大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道253

2009-09-02 20:10:42 | E,霧の狐道
 龍平と俺の目玉が、龍平の丸を挟んで向かい合う。
接近した顔のアップが目の前にある。

「 プッ!」

龍平が、俺の寄り眼に我慢出来ずに吹き出した。

「 勝った!」
「 何、すんねん!」
「 穴があったら、覗くのが人の常。」
「 で、寄り眼は何やねん?」
「 関西では、“笑わしてナンボ”って言うんだろ?」
「 まあ、それはそうやけど・・・。」

俺は手をヒラヒラしながら龍平に言った。

「 ゴメン、ゴメン!
 それで、続き、続き!」
「 分かったがな。」

俺と龍平は座り直して向かい合う。

「 で、穴から見えたんや。
 穴の正面、10mほど先におったんや。
 女の子と黒い影と山本さんやがな。」
「 何、してた?」
「 女の子、鞠をついてたわ。
 テン、テン、テンってな。
 山本さんと黒い影は、その子の横に立ってた。
  それでな、女の子が鞠を付くのを止めたんや。
 その後な、黒い影がヒョイって、屋上の柵の上に飛び乗ったんや。
 屋上の周りにグルッとな、これぐらいのコンクリートの柵あるんや。」

龍平が両手で30cmほどの幅を作った。

「 この上やがな。
 それで、次がビックリやで。」
「 何が?」
「 続いてな、山本さんも柵の上にあがったんや。」
「 えっ、山本さんも?」
「 そうやがな。」
「 めちゃ、危ない。」
「 そう、めちゃ、危ないんや。
 柵の上に腹這いになってやな。
 乗っかってるねん。
  で、黒い影が、柵の上を向こうの角っこに向かってゆっくり歩いて行くん
 や。
 その後、山本さんも続いて、ズルズルと這って行くんやで。
 しゃくとり虫みたいやがな。」
「 危なぁ~。」
「 まあ、幅があるから落ちんと移動してたけど・・・。
 それで、先に進んでいる黒い影が柵の角まで行ったら、一旦、黒い影が立ち
 止まったんや。
 柵の直角の角っこに真っ直ぐに立ってやなぁ・・・。」
「 ・・・・・・。」
「 そしてなぁ・・・・・。
 黒い影は、ゆ~っくり柵の外に倒れ込んで、落ちて行ったんや。」
「 え、落ちて行った・・・。」
「 そう、落ちて行ったんや。」




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