福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

善財童子の訪問者と教え(華厳経入法界品)38

2019-10-08 | 諸経
善財童子の訪問者と教え(華厳経入法界品)38
丗七番目、閻浮提の摩竭提国 妙徳守護諸城夜神
寂静音夜神に「この道場の上の如来衆の中に一夜天あり。名けて妙徳守護諸城という。・・汝かしこに詣でて問え」といわれて善財は妙徳守護諸城夜神のところに詣でて彼の夜天を見奉るに普照一切宮殿の寶獅子座に処したまい・・一切十方に至る身、究竟の仏身、究竟して一切衆生を教化する身あり・・善財もうしてもうさく「・・菩薩は云何が菩薩の道を学び、衆生を饒益し無上の摂法を以て衆生を摂取し如来の業に随い、法王に親近するやを知らず」と。これに対し妙徳守護諸城夜神は【甚深妙徳自在音聲法門】を成就した
といいます。甚深妙徳自在音聲法門とは甚深なる妙徳により自在に説法して衆生を助ける法門です。
「善男子。我已に【甚深妙徳自在音聲法門】を成就せり。・・諸の如来を我悉く恭敬し供養して法を聞きて受持し出家学道して仏法を守護し彼の諸仏のみもとにおいて種々の方便を以てこの【甚深妙徳自在音聲法】門に入り、種々の方便を以て衆生海を化せり。また次に仏子よ仏刹微塵に等しき劫のうちに諸仏いまして世に出でたまい、我亦皆悉く恭敬し供養し奉れり。このゆえに仏子よ一切衆生は長く生死にねむるも唯我のみ独り覚めたり・・」。
これは菩薩五十二位の下から丗六番目、十地の下から六番目ということで「華厳五十五所絵巻」にはここは「第六現前地」と書かれています。「華厳経・十地品」の「第六現前地」の説明には有名な言葉があります。「三界は虚妄にして、但是一心の作なり。十二縁分は是皆心に依る。・・・是の如くなれば則ち生死は、但心より起る。心若し滅することを得ば、生死も則ち亦尽きん」。
妙徳守護諸城夜神の甚深妙徳自在音聲法門(甚深なる妙徳により自在に説法して衆生を助ける法門)に対応するのは今日では説法の場です。2019年7月に世田谷の龍雲寺で正眼僧堂師家山川宗玄老師の提唱を拝聴しましたが、法話会場の本堂の扉の所へいくとなんとそこには山川老師が立っておられて扉を開けてくださいました。老師は外で立ったままで先の講演者横山紘一先生の話を聞いておられて、その上こうして後から入ってくる聴衆の為に扉の開け閉め迄してくださっていたのです。私は中へはいるよりもよっぽど老師の傍にいたかったのですが後から来る方もおりついつい中へ入ってしまいましたが後で外で老師の傍にいるべきだったと反省しきりでした。山川老師は提唱の前に先ず聴衆に数分間坐禅をさせました。坐禅は坐らなくても立ったままでも何をしていてもできる、とおっしゃいました。まずここが私の日頃の考えとぴったり一致していて大変うれしかったのを覚えています。数百人はいるとおもわれる聴衆が入っている本堂が非常に緊張した空気に包まれました。まさに老師のお導きです。老師の演題は「回天の力」という題で資料は無門関第十九則「平常是道」というものでした。
最後に老師は胃癌で余命一週間と宣告された信者さんの奥さんが老師の書を所望されたので「好日」と書いて渡した。これを見た奥さんは何か月生き延びて死後の準備を完璧に整えて亡くなった、この奥さんは「好日」という色紙を毎日見てそれまでの人生がすべて好日であった、今の瞬間も好日である、と悟りを開きそれまでのことを「回天」して生ききったのである・・というお話をされました。わたしは「愛語よく回天の力あり」という道元禅師のお言葉をお話になるものとばかり思っていましたが、まさに生きたお話で「自分の人生を回天する」お話をされたのです。
今際の際に色紙を頼まれる老師の力とその期待に応えて信者さんに最後に「回天」させる道力はすごいものがあります。終わって外へ出ると外界が無味乾燥の世界に見えました。本堂の中は生き生きと見えたのに不思議です。

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