宇能鴻一郎は東大文学部を出た芥川賞作家で、でも駅の売店で売っている官能小説も書いていて、
何が本当か分からない作家だとも思っていた。
この小説の6編は純文学から官能小説で大ヒットする間の狭間、10年間に書かれたものや、
初期の純文学も入っている。
結論、宇能鴻一郎はものすごい小説を書く人だ。
中には18禁のような官能的な部分もあるが、「鯨神」を読んでいたら、
昨年読み返したヘミングウェイの「老人と海」を彷彿とさせ、それを超えたような感じがした。
読んでから知ったが、「鯨神」は芥川賞をとっている。
「姫君を喰う話」は迫力に満ちたすごい話だし、「ズロース挽歌」もグロいのだが何となく文学的。
「リソペディオンの呪い」は忘れられない情景の物語。
誰にでも勧める本ではないが、やはり見直すべき文芸の鬼才である。
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