龍平と俺の目玉が、龍平の丸を挟んで向かい合う。
接近した顔のアップが目の前にある。
「 プッ!」
龍平が、俺の寄り眼に我慢出来ずに吹き出した。
「 勝った!」
「 何、すんねん!」
「 穴があったら、覗くのが人の常。」
「 で、寄り眼は何やねん?」
「 関西では、“笑わしてナンボ”って言うんだろ?」
「 まあ、それはそうやけど・・・。」
俺は手をヒラヒラしながら龍平に言った。
「 ゴメン、ゴメン!
それで、続き、続き!」
「 分かったがな。」
俺と龍平は座り直して向かい合う。
「 で、穴から見えたんや。
穴の正面、10mほど先におったんや。
女の子と黒い影と山本さんやがな。」
「 何、してた?」
「 女の子、鞠をついてたわ。
テン、テン、テンってな。
山本さんと黒い影は、その子の横に立ってた。
それでな、女の子が鞠を付くのを止めたんや。
その後な、黒い影がヒョイって、屋上の柵の上に飛び乗ったんや。
屋上の周りにグルッとな、これぐらいのコンクリートの柵あるんや。」
龍平が両手で30cmほどの幅を作った。
「 この上やがな。
それで、次がビックリやで。」
「 何が?」
「 続いてな、山本さんも柵の上にあがったんや。」
「 えっ、山本さんも?」
「 そうやがな。」
「 めちゃ、危ない。」
「 そう、めちゃ、危ないんや。
柵の上に腹這いになってやな。
乗っかってるねん。
で、黒い影が、柵の上を向こうの角っこに向かってゆっくり歩いて行くん
や。
その後、山本さんも続いて、ズルズルと這って行くんやで。
しゃくとり虫みたいやがな。」
「 危なぁ~。」
「 まあ、幅があるから落ちんと移動してたけど・・・。
それで、先に進んでいる黒い影が柵の角まで行ったら、一旦、黒い影が立ち
止まったんや。
柵の直角の角っこに真っ直ぐに立ってやなぁ・・・。」
「 ・・・・・・。」
「 そしてなぁ・・・・・。
黒い影は、ゆ~っくり柵の外に倒れ込んで、落ちて行ったんや。」
「 え、落ちて行った・・・。」
「 そう、落ちて行ったんや。」
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