讃観世音菩薩頌和釈・・12/20
険処遇賊
「深山大澤險難處 劫賊伺人將抄奪 稱名念力願救護 其人釋然得解脱」
深き山や大なる澤など險しき難處にて 劫賊の人を伺ひて將に抄奪せんとするに其の人の観音の名を稱へて神力を念じ救ひ給へ護り給へと願へば 其人は難を解脱すと也。
山城の岡崎の某は革堂の観音を信じけるが丹波の亀山に姨母あり、急病と聞て頓に握飯を腰に付けて堅木原(京都市西京区)越に行しが夜に入りて老坂超に盗賊の二人いで追剥しぬ。裸に成りて速て亀山に走り付いて斯ぞと物語すれば伯母の子に音衛門とて角力とりにて古米となのるは聞くより急ぎて老坂に往て盗人を挑灯にて見れば山際に死んでける。手に握飯を持ちて血を吐きたり。是は妻が密夫の計て毒を飯に入れ置きしと也。(「観音霊験記・西國十九番革堂」にあり)