実語教(傳、弘法大師作、寺子屋等で使用。「実語教註慈賢(鎌倉時代の天台座主)」「実語教諺解(覚賢慧空)」等より解説)解説・・・6
・兄弟常に合はざれば 、慈悲を兄弟となせ。(左伝「意合なふときは則ち呉越も相親しみ、意合わざるときは骨肉も讐敵となる」。南山大論を引いて云う「夫れ慈というは意に柔和を存して他の所悩を被り瞋恨を生ぜず、夫れ悲というは意に饒益を存して善く物の情に順ず」字彙(明時代の漢字辞典)に曰く「慈心は柔かなり、愛なり。悲は慼(せき)なり、惻なり、痛なり。」文選に「こころかなう時は則ち胡越も昆弟たり由余(西戎の賢臣であったが王が美女に溺れたので敵国の臣となった)・子蔵これなり、かなわざるときは骨肉も讐敵たり、朱象・菅採これなり」菅蠡抄(鎌倉初期の金言集)には「兄弟は左右の手也」と。礼記には猶子をいうに「兄弟の子は己が子の猶し」と。「断金の契り」ということあり、天竺に長者の遺産千金を独り占めせんと、兄弟相互いに殺意を抱きしが、あるとき共に我に返りその千金を海に捨てしとなり。その後兄弟とも大臣となれり。月燈三昧経に「慈忍に十種の利益あり。一には火焼く事能わず、二に刀割く事あたわず、三に毒あたることあたわず、四に水漂わせること能わず、五に人護らざるなし、六に身荘厳なることを得る、七に諸悪道を閉じる、八に其のたのしむところに従い梵天に生ず、九に昼夜養安、十に其の身喜楽を離れず」
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