今日は國男忌です。柳田國男は1875年7月31日兵庫県に生まれ1962年8月8日(87歳)東京の成城にて没しています。日本民俗学の泰斗です。50年以上も前下宿時代に同宿の尊敬する哲学者の方が私淑していたので自分も影響されて柳田國男集を求めましたが正直いって全部読破しようというような面白みを持ったものではありませんでした。それぞれの土地の言い伝えなどを丹念にひろっているもので華々しさは全くありません。しかし梅原猛などは大変評価しています。「『日本人のアイデンティ ティーは先祖崇拝であった、先祖崇拝を失ったら、もう日本人は日本人でなくなる』という警告としてこの本(先祖の話(柳田国男))は書かれたのである。(梅原猛「あの世と日本人 浄土思想の諸相」)」「柳田は、日本民俗宗教の体系化を図り、・・諸信仰が先祖崇拝を軸として展開しているとの意識である。(坂本要「先祖崇拝と葬式佛教」)」等とあり仏教嫌いの柳田も実は日本人の先祖供養を調べているうちに先祖供養が日本人の骨格をなしていると気が付いているようです。代表作とされる「先祖供養の話」のエッセンスです。「先祖の話・柳田國男(昭和21年4月)」「 特に日本的なものを列挙すると、 第一には死してもこの國の中に霊は留まって遠くへは行かぬと思ったこと、第二には顕幽二界の交通が繁く、単に春秋の定期の祭りだけで無しに何れか一方のみの心ざしによって、招き招かるることがさまで困難で無いやうに思っていたこと、第三には生人の今はの時の念願が死後には必ず達成するものと思って居たことで、是によって子孫の為に色々の計画を立てたのみか更に再び三たび生まれ代って同じ事業を續けられるもののごとく、思った者の多かったといふのが第四である。富士や御嶽の行者などにも、死後の年数と供養とによって段々と順を追うて麓から頂上に登っていきしまひには神になる(十三佛と類似)といふ信仰が今も行われて居る。・・家に先祖の事業がなほ傳はり社会が前賢の遺烈を無言の間に受け継いでいるのがもしも悉く皆、後の人だけの手柄ではないとすると、・・そうして是が又國土を永遠の住かと信じて居た一つの民族の本来の姿ではないかと思ふ。」。
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