日々の恐怖 1月29日 昔の友達(2)
一度それに抗議したことがあった。
それに対し彼は、
「 僕は君のことが大好きだからね。」
と、よくわからない理由を述べた。
彼お得意の皮肉かとも思ったが、皮肉を言う時はいつもはね上がる右眉は動かないままだったという。
何か理由があることを察し、それ以降は家に入れてとねだることはやめたそうだ。
しかし、そんな彼との楽しい時間は、二年たらずで終わってしまった。
親の転勤という子供にはどうにもならない理由で、彼ら一家は再び引っ越すことになったのだ。
「 絶対また会おうな。」
最後の別れの日、知人は手作りのプレゼントを渡しながら彼に言った。
「 会っても、もう君はわからないと思うけどね。」
彼はいつものように皮肉を言ったが、それは寂しさをごまかすためのものだったのだろう。
新しい引っ越し先に何度か手紙を書いたが、返事が返ってきたことはないという。
やがて大人になった知人は、故郷を遠く離れて仕事につき、家庭を持った。
ある日、近所のショッピングモールに家族で買い物に行った時のことだ。
妻と子供の買い物を待っていた知人は、一人の美少年に目を止めた。
彼は、あの子供の頃の親友にそっくりだったのだ。
思わず、少年に気がつかれないようにそっと近づいた。
近くから見るとますます似ている。
堪えきれずに声をかけた。
「 いきなりごめんね。
もしかして、きみのお父さんは、〇〇っていう名前じゃないかな?」
知人は、目の前の少年がかつての親友の息子か、もしくは親戚なのではないかと思ったのだ。
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