田中智学自伝八巻に智学が関東大震災に際して危機感を持ち述べているところがあります。今日の東日本大震災後の日本と比べて今日のあまりの危機感の無さに愕然とします。当時心ある人々がこれだけ緊張感を以て臨んだにもかかわらずその後日本はどんどん運命を下落させていき、太平洋戦争に突入して敗戦を迎えたのです。当時と比べて精神面の崩壊が壊滅的に進んでいる今の日本には当時をはるかにしのぐ末恐ろしさがあります。
「・・関東大震災に際して
・・空前の大震災は国民に向かって空前の大教訓をあたえたものとして永久に深く戒慎して、形ばかりの復興でない精神の復興を絶えずやって居らなければならぬものとおもふのである。禍を禍で終わらせないで禍を転じて福となすと否とはこのこころになる。「衆生業尽きて大火に焼かるると見るときも、我が此の土は安穏にして天人常に充満せり・・(注1)」といふ境界は即ち精神の上から解釈し得た正しい国家及び社会をいふのである。かくのごときことをやはり震災が教えるとすればこれも矢張り一つの進歩であると思ふ。・・未曽有の大震災は国家国民に対して未曽有の警覚をあたえたものと解すべきであるが、なにぶん国民の覚悟といふものが確たる指導精神も定まっておらず国民精神の根底も据わっておらあいといふ所から、なにぶん国家の気運というものがどうも浮ついておる、ところでこの震災を機会として大いに覚醒せしめねばならぬといふ、天然自然の気運が動いてきた、・・聖上陛下はここに大御心を以て歴代聖天子にかって類例のない悲痛なご宣言をもって国家興国のために大詔を渙発せられたのが所謂精神作興の大詔勅(注2)であるいはこの詔勅を「興国の大詔とも称し深く国民の心胆に刻むべきものであるとしてこころあるものはいまさらの如く国家運命のただならざることを思い定めなければならないとした・・。
(注1) 妙法蓮華経如来寿量品自我偈に「衆生劫尽きて 大火に焼かるると見る時も 我が此の土は安穏にして 天人常に充満せり 園林諸の堂閣 種々の宝をもって荘厳し 宝樹華果多くして 衆生の遊楽する所なり 諸天天鼓を撃って 常に衆の妓楽を作し 曼陀羅華を雨らして 仏及び大衆に散ず 我が浄土は毀れざるに 而も衆は焼け尽きて 憂怖諸の苦悩 是の如き悉く充満せりと見る 是の諸の罪の衆生は 悪業の因縁を以て 阿僧祇劫を過ぐれども 三宝の名を聞かず 諸の有ゆる功徳を修し 柔和質直なる者は 則ち皆我が身 此にあって法を説くと見る。・・・(衆生の善業が尽きて、衆生が大火の海に焼かれるように見える時でも、仏の国土は安らかであり、天人で溢れていて楽しく暮らしています。そこには花園や林があり、種々の宝玉によって飾り立てられた宮殿が建っています。樹木には花や多くの果実が実っていて、人々は生活の楽しさを満喫している。諸の天人は天上の太鼓をうち鳴らして妙なる音楽を奏でており、かれらは曼陀羅華の花を仏や衆生の上に雨のように降りそそいでいます。 仏の眼から見たこの世は、このような浄土であるにもかかわらず、衆生の眼から見れば、この世は大火に焼き尽くされて国土の終わりが迫って、あらゆる苦しみや悩みに溢れ、それらが悉く満ちていると見ているのです。このように罪障のある衆生は、過去の悪業の因縁によって、どれだけ長い年月が経っても、三宝(仏・法・僧)の名称すら聞くことができないのです・・・。) 」とあります。
(注2)國民精神作興(さっこう )ニ關スル詔書 大正10年11月10日
朕惟フニ國家興隆ノ本ハ國民精神ノ剛健ニ在リ之ヲ涵養シ之ヲ振作シテ以テ國本ヲ固クサセルヘカラス是ヲ以テ先帝意ヲ教育ニ留 メサセラレ國體ニ基キ淵源ニ遡リ皇祖皇宗ノ遺訓ヲ掲ケテ其ノ大綱ヲ昭示シタマヒ後又臣民ニ詔シテ忠實勤儉ヲ勸メ信義ノ訓ヲ申 ネテ荒怠ノ誡ヲ垂レタマヘリ是レ皆道徳ヲ尊重シテ國民精神ヲ涵養振作スル所以ノ洪謨ニ非サルナシ爾来趨向一定シテ効果大ニ著 レ以テ國家ノ興隆ヲ致セリ朕即位以來夙夜兢兢トシテ常ニ紹述ヲ思ヒシニ俄ニ災變ニ遭ヒテ憂悚交々至レリ輓近學術益々開ケ人智 日ニ進ム然レトモ浮華放縦ノ習漸ク萌シ輕佻詭激ノ風モ亦生ス今ニ及ヒテ時弊ヲ革メスムハ或ハ前緒ヲ失墜セムコトヲ恐ル況ヤ今 次ノ災禍甚大ニシテ文化ノ紹復國力ノ振興ハ皆國民ノ精神ニ待ツヲヤ是レ實ニ上下協戮振作更張ノ道ハ他ナシ先帝ノ聖訓ニ恪遵シ テ其効ヲ擧クルニ在ルノミ宣ク教育ノ淵源ヲ祟ヒテ智徳ノ竝進ヲ努メ綱紀ヲ粛正シ風俗ヲ匡勵シ浮華放縦を斥ケテ質實剛健ニ趨キ 輕佻詭激ヲ矯メテ醇厚中正ニ歸シ人倫ヲ明ニシテ新和ヲ致シ公徳ヲ守リテ秩序ヲ保チ責任ヲ重シ節制ヲ尚ヒ忠孝義勇ノ美ヲ揚け博 愛共存ノ誼ヲ篤クシ入リテハ恭儉勤敏業ニ服シ産ヲ治メ出テテハ一己ノ利害ニ偏セスシテ力ヲ公益世務ニ竭シ以テ國家ノ興隆ト民 族ノ安榮社會ノ福祉トヲ圖ルヘシ朕ハ臣民ノ協翼ニ頼リテ彌々國本ヲ固クシ以テ大業ヲ恢弘セムコトヲ冀フ爾臣民其レ之ヲ勉メヨ
御 名 御 璽
攝 政 名
大正十二年十一月十日」
最新の画像[もっと見る]
-
金剛頂瑜伽中發阿耨多羅三藐三菩提心論 10ヶ月前
-
一日は定光佛・熱田大明神・妙見様・天神と地神の日 3年前
-
万人幸福のしおり 4年前
-
佛説彌勒大成佛經 (全巻書き下し) 4年前
-
四国八十八所の霊験・・・その97 6年前
-
四国八十八所の霊験・・・その92 6年前
-
四国八十八所の霊験・・その89 6年前
-
四国八十八所の霊験・・・その88 6年前
-
四国八十八所の霊験・・・その83 6年前
-
四国八十八所の霊験・・・その76 6年前