福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

 涅槃図

2025-02-15 | 法話

基本的には涅槃図は大般涅槃経をもとに描かれています。

1、上部には、摩耶夫人を先導する阿那律(阿泥樓駄尊者、失明し天眼第一とされる)がえがかれます。阿那律は葬儀を主催する立場です。

2、中央には、気絶した阿難と 介護する阿泥樓駄尊者(阿那律)が描かれます。
世尊がご臨終となられた時、阿泥樓駄尊者が阿難に「大覚世尊はすでに涅槃に入られた」と告げると、阿難は悲しみのあまり気を失います。助け起こしているのが阿泥樓駄尊者です。

3、中央のどちらかに供物(ご飯をもったもの)を捧げる純陀が描かれます。純陀は毒キノコをまちがって差し上げお釈迦様の命をちじめてしまったのですが、そのかわりにまたご飯をさしあげているのです。釈尊は他の仏たちの供養は受け取らず純陀に福徳を与えるため純陀の供養をお受けになります。また涅槃経ではお釈迦様は純陀にも説法されています。

4、枕元には弥勒菩薩とお地蔵様がいらっしゃいます。弥勒菩薩は56億7千万年後にあらわれて衆生済度されますがそれまではお地蔵様が無佛の世を救われるのです。お地蔵様は涅槃図によっては手前にいらっしゃることもあります。

5、上の方には此のほか観音菩薩、勢至菩薩、文殊菩薩、普賢菩薩、虚空蔵菩薩などが描かれます。

6、其の外側には四天王(持国天、増長天、広目天、多聞天)が描かれます。

7、気絶した阿難の近くには童子がいます。これが迦葉(かしょう)童子で涅槃経で対告主を務めのちに悟りをひらきます。涅槃図は涅槃経にもとずき描かれるのでここにいるのです。

8、また釈尊は80歳最後の夏安居をバイシャリー(毘舎離)ですごされたので毘舎離城主でもある維摩居士も描かれます。

9、釈尊の足元には老女が描かれることがあります。これは毘舎離城老女 でお釈迦様の説法を聞き損ってなげいているのです。名は「欝婆尸女(うつばしにょ)」で五戒を受けている優婆夷(うばい)であると言われています。歳は百歳ともいわれ、釈尊の四十五年間の布教に歩かれた足をさすり慰め、涙を流されました。荼毘に付すまで涙はそのまま消えないで残ったと言われています。
または足元に毘舎離城老女でなく老人が描かれることがありますがこの場合は釈尊最後の弟子須跋陀羅です。須跋陀羅は八師外道について聞こうとしますがお釈迦様はそんなことより今の苦悩を取り除くことが緊急と諭されます。(大パリニッバーナ経)

10、釈尊の手前に月蓋(げつがい)長者がいます。此の人は釈尊に教えられ阿弥陀様に助けを求めて、娘を助けていただいた人で後に、黄金の弥陀三尊像をつくりこれが善光寺のご本尊になったとされます。(善光寺縁起)

11、頭に龍をつけた八大竜王(難陀龍王、跋難陀龍王、娑伽羅龍王、和脩吉龍王、徳叉伽龍王、阿那婆達多龍王、摩那斯龍王、優鉢羅龍王)のうち難陀龍王、跋難陀龍王などが描かれます。此の二竜王は昔大臣で法と非法と両方で国を治めたため龍身となっておりこれに功徳を回向するため修行僧は『二龍呪願』という偈文を唱えます。「難陀龍王、跋難陀龍王、令捨悪道、生善趣中」。これは根本説一切毘那耶にあります。

12、羅漢のかたちをしているのは十大弟子です。十大弟子とは、舎利佛、目連、富楼那、須菩提、羅睺羅、迦栴延、大迦葉、阿那律、優婆離、阿難をいいますがこのうち舎利佛、目連は釈尊より早く亡くなっているので描かれません。(江戸時代の画家は知らずに描いているばあいもあるそうです。)

13、足元には多くの動物がえがかれることが多いのですが、日本最古の高野山金剛峰寺の涅槃図(平安末期)では動物はいません。着いた順番が干支になったという俗説もありますが干支の種類以上が描かれています。猫は魔物である等の理由で描かれないことが多かったようです。明兆は猫に朱色の顔料の場所を教えてもらったのでお礼に描いたといわれます。「慟哭の十二支欠けず涅槃絵図  門田窓城」という涅槃図もあるようです。


14、涅槃像随文略讃(江戸、貞極上人)には「釈尊に供養をなさんとあつまったのが五十二衆である。この参集の大衆を五十二衆に分類するのは章安菩薩の疏にある。まずは比丘衆、国王、大臣、夜叉、羅刹等この類ごとにわけて五十二衆という。いわゆ五十二類である。この五十二衆の一衆で一恒河沙、二恒河沙乃至三十、四十恒河沙等無数の人々がこの林中に集まると「大般涅槃経」にでている。また正法念誦経に動物の数は三十四億と説かれている。どうして五十二類だけであろうか。」とあります。たしかに涅槃経には数えきれないほどの神仏菩薩様等が出てきます

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 佛遺教經(全書き下し) | トップ | 四座講式・高辨撰 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

法話」カテゴリの最新記事