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日々の恐怖 10月31日 白い手

2013-10-31 17:58:42 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 10月31日 白い手



 私は心霊現象には無縁だと思っていました。
でも、後々思い出してみてアレ?と思った話が一つだけあります。
 子供の頃住んでいたアパートは出ると有名だったらしく、クラスのアホ男子に、

「 お前、あのユーレイマンションに住んでんだろ?こえ~!」

と度々からかわれていました。
 実際アパートの住民にも見たと言う人は多く、上の階に住んでいた母の友人は、母と話している最中に突然“女がこっち見てる”、などと言いながらガタガタ震えだしたりしていたようです。
彼女は見た時手のひらに金粉が浮くらしく、つい先ほどまでまっさらだった筈のその手のひらがいつの間にやらうっすら金粉に覆われている様を母は何度も目撃していると言っていました。
 姉も、よく、非常階段に女の霊がいると怯え、決してその階段を使おうとはしませんでした。
そんな環境で育ちながらもなお何も見えなかった私はというと、そんな話を聞いた後も暢気に非常階段をお気に入りの遊び場にしていました。
それで、何となく、私はこのまま一生心霊体験などせずに死ぬのだろうと、子供ながらに漠然と予想していました。

 そんな中、小学三年生の頃のことです。
給食の時間、誰よりも早く給食のお盆を受け取った私は、自分の席でぼんやりと窓の外を眺めていた。
他の小学校がどうだかは知らないですが、私の学校では、給食時は近い席の生徒と6人の班を作らなくてはならないのです。
縦2列、前後3列の生徒同士、机の向きを変えてぴったり向かい合うように座ります。
 その当時、私の席は窓際から数えて2列目だったため、班を作る際は窓際の席の生徒と向かい合えるよう机の向きを変えていました。
つまり、窓と向き合っていた状態です。
 私の班のほかの生徒たちはまだ配膳の列に並んでいる最中で、お陰で私の視界を遮る物は何もありませんでした。
おなか減ったな~などと考えつつ、見るともなしに窓を眺めていたその私の視界に、白い子供の手が飛び込んできました。
 それは窓ガラスの向こうに唐突に現れました。
私に見えるのは手からひじの辺りまでで、そこから下は壁に遮られて見えません。
その手は何か白いボールのようなものを握っていて、おもむろにそれを上方へと放り投げました。
 ボールはまっすぐ飛び上がり、一度窓と天井の境目に消えると、やがて重力に従い落ちて来て、白い手はそれを綺麗にキャッチし、ひゅっと素早く下へ引っ込みました。
 そのとき、私はすぐに思いました。

“ 誰かが校庭に出てボール遊びしてる、いけないんだ!”

当時は、給食が終わり昼休み開始のチャイムが鳴るまでは校庭に出てはならないと言われていました。
それを破った生徒は教師から厳しく怒られます。
 クラスでも仕切り屋の部類に入っていた私は、すぐさまその生徒を注意しようと思い、席を立ち窓へと駆け寄りました。
ところが、ボールで遊んでいたと思われる生徒の姿は校庭にはありませんでした。
校舎は左右に伸びているので、すぐに隠れられそうな所は無いのです。
変だなとは思ったのですが、“まあ素早く校舎のどこかに逃げ込んだのだろう”と、そのときは思いました。

 私自身が経験したことといえばこれくらいで、相変わらず心霊体験の無い私は鈍く元気に暮らしています。
 出ると噂されていたあのアパートからはとうに引っ越していましたが、今でも家族間でその話題が上ることがあります。
弟に聞いたところ彼もあのアパートで霊を見たことはないと言っていましたが、姉は、下半身の潰れた女性が腕組みして手すりに寄りかかりながら非常階段から下の駐車場を見下ろしていたと言っていました。
なんにせよ、私はこの先一生心霊的な恐怖を味わうことなく一生を終えるのだな、と漠然と思っています。
 ついでですが、あのアパートに住んでいた頃の話で怖かったことがあります。
朝、登校しようと家を出たら、先に仕事に行ったはずの父親が大慌てで戻ってきて、

「 エレベーターを使うな、階段を使え!あいつらが来た!」

と、私と弟を非常階段まで引っ張って行ったことがあります。
 後から近隣の人に聞いたところ、何でもエレベーターホールの入り口に黒スーツの男達が誰かを待ち伏せているような様子で仁王立ちしていたと言うことです。
その時の記憶の方がはるかに鮮烈で、洒落にならんほど怖かったと思います。
何しやがったんですか、お父さん?














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