日々の恐怖 1月9日 追憶(2)
彼女はそこで、頼れる大人は先生だと思いついた。
先生ならきっと園舎の中にいるはずだ。
そう思い、後ろを振り返った。
「 あれ?」
彼女の目の前の園庭には見知った顔の子供たちが遊び、その向こうにはやや色褪せた園舎があった。
辺りを見回してもフェンスはなく、声をかけてくれた女性の姿もなかった。
なにもかも見知った、いつもの幼稚園がそこにはあった。
「 へんなの・・・・?」
彼女は首を傾げたが、そろそろバスの時間だと自分を呼ぶ友達の声に大声で返事をし、走ってその場を後にした。
「 実はこの前、この話の続きかな、と思えることを体験したんです。」
知人の彼女がそう言ったので、私は身を乗り出した。
「 続きですか?」
「 続きというか、何というか・・・・。
もしかしたら、ただの勘違いかもしれませんけど・・・・。」
彼女はそう前置きをした語った。
「 この前、娘の入園手続きの書類をもらうために、その幼稚園に行ったんです。
自分が通った幼稚園がまだ残っているなんて、懐かしくて嬉しくて。
てっきり古くなってると思っていたんですけど、建物はそのままでも、塗装し直して昔よりずっと綺麗になってました。
園庭は思っていたよりずっと小さくて、子供たちが遊んでいる遊具は知らないものの方が多かったです。
でも、あのナツメの木はまだありました。
懐かしくて、つい声に出してしまったんです。」
「 もしかして、木の下には・・・。」
「 はい、女の子がいました。
泣きそうな顔で、ここはどこかと聞かれて、びっくりしました。
でも、ちょっと目を離したすきに、その子は消えてしまっていたんです。
子供の頃の不思議な記憶のことは、家に帰ってから、
” あれっ・・・?”
って、思い出したんですけど・・・・。」
彼女はそこで苦笑した。
きっと私と同じことを考えているのだろう。
「 でも、あんまりできすぎてますよねぇ・・・・・。
きっと、偶然なんでしょうけどね・・・?」
そう言って、彼女は頬に手を当て小首を傾げてまた笑った。
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