而も猶随分稽古の力、漸く道義を知んと欲す。心未だ賢哲に至らず。是吾生涯の遺恨なり。遅鈍の性、早晩進むを得、只心を墳典に属し仰讃の功を待んと欲す而已。恨むらくは猶幼年の當初、提撕に励まざる故に博学なる能ざる也。生末世澆李の時に遭ひ、古先の聖君子に遇ず、吾不孝の至、歎じて余りあり。先賢の行迹を見る毎に歎息せざるなし。今時の君臣を見るに皆嗜欲に掩はれ、貪りて資財を蓄へ多くは正道を壊す。源は斯に在るか。學を志す人は先ず多欲を断ずべき也。源を塞げば其の流れ自ずから断ずべき故也。萬悪は皆之に依らざるなし。慎むべし慎むべし。勿莫而己。此の間殊に新皇、稽古事沙汰あるべき、之、朕、奉行すべき由仰せあり。仍って先ず連句有るべき由申行之。幼年の人、連句を以て先ず字訓韻等を知るべきの故也。字を知らざれば経典の文皆読むべからず。仍って朕、先に風月の事を行ふを申す、而して近代の人心、風月を以て名を釣んと欲す。故に文義を見ず。而して風月に留る。儒教の衰微尤も茲に在るか。然れば而、字を知るの道、是の如くならず。故に先に幼くして風月を学ぶことを勧む。學を志すこと年に及ば尤も文義を以て先と為すべき也。文義漸く覚知せば儒教の大綱を教ふべきか。此の旨大意、論語文に出ず。是志學成立以下次第有る此の意也。此れを以て朕、此の義を張行す也。人、我を以て風月を先に為すと謂ふ莫れ而已。或は疑ひて曰く、書に曰く、道を辿るは即ち吉、道に逆ふは即ち凶と。吉凶の報、猶影響す云々。而して顔回は孔門の上弟子なり。四科の中、徳行を以て之を言ふ。其れ聖賢なりと、而言得べからず。而して不幸短命にして死す。盗跖は横行し壽を以て終る。是を以て観るに天命と善の道は疑ひあり。道を脩め學を好むを何と為すや。倩に思ふ、此の人、道を思はざる之甚だしき也。死生命あり、富貴は天にあり。何ぞ是をもって論ずゆや。凡そ夫は道を須臾も離るべからず。離るべきは道に非ずと云々。又曰く、道は戸の猶し、誰か戸に由って出ざる。道の禮たるや誰人か之に依らざる乎。禍福を以て之を論ずべからず。若しこれを論ずるに禍福を以てする者は道に志ざるの人也。然りと雖も道を脩むる人、福を得、逆を作す者は禍を得る。是理の自然なり。更に推して言ふべからず。而して顔子の如きに至っては陋巷に在りて是を以て楽と為す。君子は其の位に素行す。其の外を顧ざる也。顔子若し六國の弊に遇ひ一旦兵を挙せば四海の内、普天の下、誰か響応せざらんや。若し此の事成らば道の福と謂ふべき乎。朕以て然らず。若し顔子強兵を以て天下を取る、豈聖賢たらんや。已に是れ道に非ず。何ぞ聖賢と謂はんや。其の外を顧みざるを以て賢と為す。今、名る所の不幸は是れ道の幸なり。顔子若し王業の余風を受ば豈に賢聖と謂はんや。豈に受命主と謂はんや。謂ふ所の不幸とは姓族の卑賎にあり。道の咎にはあらず。又時に賢を用るの王無き故に官禄を受けず。若し求賢の主あらば顔子に非ざらば誰か用んや。たまたま不遇となる也。是を以て道を論ずる勿れ。逆を作す者は誅戮に遭ひ、善を為す者は官禄に遇ふ。朕あげて計ふべからず。世人は少を以て多く疑ふ莫れ。又酒色を好んで禍を受く、古より以来多しと雖も之

誰人か之に懲りて酒色・佚楽を好まざらんや。何すれぞ其れ学道に至らざるや。吹毛して疵を求め、強て万一の咎を挙るを乎。凡そ道の大綱は筆端の記する所に非ず。世俗の知る所は其れ以て暗愚にして道を去ること甚し。嗚呼悲矣云々。誰人か夫子の道を再興すや。歎くべし歎くべし。生末代澆薄の時に遇ひ、俗の道義に迷ふを見る。況や亦、或は道を謗ずる者あり、言に足らず々々々。」

 

 

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