原人論・・その2
「・・・真実の教えである一乗顕性経の要点を説明しよう。この教説では
あらゆる生命ある者には、本来目覚めた真実の心(本覚真心)が備わっている。この真実の心は時の始めの定まらないときから常に存在していて清浄であり、日月のように明らかでほの暗いところがなく、鏡のようにいつも判然と物事を自知している。これを仏性と名つ゛け、また如来蔵とも呼んでいる。
時の始めも定まらぬ時から妄想がこの真実の心を覆い隠していて人はそこに自心の真実があることを自覚していない。ただ真実の心に無自覚なままをよしとする生活のみを認めていることから、煩悩にふけり執着する結果として業果に束縛され生死流転の苦悩を心身にうけるのである。
仏陀はこの事実を観察し慈愛により方便を以てまず『一切はみな空なり』と説いて物事への執着を斥け、つぎに一歩を進めて生きとし生けるものに備わる霊妙なる自覚の本体(霊覚れいがく)、すなわち真実の心は清浄であってもろもろの仏陀の心と同じであるという真理を明らかに開示されたのである。
この真実を華厳経(如来出現品)では『仏陀の子らよ、生命持てる者のうち、どんな一個の命でも仏陀の英知を備えてないものはなにひとつない。ただ妄想と執着があるばかりに妨げとなって、それを悟ことができない。もし妄執から離れることができれば、仏陀の英知の特色である、全ての真実を知る智(一切智)、造作なく物事のありのままの姿を知る智(自然智)、すべてを自在に洞察する智(無礙智)が生命持てる者にあらわれて目前にただちに活動をし始める』と。・・・」
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