福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

高野大師御広伝(大師御入定

2024-03-21 | 法話

高野大師御広伝には「(承和二年)三月二十一日丙寅、寅時、結跏趺坐、大日定印を結び、奄然として入定さる。兼日十日、四時行法さる。その間弟子等共に弥勒宝号を唱ふ。唯閉目して言語無くして入定。自余生身の如し。報年六十二、夏﨟四十一.喪送奉らず。厳然として安置す。則ち世法に准ずるのみ。」とあり、弘法大師御伝にも全く同じ記述がありますが最後に「七七日、御弟子併しながら拝見す、顔色不変、鬢髪長生。」と付け加わっています。

 

「金剛峯寺建立修行縁起」には

「・・承和二年乙卯三月二十一日、寅時、結跏趺坐し大日印を結び、奄然として入定。兼日十日四時行法、其の間御弟子共弥勒寶號を唱ふ。唯餘生身の如し。時に生年六十二、夏臈四十一.然りと雖も世人の如く葬送せず。而して厳然と安置す。則ち世法に准じて七七御忌に及ぶ。御弟子等併以て拝見するに顔色不変、髻髪更に長し。之に因り剃除を加へ衣裳を整ふ。畳石壇例人可入許。其の上に仰石匠五輪卒都婆を安じ、種々の梵本陀羅尼を入れる。其の上に更に亦宝塔を建立し仏舎利を安置す。事一向に真然僧正の営むところ也。・・」





真言安心勧善義(彦岑和尚撰)には「弘法大師御入定の事」として以下のように記述されています。

「 問。大師御入定とあるは実にありがたき義なりとうけたまはれり。拙き我等ごときも少しき又聞くことを得べきや。

答。大師は金剛大定と申すに入らせましまして、焼けば灰となり、埋めば土となる此の四大色身、此の五蘊聚集の肉身を、大師はそのまま少しも壊せず堅持したもうて、慈尊出世五十六億七千万歳龍華の暁を待ちたまふとなり。実に即身成仏の証拠効現著しきことにて最も又ありがたき御事ならずや。往昔迦葉尊者鶏足山に入って正受に住し給へる外には三国の際伝え聞くこともっとも希なり。

大師は人王五十四代の帝、仁明天皇承和二年三月二十一日御入定あり。御目を瞑せ、御気絶えさせ給ふといへども、御身ひたすら暖にして御鬚髪日々に長じさせ給たまへること御平生に少しも替わり給はず。五十日を過ぎて、御弟子衆相共に御髪を剃りまいらせ、御衣を整えたてまつりて定身をそのまま奥の院に蔵めたまへりと云へり。

御入定に先立ちて二十五ヵ条の御遺戒をおさだめなされ、末代真言宗徒の鏡となされ、七日の間、御弟子達と共に弥勒の宝号を念じたまふといへり。そもそも定身は奥の院樹下におさまりたまふといえども常にまた兜卒天におわしましまして、はるかに此の国の王法仏法を護りましまし、又真言宗徒の信心不信人を照らし鑑み給ひて、信ある者には福をあたえ、不信心の輩には罰をあたへ給はんと、大師みずから仰せ置かれしなり。またつねに処々の遺跡を検知ましますとあり。

しかるゆえにや国々処々にて千歳下の今に至っても僧俗男女貴賎に限らず、まのあたり直に大師に値遇し奉る輩これ多し。特に定後八十七年、六十代の帝醍醐天皇延喜二十一年、天皇の御夢中に大師御相見ましまして、御衣を乞ひ求め給へることありしに因って、醍醐寺の座主観賢僧正を勅旨となされ、紫衣一領を大師へ贈りまいらせたまへり。僧正即ち高野山に登り、奥の院に詣りて勅旨の旨を宣たまひ、御入定の扉を啓きて黙祷ましますこと須ユありしに、大師の真身即ちあらわれ拝れさせ給へり。御鬚髪甚だ長くならせましましけるに因って、僧正みずから是を剃り奉りまいらせ給ふて、天皇より進ぜられたまへる御衣を召し替させましましける。然るに供奉の僧衆は拝みたてまつることあたはず。又石山の淳祐僧都其の頃いまだ童子にて僧正召し具せられけるに、是も拝みたまへることあたわざるによって、僧正即ち童子の手を取って、大師定身の御膝をさぐらしめたまふに、まさしく御膚の暖にして柔なることを覚りたまへりけるに、その手、甚だ香して年月を経ても其の薫り猶散ぜずといへり。その後淳祐の手に触れたまへる書籍にも其の薫りうつりければ、是を石山の薫の聖経と申し伝えたり。

大師あるいは分身後身を長和皇子、法勝寺の寺務特進性信法師、仁和寺の成典僧正等と顕はれましますことあり。然れども其れこれ等は尚是れ一時機感の一端のみなり。実には大師の真身は法界に遍せり。虚空の月の萬水に応じて其の形を現ずるが如し。信心の水澄めるときは常に必ず大師の真身拝まれ移りまします。即身成仏不転肉身の金剛大定、真言宗旨の効験じつにありがたきことにあらずや。」

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